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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > 恥ずかしながら戻ってまいりました!~GS横島忠夫の再演 > 第六十六話
2013年最後の更新です。
よいお年を~
戻る前まで遡ってみても、これほどの光景があっただろうか、と哲学的な悩みを感じてしまう。
目の前の人工ビーチには、六道女学院の修学旅行参加生徒と横島が在学している高校の女子生徒、そして妖怪学生の女子部が戯れていた。
男女間のつき合いがあるというカップルは時間をずらしてもらい、そして男子生徒は六女ナンパをあきらめてもらった。
様々な交渉を行って現れた、時間限定の夢の世界が目の前に広がっている。
勿論、自分だけに与えられた光景ではない。
同じように男が視界に入らないような形でこの光景を楽しんでいる男子もいっぱいいるわけで。
ともあれ、この光景が維持されっるのはあと十分だけ。
このあと高校の男子も参加しないと、六女の女子生徒やこの修学旅行でカップルになることを目指している女子生徒にも申し訳ない。
だか、だかしかし。
「・・・なんつうか、圧倒的光景だな」
「同感ですじゃ」
「なんというか、あの中に入ってゆく勇気がありませんね」
雪之丞、タイガー、ピート。
形はちがえど、それなりにこの光景に釘付けなのは変わらない。
「雪之丞、浮気にならない程度に、な」
「雪之丞さん、浮気はだめじゃ」
「雪之丞さん、一夫多妻なんて騒ぎは横島さんだけにしてくださいね」
おいおい、ピートや。
そりゃどういう騒ぎだ?
「横島さん、妖怪梁山泊での毎日を知らないわけではありませんよ? 神魔妖怪関わらず、挙いて集まり乱れ夜、とまで噂されてるんですからね?」
「だれやだれや、そんな根も葉もない噂を!」
とまぁ、こんな話をしつつ、未だ砂浜にでれないのは、昨晩のダメージがあるから、ともいえる。
あのシーンは、というか一連の騒動はダメージが大きすぎた。
事の始まりは、横須賀港からエクセリオンが出向した後だった。
妖怪学生と女学院女子がにこやかに話しているという夢の光景の端で、雪之丞が切れたのだ。
色々とフォローはされているが、姿形を隠してつき合っているヤツにそこまでいわれる筋合いはない! と。
正直、事情を知っている人間から見れば言い過ぎだといえる内容だったが、ことのほか久美は正面から受け止めた。
そして、俺たちを隠れた場所に呼び寄せた春日久美は、自らの正体をカミングアウトした。
はじめは呆然とする男。
しかし、頭をかきむしり、そして言い切った。
「俺の女は『春日久美』だ!! 関係のない『きみ』には引っ込んでいてもらおう!!」
初めはなにが起きているかわからない「それ」であったが、意図を察知して「春日久美」に変わった。
「そうや、おまえは春日久美や。見失ったら何度でも俺が言い直すで。それが、恋人の役目や!!」
この一件は横島達だけではなく、六女の生徒にも目撃されており、以降、このカップルへの祝辞というか公認祝福が山のように集まったのだった。
まさかのカミングアウトとカップル宣言に、見せられていた俺たちは猛烈なボディーブローを食らったようにフラフラになり宿舎のベットに倒れ込むしかできなかった。
「まーくんすげー、まーくんかっこいいなー」
魘されて、こんな事をしゃべっていたらしい。
閑話休題
ネオアトランティス観光修学旅行は、完全に自由時間で構成されている。
なにしろ、この国家内での悪さは事実上不可能だし、未成年の不純異性交遊で出来ることは性交未満と決まっているから。
さから教員たちも大いに羽を伸ばしており、海水浴や酒場、そして驚きのびっくり科学体験を堪能していたりする。
勿論、大人のカップル向けの施設もあることから、教員同士の友情以上の高まりもあり、かなり流されるような関係を進めているようだった。
もちろん、生徒たちにとって、この降って沸いたかのような他校との修学旅行は修学以上の価値のある時間であることは間違いなく、オカルト系就職が見込めない生徒などは、これを期に一般学科への進学を視野に入れたお付き合いを男子生徒に見いだしていたりもする。
「さすが六道学院。お見合いの補助まで仕掛けてくれるだなんて」
「六道閨閥の保護の手厚さが胸熱」
などという誤解も生まれているが、このへんは六道夫人も事実にないことなのでスルー。
現実の話でいえば、六道女学院に進学したからと言ってもGSにならなければならない訳ではない。
が、オカルト知識が生きる職場が結構多くなってきたので、六道女学院卒業と言うだけで就職状況が良いという面もある。
昨今話題の人型建設機も霊能があると反応性がいいのは有名な話で、この修学旅行中でも人型建設機の体験乗車会なんていうカリキュラムも人気だったりする。
もちろん、一般学科の男子が「巨大ロボ」登場の機会を無にするはずもなく、路上研修を受けられるだけの学科試験を修学旅行前に終えている猛者が少なくないのは事実だ。
そして海水浴にもいかずにシミュレータに缶詰な姿はどこか哀愁を感じる姿でもある。
そんなシミュレータ室に数人の女子がいる。
それは芦田三姉妹であった。
当然、声をかけようかとか思う男もいるが、現実的な話でいえばシミュレータ成績が隔絶していて声をかけるのもはばかられる状態といえた。
「んー、さすがヨコチマ設定でちゅ。泣けるほど厳しいでちゅね」
「んーでも、逆に私たちが如何に力任せだったかがしれるわよね」
「人間向けのおもちゃになに向きになってるんだか」
こんな会話をしていても、それなりに競り合った成績なのは流石といえる。
なぜこの三人がネオアトランティスにいるか?
実はネオアトランティス、神魔妖怪幽霊であっても国籍を取得できるのだ。
ちゃんと一定の税金を払い、思想チェックを受ければ「成人」として認められるという事で、はぐれ魔族や妖怪に大人気となり、かなりの勢いで国民登録が進んでいる。
加えて、ネオアトランティスで国籍がとれれば、合法的に外国に行けるということで、パスポートを持った妖怪や神魔が日本国内へ観光に来るというとんでもない事態が巻き起こりつつある。
外貨、というか通貨流入で国内インフレが起きるわけでもなし、ネオアトランティス製品が日本市場を荒らすわけでもなし、さらに言えば悪天候時の船の寄港地として大人気のネオアトランティスの国民を歓迎しないわけがなく、多くの神魔が直接各国に訪れる前に日本をハブとして使うという流れの影響で空前の好景気になりつつある。
人間世界での流通に詳しくなりつつある神魔も多く、必要経費として色々と観光消費をするおかげか、様々な神魔妖怪歓迎の方向が強く示され、某魔界都市状態のマンションを中心とした地域で神魔宿泊ホテルなどと言う珍妙なものすらできあがったのは、まさに日本らしさの現れといえる。
そんなわけで、芦田一門はネオアトランティス国籍を取得して、正々堂々と生活していたのだった。
むろん、南極の到達不能極に存在するアジトも健在で、そろそろゲートでつなごうかという話もちらほらとでている。
「・・・ふぅ、さすがにこれ以上は無理ね」
「ヨコシマに相談すればいいじゃない」
「ベスパちゃんは解ってないでちゅ。見えない努力で好感度アップをねらうものなんでちゅよ」
好感度アップをねらうなら、昼間は侍るべきだろうと、誰かが思ったわけだが、それは誰だかは知らない。
圧倒的に男子の数が少ない影響で、浜辺はプチハーレムを形成している男子が多い。
ヴァンパイヤハーフのピートはもとより、霊能実習でコマを持っている横島・タイガーにも声がかかる。
ただ、雪之丞には六女公認の彼女がいるので「彼女と仲良くねー」という声がかかるという、微妙に理不尽な流れもあったりするのだが仕方ないだろう。
加えるなら、普段から横島と大騒ぎしているクラスメイトは肥満が少なく、水着の見た目が見苦しくない影響で箱入り女子の多い六女も声をかけやすいそうで、同級生女子が目を付けていたという男子から六女生徒が集って行っていた。
流石女子。
目の付け所がシャープで実践的といえる。
負けてたまるかと共学女子も集るという流れで、それはそれはもう、ものすごいプチハーレムが数々と形成されてゆくという恐ろしい流れ。
ともあれ、別格雪之丞と横島の周りにはそれは形成されなかったわけだが、その空気を読まないで飛び込む陰もある。
「よこちまーーーー!」
「お。パビ、元気か?」
抱きつかれたままの施政でぐるぐる回し肩車すると、うれしそうに笑っているのが解る。
「ヨコシマ、ごめんねパビったらもう、興奮しちゃって」
「いいんだよ、ルシオラ。元気なのが一番だ、な? パビ」
さわやかな笑みでありつつ、水着姿のルシオラを堪能する横島であったが、一応隣の雪之丞に一声。
「まぁ、なんだ、わりぃ」
「・・・分かってる結果だったしな」
苦笑いでその場を去ろうとする雪之丞をベスパが止める。
「姉さんとパビがデレな状態に、私だけ追いてゆくのか? 男らしく助けてくれ」
それで彫れられる訳じゃねーけど、と思いつつ、まぁいいかと苦笑いの雪之丞。
「じゃ、まぁ、姉妹喧嘩は任せたぜ?」
原作と違い、恐ろしいまでに空気の読める男、伊達雪之丞であった。
完全に自由時間ばかりと行っても、様々なカリキュラムが組まれており、それを自由選択でレポートを書くという最低限の学習要項がある。
すべての時間を使って人型汎用建設機の試乗レポートをという猛者もいれば、チューブトレインの運行改善なんて言うマニアックレポートも計画されていた。
そんななかで、横島は家庭菜園の経験を生かして、早期栽培へのアプローチを題材にしていた。
種はマンションのプランターで採れたものを使用して。
計画では三日ほどで結果がでるはずだったのだが、昨日埋めた種がすでに発芽していたのには驚いた横島であった。
似たような話で、ピートも球根の水生栽培をとなっている。
ただし、超科学で生成された超科学な水で、である。
これは飲食に使われるネオアトランティスの水の安全性の宣伝になると言うことでいい評判になったのだが、こちらも急成長していた。
お互いに植物系のレポートを書くつもりであった二人は、急遽共同研究と言うことで同じ場所に置き直し、監視用の文珠も据えてみたのだが・・・。
「まさか、こういう結果とは」
「いやぁ、さすがはネオアトランティス、といったところですかねぇ」
監視用の文珠に撮影されたその光景には、なんと半透明の妖精達が小躍りで宴会をしており、その中心にいる球根や植物を祝福していた。
『新たな仲間に、かんぱーーーい!』
『すごい生命力よね、この子たち』
『聞いた聞いた? 種だった子、あの横島様はお連れになった子ですってぇ!!』
『球根の子も・・・』
『『『『『『きゃーーーー、がんばれーーーー!』』』』』』
なんというか、実にファンタジー。
これはどう見てもレポートにはならないわ、と苦笑いの横島だったが、逆にいい結果だと笑顔のピート。
「だって、横島さん。この超科学的な都市に自然を祝福できるほどの妖精が住み着いているんですよ? 実に素晴らしいじゃないですか」
科学と相容れない妖精という存在が、集って生活している超科学の町。
確かにおもしろい。
「よし、再び路線変更と言うことで、そっちをレポートするか、ピート」
「ええ、賛成です横島さん」
横島的には、マニドライブの影響で、科学都市と言うよりも妖精郷としての性格が強くなっているであろう事は予想できたが、それはそれ。
地道な調査と実証こそ科学といえると確信している横島であった。
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