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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > GS恋姫無双 > 第五十五話
フラグ回です。
あと、雪蓮のマナの件は、ちょっといじります。
危なく、危険で鬼気だったわ。
いやいや、危機、そう危機。
危うく目覚めるところだったわよ。
雪蓮お姉ちゃんから私を同じく内政型だと思われていたはずの蓮華お姉ちゃんが、なんとこのたび出征となった。
びっくりだ。
それも、あの横島忠夫を副官につけて。
初めて会ったときは、こう、パッとしない格好悪い男だと思ってた。
でも、政策面で冥琳と意見を交わし、町中や周辺の村をどんどん改革してゆく腕前は物凄いものがあって、びっくりさせられた。
一番驚いたのは、料理。
物凄くおいしくて、食べたことのない料理ばっかりで、そのうえ、あのお酒まで自分で作っているという。
食事の合間に出てきた甘いお菓子も、物凄くおいしかった。
一芸に秀でた人は尊敬されるべきだって雪蓮お姉ちゃんは言っていたけど、二芸も三芸も優れている横島忠夫って、凄い、と思える。
だから雪蓮おねえちゃんから「横島の血を孫呉に取り込むわ」って聞いて、私もワクワクしてしまった。
だって、私だったら政務に関わりなく横島に関われるし、何なら嫁に出てもいいんだし。
そう思ったら一直線、ってなったらよかったんだけど、なぜか穏の勉強が無茶苦茶はかどって時間が取れなかった。
いつもなら孔子の一つでも読み始めれば、乱れ乱れて私が逃走できるところなのに、丸一日、何ともなかった。
どうしたものかと聞いてみれば、なんと横島のやつの差し金で、穏が乱れないように仙術を使ったそうだ。
・・・よこしまぁぁぁぁ!!!
思わず叫んでしまったんだけど、よくよく考えれば武術も政務も、そして仙術と言う摩訶不思議な力も持っているという事になる。
これは間近で見たい。
そう思って色々と画策するんだけど、エロくならない穏は結構最強で、抜け出す間すらない。
くそぉ、と悔しがっているうちに、とうとう出征当日になってしまった。
さすがに色々と忙しいらしく、今日は授業無しという隙が出来たことに小躍りした私は、どうにか軍備倉庫に潜り込んで、一般兵の格好を奪取。
出兵の波の中に紛れ込むことに成功した。
成功したんだけど、成功したとは言い難かった。
なにしろ、門を出る前に既に兵たちにはばれていたし。
「・・・え、なんで報告しないの?」
「姫様も少しは卓上以外の勉強も必要でしょうし」
肩をすくめるのは横島と真桜が連れてきた黄忠城の兵たち。
「ああ、尚香様・・・、これは部隊編成を変えなくちゃなりませんね」
ちょっとあわてて見せたのは孫呉の兵。
なんだか歓迎してくれているみたいで安心したんだけど、これが油断だった。
こういう対応をしている背後で本体に伝令が飛んでいて、気づいたら明命に捕縛されていた。
もう、何があったのか、夢とか幻とかそういう事じゃなくて、真剣に恐怖の一端を感じたわ。
ぐるぐる巻きにされて猿轡までかまされたのは仕方ないとして、御不浄を気にしてもらえなくて精神的な障害を感じる段階まで追い詰められたのは誰の所為かしら?
まぁ一応目的の逃亡は完了したし、ゆっくり羽を伸ばせる、そう思ったの私は、本当に何もわかっていなかったことに気付いたのだった。
賊の砦を見下ろせるところで、シャオちゃんと一緒に蓮華の指揮を見ていた。
最初は興奮していたシャオちゃんだが、徐々に言葉少なになってゆき、最後には無言になっていた。
作戦開始から一時間ほどで賊は全滅し、眼下では勝鬨が挙げられていた。
「・・・ねぇ横島」
「なんだ、シャオちゃん」
「おねえちゃん、何人も切ってたね」
「そうだな」
きゅっと俺の腕につかまるシャオちゃんは、少し震えている。
「庶人の暮らしを守る為、とはいえ殺しは殺しだ。怖いか?」
「・・・少し」
空いてる手でシャオちゃんを撫でる。
「人の罪ってのはさ、色々あるんだけど、殺人ってのは難しいもんだ」
基本殺人が禁忌とされているのは、自分が殺されたくないから、という理由に尽きる。
「殺されたくないから?」
「そ。罪ってやつは、他人からされたくないことを並べたもんだって思えばいい」
殺人、強盗、放火、強姦、されたくないことを並べれば、しちゃいけないことがわかるというモノだ。
しかし、それをあえて無視する輩も多い。
だから、身を守る手法の無い庶人に代わり軍が悪を滅する。
「盗み、殺し、人の成果を横から盗む悪者が、二度と罪を犯せないようにする、そう言う断罪が今回の目的だ」
じっと眼下を見つめるシャオちゃん。
そして周辺に隠れて逃亡兵を待ち構える美衣たち。
このまま何も起こらなければいいな、と思ったが、息を切らして近づいてくる人陰多数。
「・・・ちくしょう! なんてうんがわりぃ!!」
「いやちょっとまてよ、そこの男、かねもってそうだぜ!!」
「へへへ、小娘付じゃねーか!」
「こりゃちょっと楽しませてもらおーぜ」
「おいおい、呉軍に殺されかけて改心しねーって、どんだけ性根が腐ってんだよ?」
俺の言葉を聞いて、一瞬顔をゆがめた男たちだが、いやらしい顔を浮かべて武器を構える。
「へ、へへ、一人だけで何言ってやがるんだ?」
「小娘と有り金おいてきな、命だけは助けてやるぜ?」
「おい、子悪党、お前らのセリフって台本でもあるのか? 屑に限って同じこと言いやがる。専門学校で資格試験でもあるんじゃねーのか?」
俺のセリフを聞いて、何を言われているかよくわかっていなかったようだが、馬鹿にされたことだけは判ったらしく、一斉に飛び掛かってきた。
それは夢のような光景だった。
碧色の光剣を閃かせ、切り裂いてゆく横島。
雪蓮姉さまのように圧倒されるような剣気はなく、殺意もない。
ただ、邪魔なものを処理している、そんな風に感じる。
ただそれは美しくて、ただそれは神々しくて。
こんな風景をどこかで見たことがあるかもしれない。
いや、そんな記憶はない。
でも、私が生まれる遥か前に、こんな光景がどこかであったに違いないと思わされた。
私が孫尚香として生まれる遥か前に、私はこの神々しい風景を知っていたのだろう。
だから心が悲鳴を上げる。
だから心が叫びをあげる。
アイシテイルと叫んでいる。
アイシテイルと悲鳴を上げる。
ああ、雪蓮お姉ちゃん、わたしは理解したよ。
孫呉がヨコシマを求めてるんじゃない。
私がヨコシマを求めているんだね。
すべてを切り伏せても息一つ乱していないヨコシマは、私の隣になった。
「怖かったんか?」
「ううん、怖くなかった」
「でも、ちょっと泣いてるだろ?」
「・・・ヨコシマが綺麗だったから、感動しちゃった」
私がほほ笑むと、ヨコシマも微笑んでくれた。
それがとてもうれしすぎて。
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