団体交渉、斡旋・調停で折り合えなかったら…
ここで何らかの折り合いがつけばいいのですが平行線をたどった場合は団体交渉を繰り返します。組合側が「こりゃダメだ」と思ったらだいたい都道府県労働委員会へ斡旋や調停などを申請します。労働委員会は組合推薦の労働者委員、経営者推薦の使用者委員および労働者委員と使用者委員の2者が同意して任命される公益委員の3者で構成されます。斡旋でかなりの確率で歩み寄る事例が多いようです。
それでもダメな場合にストライキを打つのが通常です。ストは労働関係調整法に定めがあり、この間も労働委員会が調整を続けて解決に向かおうとします。先に述べた斡旋や調停も労働関係調整法にありようが記載されています。つまりストに突入しても多くは団体交渉を並行して進め、労働委員会が介在します。
ストライキを打つメリットは
ストを打つ労働者側最大のメリットは、団体交渉のように密室ではなく、公然と反旗を翻して社会にその理不尽を訴えられる点でしょう。マスコミが報道しなくても今はネットで容易に主張を述べられます。ある企業を検索した際に「雇止め不当!○○社は理不尽な決定を今すぐ取り消せ」などという見出しとともに組合員(1人で入れる組合も大勢来てくれます)が本社前で戦っている写真など掲載されたら経営陣もかなりのダメージを受けるでしょう。
「勤労者」であれば誰でもストをする権利はあります。それは憲法が保障した権利で駄々をこねるのとはまったく違います。しかし主張に整合性がなかったり、きちんとした手順を踏まないと「駄々」と思われる危険性があります。ストをしたからクビになることもありません。権利を行使しているだけで、ストを理由に解雇などしたらズバリ違法となります。
ただ非正規が正社員に比べて立場が弱いのも事実。雇止めのケースだと紛争中は給料がもらえないし、職場復帰を訴えているのだから転職もできません。これがサービス残業や著しく悪い労働環境是正のためにストまで打つとなると、それこそ次に雇止めされかねないとの心理的圧力がかかってためらうでしょう。また徹底的に戦っても職場復帰まで勝ち取れるのは今のところ多くなく、金銭解決が目立ちます。長期化すれば1年・2年とかかり、その間の出費もバカになりません。したがって非正規雇用者に労働三権はあるものの実態として空文化しているとみなし、さらなる法改正を求める声もあるのです。
ちなみに公務員にはスト権がありません。最近増加している「非正規公務員」はどうかという難問が残っています。
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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)
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2014/3/18 20:45 更新
『成功の心理学』『ビジネスとテックの最先端』のプレゼン16本(3/13)