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Growing Reed 2012/02/12 O.A. 岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、Growing Reed。この番組では毎週1つのテーマの専門家をお呼びして徹底的に質問。番組の終わりには考える葦として、僕もみなさんと一緒に成長したいと思います。 えー、今日は、最初にクイズを出したいと思います。オダギリジョーさん、細川茂樹さん、佐藤 健さん。三人とも今をときめく俳優ですが、この三人の共通点は何でしょうか? えー、実は三人とも仮面ライダーシリーズの主演を務めているんですね。オダギリジョーさんは『仮面ライダークウガ』を、細川茂樹さんは『仮面ライダー響鬼』、佐藤 健さんは『仮面ライダー電王』をそれぞれ演じました。仮面ライダーシリーズは、第1作が1971年4月。結構前ですねぇ、放送されました。昨年で40周年を迎え、今も最新作が放映されています。特にオダギリさんが演じた仮面ライダークウガ以降は平成ライダーシリーズと呼ばれており、子どもだけではなく女性や大人のファン、お母さんとかがね、見て話題になったという作品です。2009年の夏に公開された『劇場版 仮面ライダーディケイド』は全国345スクリーンで公開され、並み居る夏休み映画を押し退け、映画観客動員ランキング初登場第1位を獲得しました。この映画はGACKTさんが主題歌を担当した上に、結構大きな役で出演していたのが話題でした。そして昨年末に公開された映画 『仮面ライダーフォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGAMAX 』も同じ週に公開された『リアル・スティール』を抑えて初登場1位を獲得。 さて、今日はそんな平成の仮面ライダーシリーズの生みの親の一人、東映株式会社 執行役員の白倉伸一郎(しらくらしんいちろう)さんに 『今、正義って何ですか?』というテーマでお話をお聞きします。 J-WAVE Growing Reed、新しい一週間最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください」 * * * 岡田「あの白倉さんは、」 白倉「はい」 岡田「オダギリジョーさんの主演した『仮面ライダークウガ』でプロデューサー補となり、そのあと2007年まで抜けたりしてたけどチーフプロデューサーを戻って来てやってるという」 白倉「非常にフラフラしてるんですよね」 岡田「(笑)」 白倉「出たり入ったりで(笑)」 岡田「オダギリさんのやってたときが初めてですか?クウガですよね?」 白倉「はい。今のシリーズはそれが初めてでしたね。クウガっていうのからシリーズがスタートしてるんで」 岡田「うん」 白倉「それまで仮面ライダーって…まぁ、去年まで40年続いて今年で41年目なんですけど」 岡田「すごいですよねぇ…」 白倉「ただ、続いてないんですよ。40年ストロークはあるけれども、最初の5年やって、2年ブランクがあって、2年だけ放送してまたブランクがあってっていうブランクのほうが長いんですよね」 岡田「う〜ん」 白倉「オダギリさんが出演されたクウガっていうのの前に、11年近くブランクが空いてまして。その11年のブランクを経て、仮面ライダーを復活させる。じゃあ仮面ライダーっていうのは一体何なのか、っていうことですよね」 岡田「うん。そうですよね」 白倉「で岡田さんが生まれる前ですけど、40年前ものすごくヒットしてるんですよね。クウガ当時からだと…30年遡るんですけれど。ホントに社会的現象といわれる『変身』っていう言葉は今でも使われますけれど、」 岡田「そうですよねぇ」 白倉「それまで変身…あのカフカさんの『変身』っていう小説しかなかったような」 岡田「はいはい」 白倉「仮面ライダーをきっかけで変身っていう言葉が日本語として定着してしまうぐらいに…」 岡田「絶対子どもたちは一回はやりますよね」 白倉「はい(^^)」 岡田「僕もやりましたよ(笑)」 白倉「ああ、そうなんですか(笑)」 岡田「アマゾンとかやってましたね」 白倉「ええっホントですか?」 岡田「はい。やってましたよ(^^)子どもの頃ですよ」 白倉「(アマゾンは)お生まれになる前ですね」 岡田「前ですけど、やっぱりなんか…仮面ライダーシリーズだとアマゾンとかのインパクトが強かったりとか…」 白倉「はい」 岡田「シャーッ!っていうこうなんだろう(笑)両手を前にやって…。そういうこう…子どもが絶対真似するものをどういうふうに変えて行くっていうのがテーマにあったんですか?」 白倉「変えて行かないっていうことなんだと思うんです。それこそあの、『アマゾン』を引き合いに出すと、何年か前に『仮面ライダーアマゾン』の企画書っていうものが会社の中から出て来て、」 岡田「お宝ですよね」 白倉「はい、はい(^^)」 岡田「(笑)見てみたいですね」 白倉「で、読ませていただいたら、ホントにびっくりしたのは、あれが1973年…ですかね?74年かな?いづれにしても仮面ライダーシリーズは71年からですので、始まってわりとこう、すぐの頃の作品なんですけれども、現代に通じるようなことが書いてあるんですよね。」 岡田「へぇー」 白倉「で巻頭言っていう…企画書をめくると、仮面ライダーっていうのはそもそも一体何だろうかっていうことをもう一回見つめ直さなければいけないと」 岡田「はい」 白倉「とにかく仮面ライダーっていうのは、ただのヒーローじゃなくって、ある種社会の中からこう…逸脱した異形のものであるっていうようなことが連綿と書いてあるんですよ」 岡田「はい」 白倉「これまんま、そのままこう…現代の番組として通用するんじゃないかっていう、そういう企画書だったんですよね」 岡田「ほー」 白倉「ただそれで上がって来たものがシャーッですけれども(笑)」 岡田「(笑)」 白倉「だから当時の作り手が仮面ライダー1号2号とかっていうようなこう…いわゆる『ザ仮面ライダー』って言われるような、ああいうものの作り手自身が仮面ライダーって何なのかっていうことを、2、3年後にもう一回見つめ直したときに、『アマゾン』みたいな…今見ると非常に変わった、へんてこなものが出来上がってるっていうことを、もう一回こう、つきつけられるんですよね」 岡田「へぇー。じゃあその昔の、流れをきちんと受け継ぐっていうのが…」 白倉「はい。一番大きなテーマだと思います。特にクウガ以降の平成仮面ライダーの守ろうとしていることというのは。」 岡田「クウガってものすごくヒットしたイメージが…イメージがあるっていうかなんか、仮面ライダーが戻って来たというか」 白倉「はい」 岡田「子どもからも…お母さんまで…見るものになったっていう感じが、イメージがあるんですけど。それの一番の決め手って何だったと思われてるんですか?」 白倉「一つはもちろん、オダギリさんだったり、葛山信吾さんだったり、出演者の魅力なんですけれども。もう一つは、クウガって内容自体はそんなに昔の仮面ライダーと大きくは変わっていないんですよね」 岡田「はい」 白倉「まぁ当たり前ですけど仮面ライダーっていうヒーローが怪人を倒すっていうその作業を毎週毎週繰り返すっていうのなんですけれども。現代社会に仮面ライダーだったり、怪人だったりが出現したときに、どういうふうにみんな動くのか…社会が。っていうようなことを、…もちろん怪人が出て来たりライダーが出て来たりするのでリアルじゃないんだけれども、ある程度シュミレーション的にリアルに追求したと。そこが大きく受け入れられた原因の一つだと思っています」 岡田「ご自身でこう、一番大事にされてることってどこですか?」 白倉「リアリティー。リアリティーって言っても、フィクション上のリアリティーなんで、いわゆるリアリティーとはちょっと違うのかもしれないんですけれども。仮面ライダーとか、あるいはヒーロー物とか、そういう約束だからこうなんだっていうことじゃなくて、やっぱり人間がちゃんと動くこと。」 岡田「ほー」 白倉「そこに尽きるんじゃないかっていうふうに思います。だから当たり前のことなんですよね」 岡田「うんうん」 白倉「あの、ドラマなんだから、ちゃんとこう…たとえ変身しようとも、人間としてのこう…動き、考え方、そこを踏み外さない。それを仮面ライダーに…クウガ以降課せられていることだと思っておりますけど」 岡田「当時はどういう時代だったんですか?」 白倉「あの…オウム真理教事件、1995年の。と、9.11、2001年の。この間です、ちょうど」 岡田「うーん…じゃ結構なんか、価値観が変わって来るような時代というか、」 白倉「はい。9.11の前と後で価値観がだいぶ変わってると思ってるんですけれども。その前のやっぱり大きい事件というのはオウム真理教事件で」 岡田「はい」 白倉「有り体に言うと、昔…アマゾンもそうですが、ショッカーといったような悪の秘密結社っていうものが世の中のどっかにいて、社会の隅っこに潜んでいて、虎視眈々と世界征服の野望を燃やしている、というようなものが娯楽としてセールしていたんですね」 岡田「はい」 白倉「ところが、オウム事件っていうのは、そういうものが実際に存在するかもしれない、」 岡田「うん。そうですね」 白倉「っていう現実を突きつけてしまった」 岡田「うん」 白倉「おいそれとは簡単に悪の秘密結社的なものっていうのを娯楽として取り上げることが出来なくなってるんですよね」 岡田「はいはい」 白倉「それが、仮面ライダークウガとかが生み出された時代の背景としてあると思います。だからその、2000年っていう現代にどうやって仮面ライダーを復活させるのかっていうときに避けては通れない問題の一つなんですよね」 * * * 岡田「人物像を作るときに、どういう打ち合わせをするんですか?」 白倉「机上の空論ではなんとでも言えるんですよね」 岡田「はいはいはい」 白倉「こういうヒーローだったら面白いであるとか…でもそれ全部机上の空論で、実際それを体で演じる役者さんがいてはじめて成立するじゃないですか」 岡田「はい」 白倉「オーディションってするじゃないですか」 岡田「はい」 白倉「よくオーディションって何万人の中から選びましたって…何万人に会ったとしても、例えばそういう求めてる役柄に相応しいキャラクターの人がいなかったら、意味がないですよね」 岡田「はい」 白倉「いるかいないかっていう作業をやって…」 岡田「うーん」 白倉「まぁ百人に会おうが何万人に会おうが、その一人がいるかいないかっていう話なんで。あんまりああいうスケールって意味がないっていうふうに思ったりするんですよね(笑)」 岡田「(笑)あの、電王っていうのは弱い、」 白倉「(笑)はい」 岡田「主人公でしたっけ?」 白倉「はい。弱いっていうのはあの、まぁ、佐藤 健君…」 岡田「はいはい」 白倉「自身が、史上最弱って突然言い出したんですよね。記者会見のときに」 岡田「あっそうなんですね」 白倉「はい。こちらとしては、弱っちく見えるかもしれないけれど、」 岡田「心がちょっと弱いっていう…」 白倉「いや、体が弱くて、(笑)」 岡田「(笑)はい」 白倉「運がない」 岡田「おー」 白倉「でもこう、なんでしょう、心が非常に芯が強い。っていうつもりだったんですけど」 岡田「うん」 白倉「あのそれをこう…史上最弱ライダーって彼自身がズバッて言い切って」 岡田「へぇー。…宣伝上手なんですか?」 白倉「宣伝上手なんです(笑)」 岡田「(笑)キャッチフレーズつけて、言えるっていうのは大事ですよね」 白倉「ええ。高校生ですからね、当時」 岡田「高校生にして、スゴイですね」 白倉「はい。突然キャッチフレーズつけ出したから(笑)」 岡田「(笑)アハハハハハ、すごいですねぇ、それは。キャッチフレーズをつけて宣伝できるっていうのは。」 白倉「その…佐藤 健君のが一番例としては分かりやすいかもしれないですけど、彼の演じた役…その電王の良太郎っていう主人公は、なんていうの、別の人格が憑依する」 岡田「はい」 白倉「4つ5つの人格を演じ分けるっていうことが要求された役で」 岡田「はいはい。難しい役ですね」 白倉「はい。企画は立てるんです、そういう。こういう主人公にしようと。でも実際にそれを演じる俳優さんがいてはじめて成立する案件なので、オーディション進めながらもどっかで絶望してるんですね、そんな俳優さん、いるわけがないと」 岡田「うーん…そうですよね…難しいなぁっていう」 白倉「はい。だから新人さんを探しつつも、同時にキャスティング…例えばこの人はどうだろうとか、もう既に何年もやってらっしゃるスキルのある方。っていうのも当たりながら、同時にやってったんですよね」 岡田「はい」 白倉「そこにポンと佐藤 健って人がやって来て、あの…オーディションで配った、いろんな人格を演じ分けるっていう要求の込められている台本っていうのを、健君が見事に演じたのみならず、ものすごく楽しそうにやったんですよね」 岡田「理解をして、」 白倉「理解をして」 岡田「きっちりやったんですね」 白倉「はい。理解するかどうかを見ようとしてるんですけど、理解して演じのけて尚且つ楽しそう」 岡田「うーん…」 白倉「とんでもない高校生が現れたなっていう」 岡田「いたー!っていう」 白倉「はいはい。あまつさえキャッチフレーズつけ始めるんでもう(笑)どういうヤツなのか !? っていう 岡田「(笑) 複雑な設定とかが、こう…批判を浴びてしまうとか、そういうことはなかったですか?」 白倉「ございます」 岡田「(笑)ございます。 昔からでも仮面ライダーってこう…なんか言われそうな。言われながらも人気があってっていう感じがするんですけども」 白倉「はい。でもこう…仮面ライダーって元々結構複雑なものなんですよね」 岡田「はい」 白倉「でもそれを、その複雑なものから逃げずに、その時代時代で真正面から取り組んできた。そういうものだと思うんで。今の時代に、じゃあ仮面ライダーっていうものの精神をどう表現するかって言ったときに一見複雑に見えることがある。今の電王なんかもそうですけれど」 岡田「はい」 白倉「ただ、字面で書くと複雑なんですけれども、絵で見ればそんなに複雑には見えない…はずなんですよね」 岡田「仮面ライダーの定義って何ですか?ヒーローなんですか?そもそも」 白倉「あの、岡田さんの今言われた、ハテナマークっていうその疑問、ヒーローなんですか、それは?っていうのがまさしく本質を言い得てると思うんですよね」 岡田「はい」 白倉「初代の仮面ライダーって、ショッカーっていう組織が改造した改造人間なんですよね」 岡田「はい」 白倉「で何と戦うかっていうと、ショッカーの改造人間と戦う。」 岡田「はい。自分が改造されたとこと戦ってるわけですね」 白倉「はい。ショッカーの改造人間同士が戦う。で、最終的な敵はショッカーであると。」 岡田「はい」 白倉「で、その仮面ライダーの定義をそこから拾うんだとすると、まず一つは敵と味方が出自が同じ。出て来る所が同じ」 岡田「うんうん」 白倉「で二つ目は最終的な敵っていうのは自分を生み出した親?神なのか造物主なのか分かりませんけど自分を生みだしたもの」 岡田「はい」 白倉「で三つ目には…じゃあ仮面ライダーの最終ゴールって何なのかっていうと、ショッカーの改造人間っていうのを全部やっつけて、この世からいなくするっていうのがゴールだとしますよね」 岡田「はい」 白倉「そうすると、もしそれが実現したときには、世の中に最終的に残るただ一人の改造人間ってのは自分自身なんです。だから最後は、もしかしたら自分自身をも消し去らなければいけないのかもしれないですし、いづれにしても彼の仲間…同じ改造人間って世の中からいなくなってしまうんです。たぶんそれが三つ目の定義で、最終的には孤独に向かう。もしくは自己否定に向かう」 岡田「うーん」 白倉「たぶんその三要素が仮面ライダーっていうものを構成する要素であり、定義なんだろうっていうふうに思うんです。あの、バッタであるとか、バイクに乗ってるとかマフラーだとか、キックするとか、そういうのは現象であって、そうではなくそこをこう…奥深ーいところに流れているもの、これが仮面ライダーを40年間支えてきたものだなと、そう思ってるんですよね」 * * * 岡田「深いですよね?」 白倉「深いんですよ」 岡田「(笑)」 白倉「一口では言えないんですよ(笑)」 岡田「仮面ライダー深いなーっていう…(笑)」 白倉「深いんですよねぇ(笑)」 岡田「突き詰めると、そうですよね、自分を否定する…」 白倉「ええ」 岡田「最終的にどうすんだっていうのがありますからね」 白倉「はい。どうすんでしょうね。40年間皆考えてるんです 岡田「そのバランスはどうしてるんですか?その…行こうと思えばすごい行けちゃうじゃないですか。例えばバットマンであったらダークナイトみたいな世界に」 白倉「はい」 岡田「バットマンの中でもこう…違う感じで見せて行くっていう方法もあれば、もうバットマンとして見せて行く方法もあって」 白倉「はい。バランスはやっぱり娯楽のほうにウエイトを置かなきゃいけないんだろうと思うんですよね。仮面ライダーの本質を描こうとするっていうのは、制作者の姿勢としては間違ってはないと思うんですけれども、そもそもお客さんが見たいのは、特にお子さんを中心とした、仮面ライダーとは何たるかを考えたいわけじゃなくて、かっちょいいヒーローが見たいんですよね(^^)」 岡田「(笑)制作側としては見たくないんですか?あの…」 白倉「いや、見たいですよ」 岡田「(笑)」 白倉「見せたいですよ」 岡田「うわーっ!っていう、こんな…仮面ライダー、見たいなっていうのあると思うんですよ。たぶんもう、」 白倉「はい」 岡田「これが俺たちが作ってた仮面ライダーなんだっていうものを見たいっていう思いは、たぶん制作陣の中にはあるとは思うんですけど」 白倉「制作側の考えてることだけを突き詰めちゃうと自己満足になっちゃうと思ってるんですよね」 岡田「うーん」 白倉「自分たちが子どもの頃こう…仮面ライダーを見て育って、楽しませてもらった。でも、大人になってよく考えてみると、実は深かったなっていうことが後で分かる。だから後で分かればいいんだと思うんですよね」 岡田「うん」 白倉「とりあえず、今は目先はお子さんが、かっちょいいヒーローが悪い怪人をぶっ倒してる。バンザイ。それで構わないんだと思うんですよね」 岡田「平成シリーズの中で、ちょっとこれはやり過ぎたなっていうのはあるんですか?」 白倉「あ、だいたい…やり過ぎて(笑)」 岡田「(笑)でもそれが当たってるわけですよね?難しいとこじゃないですか」 白倉「まぁ… 岡田「(笑)その…だいたいその、バランスもこう…すごく悩むと思われるんですよね、台本が出来てくるときとかこう…。でもその…それが入っててやり過ぎたと思ってるぐらいがやっぱヒットしてたりとか、もあるわけですね?」 白倉「はい」 岡田「画面が暗いっていうふうに言われるっていうの、聞いたんですけども、それは言われたりするんですか?」 白倉「一時期ホントに毎週毎週…はい、言われたことがありました」 岡田「苦情ですか?」 白倉「苦情っていいますか、日曜朝8時に全編ナイトシーンってことはないだろうっていう(笑)」 岡田「(笑)アハハハハ…ああ、そうですね」 白倉「子どもが朝起きて、テレビつけたらまだ夜だったとかって(笑)」 岡田「(笑)」 白倉「いつになったら明けるの?夜が(笑)」 岡田「(笑)…あー。…それはなんでナイトシーンにしたんですか?その…気持ち的に、」 白倉「気持ち的に、」 岡田「…なシーンだったらずっとナイトシーンで」 白倉「はい。まぁ作品世界として」 岡田「あー。じゃあどっかで夜、外に出たら明るくなるみたいな、希望があるみたなシーンがどっかであったんですか?」 白倉「えー…来週は夜が明けるよっていう…(笑)」 岡田「 * * * 岡田「説得したりとかして行くんですか?」 白倉「はい。例えばこう…『仮面ライダー龍騎』っていう番組のときなんですけれども、9.11のあとに企画されたものなんですよね」 岡田「はい」 白倉「9.11っていうものを受けて、子どもたちに正義っていうものは何なのかっていうことをストレートに教える番組にしてくれっていうオーダーを受けたんですよ」 岡田「うーん…」 白倉「で、いろいろ考えた結果、今度の仮面ライダーには13人仮面ライダー出て来ますと。で生き残れるのは、ただ1人です。お互いに戦います。最後の1人になるまで。」 岡田「はい」 白倉「っていう企画書を出したんです」 岡田「(笑)、すごいですね」 白倉「なんでこういう内容になるの !? と。 いや、正義というものをお子さんに教えるにはどうしたらいいのかっていうことを真剣に考えたらこれ以外にはない!っていう結論に至りましたっ!(^^)」 岡田「(笑)、納得されましたか?」 白倉「オーダーした側ですから、あのー…そうなのかって…たぶんそれをおっしゃった方は、もっとザッツ正義の味方みたいな…」 岡田「わかりやすいのを」 白倉「ええ、分かりやすい正義の味方が出て来て、分かりやすい悪いヤツを倒すっていうものを望んでたんだと思うんです」 岡田「はい。守るんだーっ!とか」 白倉「はい。正義とはっっ !!! みたいな(笑)」 岡田「(笑) じゃあ、壊していいですっ!みたいな感じですよね」 白倉「人間の自由だぁっ!とかって(笑)」 岡田「(笑)。それを期待されたわけですよね?やっぱり911以降だっていうのもあって」 白倉「はい」 岡田「それを13人出して、みんな仮面ライダーで、みんな戦わせて、最後1人しか残らない(笑)」 白倉「(笑)」 岡田「それ挑戦じゃないですか」 白倉「挑戦ですね」 岡田「ものすごい、作り手の」 白倉「はい」 岡田「挑戦状叩き返してるみたいな、もんですよねぇ?」 白倉「はい。あの、覚悟してくださいと。正義を描くってなったら本気でやりますよ!っていう(笑)」 岡田「(笑)。 正義を本気で教えますよっていう…」 白倉「それはあながち嘘ではないんですよ。半分以上は本気なんですけれども、ただもう一方では計算もあって、戦い様が非常に派手になるし、」 岡田「はい」 白倉「子どもが喜ぶかなっていう計算っていうのは同時に当然働いてるんですよね」 岡田「そうですよね。仮面ライダー同士が戦って行くっていうのは、すごいことになりますよね」 白倉「はい。ただ、説得するときには、そういうエンターテイメントとしての要素っていうのを一回隠して、」 岡田「はい」 白倉「その…まぁ理屈ですかね、なぜ正義を描くのにこういう構造が必要なのかっていうことを、滔々と説明させていただいて、なかなか反論出来ないようにしておいて、」 岡田「すごいですねぇ…白倉さんは結構あれなんですね、ガツガツ行くタイプ…」 白倉「いやいや 岡田「(笑)」 白倉「あの、もうそれは10年も前の話ですので 岡田「(笑) ホントですか?」 白倉「今はそんな、はい 岡田「ガツガツ…これですよっ!て。だって分かんないですけど、仮面ライダー13人も出すってなったら、じゃあその…なんだろ、衣装やらなんやらっていうと、」 白倉「はい」 岡田「割りに合いそうもないじゃないですか」 白倉「割りに合わないですね」 岡田「プロデューサーとしての立ち場の…(笑)」 白倉「(笑)」 岡田「白倉さんだったら。キャストも増えるし。そんだけの話を描かなきゃいかなくなるし。その…体も作って行くのに13って、まず13体」 白倉「はい」 岡田「最初に13体います。っていうのって、割りに合わない…」 白倉「割りに合わないですね。1体で済んだところがいきなり13倍になる」 岡田「そうですよね。…ま、1体って体作るのがどのくらいか分からないですけど、ものすごい掛かると思うんですよね」 白倉「はい」 岡田「その、1体作るにしても1体で済むわけない、」 白倉「はい。よくお分かりで」 岡田「ですよね?こう…ちょっと怪我したり、いろんなことがあったら変えなきゃいけないことも…モデルチェンジしなきゃいけないこともあるから、済まないわけじゃないですか」 白倉「はい。おかげで予算管理スケジュール管理の腕が非常に鍛えられ、」 岡田「そうですよね。39体ぐらいいるかもしれない(笑)」 白倉「(笑) まさに。」 岡田「そうですよね。39体ぐらいまず用意してっていうことになると、合わないじゃないですか」 白倉「合わないです。でもそれを合うようにするために、いろんなビジネスの幅も広げて行く…だからその、段々目的が分かんなくなってくるんですけれど 岡田「(笑)」 白倉「そのビジネスを広げるためにやっているんだか、それともこう…それは単に資金稼ぎのための手段なのか、分からなくなって行くんですけれども、そうしたことを通じて、仮面ライダーっていうものにまつわる…まぁビジネスっていうふうに言い切っていいのかどうか分かりませんけれど、出版であったりイベントであったり、あるいは劇場に流すであったりとかっていうような、とにかく手を替え品を替え、制作資金を少しでも回収して行くために裾野も広げて行くっていうような努力を、その辺から始めて行ったりするのが今に至るっていうところもありますんで。ただ、もう13体出るとか、そういうのは出来ないです(笑)」 岡田「(笑)」 白倉「若気の至りです 岡田「でも、子どもたちに正義を教えるとか、いろんな役目も担っているわけですよね?」 白倉「はい」 岡田「911以降、そういうことをやろうとかっていうので、難しくなったりはしたんですか?その前とっていう」 白倉「難しくなりました」 岡田「正義というものがこう…」 白倉「その…ブッシュジュニア政権が、えー…例えば悪の枢軸であったり、テロ支援国家であったり、とにかくこう…レッテル?っていうものを貼って、それに対して軍事的に攻撃を加えるっていうことをやってた時期じゃないですか。まぁ今も若干こう…撤収し切ってないですけれども」 岡田「はい」 白倉「で、その現象に対してどう思ってるかっていう、その個人的な政治的な意識っていうのはさておき。…あの、例えば『悪』っていう言葉を使った瞬間に、悪の枢軸っていうようなレッテルに対してどう思うんだっていうことを突きつけられるんです」 岡田「はい」 白倉「戦うっていう行為を描いたり、あるいは正義だとか悪だとかを扱ってますよっていう触れ込みのものだったりを手掛けるときに、そうした問題から目を背けるっていうことができない。それに対する答え、あんたどう思ってんの?って言われたときに、その答えっていうのを常に用意してなきゃいけないっていう」 岡田「はい」 白倉「だから理論武装の必要性が非常に高まったっていう時期だったと思うんですよね」 岡田「うーん」 白倉「だからそれに対してちゃんとこう…立派かどうかは分かりませんけれど、こちら的には筋の通った回答を用意してますよと、いうことが必要だったです」 岡田「うーん…どういう回答を用意したんですか?そのとき」 白倉「1年間にわたって、描かれてるシリーズのテーマみたいなものなんで、ひと言で言えないと言いながらひと言で言うと 岡田「 白倉「はい(笑)」 岡田「極論、そうですよね(^^)」 白倉「はい(^^)」 * * * 岡田「正義っていう言葉って、年を重ねて行けば行くほど、難しい言葉だなって思うようになるじゃないですか」 白倉「はい」 岡田「それってたぶんもう皆さん当たり前に持っていて…まぁ歴史的に見ても言ったもん勝ちみたいなとこもあるし、」 白倉「(笑)」 岡田「(笑)、これが正義だぁー!って言って、勝っちゃえば歴史的に正義になるとか、その…それぞれの正義があって戦うじゃないですか」 白倉「はい」 岡田「だからそれぞれに理由があって、正義があって、その…上下関係とか上の人が思ってること下の人が思ってることっていろいろ違うからそれぞれに正義を探して、戦って…。難しいなって思うんですけど、でも子どもにそうは言えない…」 白倉「言えないですね」 岡田「正義っていうのは、正しい心で、守るとか、」 白倉「はい」 岡田「自分を犠牲にしてでも、」 白倉「はい、自己犠牲」 岡田「自己犠牲とか…正す?正していく?」 白倉「…だからそこが難しいところなんですよね。なんでしょう、例えばこう…弱いものを守るであるとか、そのために自分を犠牲にするとかっていうのは、現象としては非常に崇高なことだし、誰から見てもそれは間違ってるっていうふうには言えない。ただ、それだけが正義ですよっていうわけではない。」 岡田「うんうんうん」 白倉「特にまぁ、仮面ライダーのような番組…これはあのホント大人向けの娯楽でも同じなんですけれども、例えば仮面ライダーっていうのが出て来ますと。で怪人っていうのが出て来ますと。で、怪人が悪いことをしているから仮面ライダーがやっつけなきゃいけないのかっていうと、そうじゃないじゃないですか。」 岡田「はい」 白倉「あの、悪いことをしてるかどうかその行為の内容にかかわらず、仮面ライダーが怪人をやっつけるっていう番組なんですよ、あれは。だから放送上、そこに正義とか悪の要素が最初から入ってない。」 岡田「うん…(笑)」 白倉「だから水戸黄門であれば、水戸黄門が正しくて…あの、最初から悪代官って人が出て来て、さあこれから悪いことしますよと、で悪いことをするんですけど、あの、その悪いことの描写がなくても出て来た瞬間に悪代官。悪代官なんですよね」 岡田「はい」 白倉「もう役者さんの顔で決定されるぐらいの勢いで。悪代官じゃないですか。でも、大人向けのエンターテイメントであれば、それで許される。大人はそれでこう…娯楽として楽しめればいい。でも子どもがそういう同じ構図を持った番組を見たときに何を思うかっていうと、断然そのごっこ遊び的なもので、自分は仮面ライダーになりたい、で怪人役の子どもだったりお父さんだったりを、こう…暴力って言ったら身も蓋もないないんですけども、やっつけたい…それが正義なんだっていうふうに…思う」 岡田「うーん…」 白倉「そういうものだと思うんですよね。だからその…そのこと自体を現象として否定してもしょうがない。そこからこう…人間は進んで行かなきゃいけない。そこからスタートしなければいけないんで。でもそこからスタートしてもいいけれども、本当にそれでいいんだっけ?っていうことを、仮面ライダーっていう触れ込みで出て来た。仮面ライダーだからもう正義なんだ。その決めつけはホントにいいんだっけ?怪人として出て来たら怪人だからやっつけていいんだ、やっつけなきゃいけないんだ、それが正しいことなんだ、そういう思い込みはそれで合ってるんだっけ?っていうことを、今考えなくてもいいから、行く行く5年経って10年経って、あるいは大人になったときに、ちょっとその、考えるためのこう…芽みたいなものが芽生えるような、種まきが含まれていれば、もしかしたらそういう単純に、自分は正しくて自分以外の人間は間違ってるっていうふうなところから出発する考え方だけの社会じゃなくなって行くんじゃないかなっていうふうには思ってはいるんですよね」 〜 COLUMN 〜 岡田「さあということで、えー…仮面ライダーについて白倉さんとお話をさせていただきましたが、いやぁ、ホントにあの、今日難しいテーマだなと思ってたんですよ。今、正義って何ですか?って。こう…こういう年になって来ると正義って言葉難しいなーって…どういうふうに話していただけるんだろうな、って思ってたんですけども。まぁーねぇ。人それぞれ。って(笑)いう言葉だったり、なんだろ、仮面ライダーは自己否定が基本にあるんですよ、とか。深いですね。やっぱり、なんか、仮面ライダーを作る、なんだろ、ヒーローなのか…ま、ヒーローは使うとき使わないときがあるって帰りにおっしゃってくれてたんですけど。あのー…そういうヒーロー像を作るときに、子どもたちに対してきっちり、なんだろ、教えなきゃいけないとか…使命もあれば、正義とか大義とか難しいこう…ものを扱っているから、きっちり理論武装して話さなきゃいけないし。でも…ね。喜んでいただけるものを作るっていうこう…なんだろう、拘りもあるし。仮面ライダーの中でも、なんか今も結構なんか…強気な、何て言うんでしょうかね、ものを作ってらっしゃる…と思いますけど。もっとなんかね、もっと仮面ライダーの中身が見れる(笑) 大人の、僕たち世代を、うおぉ!仮面ライダースゲエな、っていうものを見てみたいですけどね。あの、映画とかで。見てみたいなって、すごく思いましたし、なんか大人になったら考えてほしいって言えるもの?お子さん相手に作ってるけど大人になったら何か残っててほしいって言いながらこう…ものを作れるってすごく素敵なことだなぁって思いましたね」 * * * 白倉「えー、私が初めて仮面ライダーに携わったのは入社直後のことですので、もう今は去ること20年ぐらい前のことなんですけど、正直…仮面ライダー古臭いコンテンツだっていうふうに思ってたんです。今ほど仮面ライダーはメジャーなものじゃなかったですし。思った以上に、もともとその、自分が作ってるっていうんじゃなくて、元のオリジナルの仮面ライダーっていうものに、そういう深みっていうものが既に含まれているっていうことに気づかされて。だから何十年経っても仮面ライダーっていうものは、ある注目をもって、生かされ続けてるんだろうなっていうことを改めて思います」 Guest 東映株式会社 執行役員:東京撮影所長兼美術部長 株式会社東映テレビ・プロダクション取締役社長 白倉伸一郎(しらくらしんいちろう) 〜TRACK LIST〜 『夜明けまえ』 スガシカオ 『SUPERMAN(IT'S NOT EASY)』 FIVE FOR FIGHTING 『孤高の英雄』 フラワーカンパニーズ 『NOBODY LIVES WITHOUT LOVE』 EDDI READER 『英雄ノヴァ』 MONOBRIGHT 『DON'T CRY FOR ME ARGENTINA』 MADONNA 『日曜日よりの使者』 HIGH LOWS |
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