先人が切り開いたソニー・スピリットの復活を心から祈る――ソニーの病巣の深さを改めて考えた現代ビジネスブレイブ リーダーシップマガジン 辻野晃一郎「人生多毛作で行こう」より

2014年02月26日(水)
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正面から向き合うことにしか答えはない

振り返ってみれば、ソニーのリストラは、もうハワード・ストリンガー時代から延々と10年の単位で毎年のように続いていて、いわばその「慢性的リストラ文化」が唯一ハワードがソニーに残したものとさえ言えるのではないかと思う。今の平井体制になってからも、エレキの復活を声高に唱えながら、いつまでもオオカミ少年状態で、リストラや業績の下方修正は一向に収まらない。

無責任体質が染みついた、こんなどん底まで荒み切った状況の中では、現場にモチベーションを維持しろ、と言ってみたところでとてもそれどころではない。今のソニーの内部では、おそらくいたるところでモラルハザードが蔓延しているのではないかと想像する。リストラの慢性化に伴うモラルハザードの慢性化である。

今回、最初に私に絡んできた人や、その人の仲間と思われる人たちも、恐らく現場マネジメントの一員として、日々責任ある仕事をしている人たちなのだと思う。自分がどんなに懸命に頑張っても、自分の力の及ばないところでどうにもならない無力感に日々さいなまれているのかもしれない。

私もソニー時代に、カンパニープレジデントという立場を数年経験したが、経営層からはワンランク下のいわば前線の青年将校クラスのポジションであり、現場の悲哀は痛いほどよくわかる。困難な境遇や理不尽な状況の中でも最善を尽くし、自らのインテグリティを尊重して行動するというのは、並大抵のことではない。どこまでも孤独で重たい体験であり、そのような修羅場を経験しないと絶対にわからない世界でもある。

結論として、今回のツイッターでのプチ炎上から、私は改めて今のソニーが抱える病巣の根の深さを教えられた思いであるが、ソニーの凋落を加速する一方の無能な現経営陣へのやるせない怒りを新たにする一方で、現場の人達への深い同情を禁じ得ない。すでに8年も前にソニーを離れた自分にはもはや何の関わりもないことではあるが、いまだに何か自分にできることはないものだろうか、と考え込んでしまうのである。

もしも、一言だけ、助言を許されるのであれば、やはり、「問題や現状に正面から向き合う以外に答えはない」ということなのかと思う。どんなことでも、自分自身で、まず課題にも相手にも「面と向き合うこと」以外に方法はない。

英語なら、face it。人に対してならface to face。思うに、そういうモラルがどんどん衰退しているように見える。小さいことを厳しく攻め立てるばかりで、自ら向き合う姿勢を重んじなくなっているというか。上の人がそうであればなおさらだ。繰り返すが、現実や直接の相手に対して、面と向かい合うことなしに、何かが変ったり起こったりするということはない。

他人事などない、すべては自分事

目に見えることや、聞こえること、人の話や体験を、「自分のこととして考える」ことが「学ぶ」ための基本姿勢であると思う。実はこの世のすべての事象はつながっていて、他人事なんていうものはない。インターネットの時代になって、ますますその思いを強くしている。

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