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China Report 中国は今
【第147回】 2014年3月14日
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姫田小夏 [ジャーナリスト]

中国でのビジネスは“潮時”
引き際でも悶絶する日系企業

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 日系企業にとってもまた、その“色づけ部分”をどう扱うかが焦点となる。少なすぎれば暴挙に出られ、多すぎればさらに「もっと出せ」と足元を見られるからだ。

 北京大成(上海)律師事務所で高級顧問として活躍する高居宏文氏のもとには、日系企業から多くの撤退案件が寄せられる。高居氏は「会社の利益よりも事なかれ主義で通そうとする日本企業」を懸念し、その問題点を次のように指摘する。

 「『プラス2ヵ月』もしくは『法定金額の20%プラス』が中国の相場です。この相場前後に収まっていればリーズナブルといえる。財務状況が悪ければ『プラス1ヵ月』の提示でも御の字。けれども、暴動という面倒を回避するために、弁護士事務所や地方政府は『多ければ多いほどいい』と提案することもある。日本の大企業ほど、これを鵜呑みにしてしまうのです」

 また、この“色づけ”には、現地の総経理職に就く日本人の、微妙な心理が働いているとも語る。

 「“色づけ部分”を引き上げる張本人は日本人総経理、そんな傾向も出てきています。暴挙に出られるよりは、『ありがとう、総経理』と言われたいのでしょう。従業員に対して『本社からいい条件を引き出すから』と、半ばヒーローを演じようとするために、すっかり従業員の代理的存在に陥るケースもあります。

 本社の事なかれ主義も問題。暴動の発生を恐れ、結局『総経理が決めよ』と判断を押し付けてしまう。本社から突き放されれば、日本人総経理は中国人従業員のご機嫌を取らざるを得ません。複数の案件からはそんな構図が浮き彫りになります」

撤退に当たって
取るべきアプローチは?

 では、日本企業は会社清算に当たって、どのようなプローチがベターだと言えるのだろうか。高居氏は5つのポイントを挙げる。すなわち、①日本企業のような民主的解決は避ける、②計画・時期・金額は秘密裏に決める、③一度、案を示したらそれを曲げない、④提示から合意まで一気呵成に行う、⑤従業員を団結させずできるだけ分散させる、というものだ。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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