ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
特集 Biz.China 中国ビジネス最前線
China Report 中国は今
【第147回】 2014年3月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
姫田小夏 [ジャーナリスト]

中国でのビジネスは“潮時”
引き際でも悶絶する日系企業

previous page
2
nextpage

“早期進出組”と言われる一部の日本人の一部には、すでにベトナム、カンボジアなど東南アジアへ渡ってしまった人あり、日本の故郷へ戻ってしまった人ありと、散り散りになっている。辛抱強く奮闘してきた日本人経営者たちは、上海経済の発展に見切りをつけたのだろうか。

 上海脱出を加速させる背景には、中国のコスト上昇とともに、加速した労働集約型企業の「チャイナプラスワン」へのシフトなどの要素が存在する。また近年の二国間の関係悪化も大きく影響する。だが、同時に「中国の経済発展も一段落」とみなした日本人経営者が少なくないことをも物語っている。

撤退は中国人従業員の
暴挙・暴動と背中合わせ

 2013年、パナソニックは上海のプラズマテレビ工場を撤退させたが、上海の日系企業でも引き揚げを模索するところは少なくない。市内に拠点を構える法律事務所はここ1~2年、撤退や倒産などの案件処理がもっぱらの仕事となった。コンサルティング会社の取り扱い案件の中でも、新規の進出は珍しいという。

 しかし、撤退というこの幕引きも決してスムーズとは言えず、多くの日系企業が悪戦苦闘している。「中国撤退イバラの道」と日本経済新聞(1月14日)でも報道があったように、会社清算時には「50人程度の中規模の日系企業でも、撤退費用は1億円かかる」というのが相場だ。しかも、日本企業はここでも、中国人従業員が経営陣を軟禁するなど暴挙や、暴動と背中合わせのリスクを負わされている。

 日本の退職金に相当する経済補償金が十分でない場合、中国人従業員が暴挙に出る可能性は高い。会社が従業員との間の労働契約を合意解除する場合、日本企業は「従業員をどう満足させるのか」という課題と直面する。

 経済補償金は、「10年勤続であれば10ヵ月分、5年ならば5ヵ月分(の基本給を支給)」と法定基準額があるが、中国ではそれに“色づけ”するのが常識とされ、ナイキが江蘇省にある靴の生産ラインを撤退させる時には「法定基準額+1ヵ月分」という形で処理した。

previous page
2
nextpage
特集 Biz.China 中国ビジネス最前線
ダイヤモンド・オンライン 関連記事

DOLSpecial

underline

話題の記事

姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。


China Report 中国は今

90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

「China Report 中国は今」

⇒バックナンバー一覧