中国:強制連行訴訟 指導部の「歴史問題で妥協せず」反映
毎日新聞 2014年03月18日 21時47分
【北京・工藤哲】日中戦争時に強制連行され過酷な労働を強いられたとして、中国人被害者や遺族らが日本コークス工業(旧三井鉱山)と三菱マテリアルを相手取り損害賠償や謝罪を求めた訴訟を北京市第1中級人民法院(地裁)が18日に受理したのは、中国側が歴史問題で妥協しない姿勢を堅持している事情が背景にある。
「訴えは中国の法律にも符合するものであり、重大な意義がある」。法院から受理の通知を受け北京市内で記者会見した原告側の康健(こうけん)弁護士はこう話し、裁判への自信を見せた。提訴時は原告が37人だったが、現在は40人に増えたという。
原告側は「2社による被害者は9415人」としており、強制連行に関わった企業は35社、被害者は3万8953人としている。原告団には北京市や河北省、山西省、上海市の弁護士もおり、同様の訴訟が中国各地で続く可能性もある。
強制連行を巡り、生存者や遺族が日本企業を提訴する訴訟は、日本の裁判所で1990年代以降相次いだ。地裁段階では勝訴判決も出たが、最高裁は2007年4月、「72年の日中共同声明により、中国国民は裁判で賠償請求できなくなった」との初判断を示し、原告敗訴が確定した。
しかし、中国側は「共同声明で放棄したのは国家間の賠償であり、個人の賠償請求は含まれていない」との立場を示しており、日本側の対応に不満を示していた。
裁判が開かれれば、企業に賠償を命じる判決が出る可能性があり、中国で事業を展開する日系企業にとって新たなリスクになりそうだ。
歴史問題を巡っては、全国人民代表大会(全人代=国会)で李克強(りこくきょう)首相が政府活動報告で「第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守り抜き、歴史の流れを逆行させることは決して許さない」と強調。
中国メディアによると、この直後に最長の12秒の拍手が起きており、国内で歴史問題は高い関心を集めている。22日から訪欧する習近平(しゅうきんぺい)国家主席はドイツなどで歴史問題で日本をけん制するとの見方も出ている。法院の提訴受理は、こうした指導部の言動を反映した動きとみられる。