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ミクパ♪

幾田洋介氏 / 荻窪男氏
株式会社MAGES.店舗事業部システムデザイナー / 株式会社オギクボマン 代表取締役

バーチャルアイドルによるリアルライブでファンを魅了

初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアから発売されているボーカロイド・ソフトウェア*およびキャラクターの名称で、歌詞とメロディを入力することで、声優の声をもとにした歌声を合成できる。2007年に発売されて以来、インターネットを中心に10万曲以上におよぶ楽曲が生み出された。ユーザーは、非営利目的であれば、初音ミクのキャラクター画像のほぼ自由な利用を認められている。そのため、楽曲のみならずイラストやCGなど、歌声以外での創作活動も盛んだ。
(*VOCALOID(ボーカロイド/ボカロ)はヤマハ株式会社の登録商標である。)

ミクパ♪とは?

その人気を受け、初音ミクのライブイベントも2009年を皮切りに開催されており、その規模も個人主催のものから企業主催の大規模なものまで様々。その中のひとつが、2011年から株式会社MAGES.が主催する「初音ミク ライブパーティ」通称ミクパ♪だ。2013年3月9日(ミクの日)には初の関西公演として5000人のファンを動員した。

初音ミクという3D CGキャラクターが、ステージ上で歌う。言葉にするとシンプルだが、3時間に及ぶコンサートを実現するには、膨大な準備が必要となる。リアリティを出すため、ミクの映像は特殊な、透明のアクリル製スクリーンに映像を投影される。そのスクリーンの後方にバックバンドを配することにより、実際にキャラクターがステージ上に存在するように見えるのだ。また、初音ミクのボイストラックに合わせて、生バンドが実際に演奏することで、よりリアルなライブパフォーマンスとなっている。

よりクオリティにこだわって

このミクパ♪で、Blackmagic DesignのUltra Studio 3D キャプチャー・再生デバイスおよびSSDレコーダー・プレーヤーのHyperDeck Studioが活用された。そのミクパ♪で映像制作という形で携わっている株式会社MAGES.の幾田洋介氏と株式会社オギクボマンの荻窪男(オギクボマン)氏にお話を伺った。舞台監督の描いたビジョンを確実に実現していくのがふたりの役割だ。

「私たちは主に、出来上がったCG映像を最終的な出力用の映像に変えていく作業をしています。その他、演出に関わることで、ステージ上のLEDスクリーンに出す映像の制作も手がけています。ステージに桜を降らせたい、ミクの衣装チェンジの際にどんなエフェクトを使ってチェンジさせるか、などを演出の意図を汲み取って実際に作りファイル化します」と語るのは、荻窪男氏。ミクパ♪以外にもMAGES. の企画で幾田氏と多くのイベントに携わり、Blackmagic DesignのMini Converterシリーズなどは以前からよく使用していたと言う。

荻窪男氏は、「60Pの高画質で出力するというのが第一条件だった」と話す。以前は、30Pまでしか出力できない別のソリューションを使っていたが「 ミクパ♪で使用している特殊なアクリル板スクリーンに 映像を投影する際に、現状に一番きれいに見える方法として、1080 60Pで出したいと思いました。」その条件をもとに様々な機材を検討し、辿り着いたのがBlackmagic DesignのUltraStudio 3DおよびHyperDeck Studioだ。また、制作環境はMacが多く、スタッフも殆どMacユーザーだったため、Blackmagic Design製品とMacの親和性の良さもポイントだと言う。

シンプルなシステムで、大規模なライブコンサートを実現

MacbookProにインストールした、Blackmagic DesignのMedia Expressソフトウェアから出力されたビデオとオーディオは、Thunderbolt経由でUltraStudio 3Dに接続される。映像はHD-SDIでスイッチャーに、オーディオは同期をとるためにPro toolsに送られた。そのほか、様々な周辺機器を経て、最終的にその映像がプロジェクターに送られた。

「こんなシンプルなシステムですべて行っている、というのにはじめはビックリしました。 すべてのマスターは、Media Expressのトラックから出ていました」と幾田氏は言う。また、同イベントでは4式のHyperDeck Studio が使用された。2式はバックアップ用の再生機として使用し、Mac上のMedia Expressから本線、HyperDeck Studioからバックアップの映像を流した。「メインの映像はUltraStudio 3Dの繋がったコンピューターから、バックアップはHyperDeck Studioから出して、コンピュータートラブルなどの不測の事態が起きたときに、いつでも本線からバックアップに切り替えられるようにしました。」そのほか、ステージの両端に設置されたサービスモニター用にそれぞれ映像を再生するためにも使われた。また、HDMIからSDIに変換するため、Blackmagic Design Mini Converters HDMI to SDIも使用された。

「こういうシステムを採用した理由は、直前まで変更があることも挙げられます。すべて、準備が完全に終わっていて現場に行ったら同期をとってしまえば終わりというような状況であればいいですが、直前まで本当に色々な調整をしていますので、修正が入って、CGをレンダリングし直してコンピューターに戻す、という作業が現場に到着してからもあることを考えると、Media ExpressとUltraStudio 3Dの組み合わせなら、そのままデータを再生すればいいし、HyperDeck StudioもSSDにデータをコピーすればいいだけなので簡単なんです。」と幾田氏は話す。

また、Blackmagic Designのソリューションのコストパフォーマンス良さ、コンパクトさとハンドリングの良さを選定の理由に挙げた荻窪男氏は、「Blackmagic Designのサポートの方が親身になって対応していただいたことも、選定の理由のひとつですね。それまで、HyperDeck Studioなどは全く使い方も分かっておらず、しかも今回のミクパ♪では、Blackmagic Designの想定外の使い方をしていると思いますが、そういう点でも技術の方にいろいろ相談を受けていただきました。」と語る。

幾田氏はミクパ♪以外でも、ライブイベントの収録や配信等でATEM Television StudioやATEM 1M/E Production Switcher、intensityシリーズも使用していると言う。「Mini Converterは山ほど使っています(笑)。最近はThuderbolt搭載のUltraStudio Mini MonitorとMini Recorderがすごく便利です。電源いらずで持ち運びもしやすいので、ケーブルの一部のような感覚で差せば使えてしまうところも気に入っています」と幾田氏は話す。

「大規模なシステムを導入しようとすると、機材を借りてきて検証するのも大変です。Blackmagic Designのソリューションなら、とてもシンプルな構成でシステムが組めるので、ちょっとしたリハーサルがあるときでも、バックアップ用の機材が必要なければすべて手持ちで持って行ける手軽さです」と、幾田氏は語った。

MAGES.では、今後、2Kや4Kのような高解像度で、よりリアリティを追求したミクパ♪の映像を作ることも考えているという。さらにクオリティの高い映像で、多くのファンを魅了することだろう。

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