理研が落ちた「わな」:再生医療の覇権争い iPS先行で

毎日新聞 2014年03月19日 16時16分(最終更新 03月19日 16時19分)

STAP細胞の論文発表の記者会見でスクリーンを指さす小保方さん=神戸市中央区で1月28日、川平愛撮影
STAP細胞の論文発表の記者会見でスクリーンを指さす小保方さん=神戸市中央区で1月28日、川平愛撮影
神戸市中央区の理研の拠点には小保方晴子・研究ユニットリーダーらが所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)がある=本社ヘリから山田尚弘撮影
神戸市中央区の理研の拠点には小保方晴子・研究ユニットリーダーらが所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)がある=本社ヘリから山田尚弘撮影

 「科学者に科学者の管理ができるのか」。財務省関係者からはそう不安視する声が聞かれたが、理研関連の来年度予算編成が大詰めを迎えた1月末、理研はSTAP細胞論文を発表。政府は早速、理研を「特定国立研究開発法人」の指定候補にすることを発表し、野依理事長の訴えは実りかけた。ところが、論文に画像の使い回しや他論文からの無断転載が相次いで見つかり、政府は閣議決定するまでの間、理研の対応を見極める方針だ。指定の「追い風」として期待されたSTAP細胞は逆に足かせになってしまったのだ。

 有識者懇談会委員の角南(すなみ)篤・政策研究大学院大学准教授は「チェック体制は制度改革の論点の一つで、そこがクリアできないなら理研の新法人指定は簡単ではない」と言う。「研究不正疑惑はいつでもどこでも起き得る問題だが、この時期に新制度の旗振り役である理研で起きてしまったことが、科学技術振興を成長戦略の柱と位置付ける政権の推進力に悪影響を及ぼさないことを願いたい」

 「科学史上有名な捏造(ねつぞう)事件であるシェーン事件と構図が似ている」と指摘するのはサイエンスライターの片瀬久美子さんだ。ノーベル賞学者を多数輩出した米国のベル研究所で02年に発覚したヤン・ヘンドリック・シェーン氏の論文捏造事件である。「シェーン氏の上司や共著者、科学誌の査読(審査)担当者たちは、外部から論文に使用された実験グラフの使い回しを指摘されるまで捏造を疑わなかった。親会社の経営難で研究費や人員の削減が行われており、優れた研究成果を出し存在意義をアピールするために『スター研究者』の登場が研究所の幹部から強く望まれていたことが、内部での不正のチェックを甘くした原因だと指摘されている。事件後、共著者の責任や査読の限界が指摘されるようになったが、今回のケースでは過去の教訓が生かされていなかったと思う」。片瀬さんは後手後手に回る理研を批判する。事件から6年後、親会社はベル研での基礎物理研究を打ち切った。

 過去の教訓から理研は学ぶことができるか。「楽園」の科学者たちに厳しい視線が注がれている。

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