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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > 恥ずかしながら戻ってまいりました!~GS横島忠夫の再演 > 第六十三話
横須賀沖は猿島の地下深くに作った秘密ドックで、俺たちは途方に暮れていた。
「まさかなぁ・・・・」
「まさかのぉ・・・・」
思わずため息の俺とカオス。
目の前の偽装寸前の船体を見つつ、ため息が止まらない。
まさかまさか、
「「魔人侵攻が終わっていたとはなぁ・・・」」
そう、アシュタロスによる魔人侵攻。
アカシックレコード上ではすでに終わっていることになってしまっていたのだ。
ことの始まりは月から帰還したあとのこと。
魔力たっぷりの月の石と、試験採掘したヘリウム3のサンプルを配り終えたあと、芦田から緊急招集があったのだ。
それも神魔最高責任者の裏書つきで。
参加者は、俺、美神さん、カオス、小竜姫様、猿神師匠と芦田一族。
これから始まる芦田戦争のルール設定かと思いや、とんでもないことが発表された。
『いやー、魔人侵攻、世界意思に認識されてもうた』
『いやはや、こまりましたねぇ。芦田さん、侵攻出来ませんよ?』
「「「「「え?」」」」」
基本、世界の流れはアカシックレコードに大まかな流れとして大きな事件が記載されているそうだ。
で、その事件の範囲で規模を小さくしたり左右したりして禍福のバランスをとっているのが神魔なのだそうだ。
そんなわけで、プログラムどおりに進んでいるだろうなーとチェックをしてみたら、なんと、アシュタロスによる人界侵攻が、魔族による人界侵攻に書き換わっており、終了済み、というカテゴリーになっていたそうだ。
「まてまて、芦田! おめー、いつ侵攻したぁ!?」
「いやいや、まってくれ! 私はまだ準備できておらんよ!?」
「俺だって、ネタ兵器を仕込んでだなぁ!!」
「私とて同じだ!!」
「「じゃ、なんで!?」」
思わず芦田と一緒に最高責任者たちを見ると、苦笑いだった。
『ほら、先日、世界同時で魔族の中堅が反乱を起こしたではないですか』
『あれが人界侵攻にカウントされたんやな』
「「そんな!!!!」」
ああ、そんな、ばかな・・・・
崩れ落ちる俺と芦田。
カオスも呆然としていた。
「せっかく、せっかく、ホーミングレーザーを開発できたのに・・・」
「ああ、完成したのかね! 私もあれが・・・・」
「うむ、テレサネットワークによる想念場形成も目処が立ったのだがのぉ・・・」
『『あんたら、どこまでやってんだ!?』』
なぜか、最高責任者たちに突っ込まれた俺たちだった。
ともあれ、人界侵攻に合わせた大戦争ごっこはお預けになり、思わず涙する俺たち。
「とりあえず、横島君。ヤ◎トはお披露目してもいいんでしょ?」
「え? 美神さん。おれ、ヤ◎トなんて作ってませんよ?」
「・・・え?」
南海沖の「プレート」に巻き込まれていた、超古代のメガフロートを京大古代研究室の冬月教授と発掘して・・・
「ちょ、ちょ、ちょっとまちなさい、その超古代のメガフロートって何!?」
「冬月教授曰く『アトランティス』って言ってましたねぇ」
現実の名前はどうであれ、研究者の行ったもの勝ちである。
普段は温厚な冬月教授も、メガフロート発見で色々と変わって、研究者組合を「ネオアトランティス」と誇称したり、組織の長である自分を「ガーゴイル」と称してメガフロートの改修に不気味な笑みを浮かべながら邁進している。
とりあえず、その組織のパトロンである俺は「エリシス」という名前をもらっている。
会合ではお揃いの仮面をかぶるのがしきたりで、割と格好いい。
そのメガフロート内で生きていた星間高機動戦艦の中で九十九神化した船体をもとに現代オカルトで作って・・・
「だまって、ちょっと黙って頂戴!!」
すでに美神さんの処理範囲を超えた模様。
「ヨコシマ、わたしもそのメガフロートに行きたい!!」
逆にルシオラはがぶりよりだ。
「やはり、あのマニドライブは、アトランティスの技術だったのか」
「ありゃ、芦田、しってた?」
「これでも私は、元々メソポタミアの女神だよ?」
「そりゃしってるか」
わっはっは、と笑ってみたが、ふしゅーと息が抜けてしまった。
まぁ、冬月教授には今までどおりに発掘を続けてもらうとして、どうしようかなぁ、戦艦。
戦う相手がいないのに、戦艦はないよなー。
ず、頭痛が酷いわ。
神魔が何を基にして世界運用しているか興味があったけど、さすがに大まかな事件と流れを調整していたなんて話を聞いたのも初めてならば、それに横島君が噛んでいたなんて思いもしなかった。
いや、途中開示されたんだろうけど。
確かに被害や災害が少なくなるように怪しげなものを開発しているなぁとは思っていたけど、さすがに宇宙戦艦はないでしょ。
正直、その話を聞いたときは絶対に「ヤ◎ト」だと思ってたわよ。
それなのに、それなのに、心底斜め上に行かれたわ。
アトランティス?
あの、一夜にして沈んだ大陸という伝説の。
そりゃ、メガフロートならその可能性はあったわよね。
それも、南海沖プレートに飲み込まれても顕在しているというバカみたいに頑丈なやつなんて、はっきり言って信じられない。
信じられないんだけど、実際に発掘してるって言うんだからもう頭痛がとまらない。
しっかし、いつ京大の教授なんかと友好を持ったのかしら?
「ああ、昔のミニ四駆仲間で、仲間内では『教授』って呼ばれてたんす」
・・・理解しがたい世界ね、うん。
とはいえ、そんな付き合いがいつの間にか超古代文明発掘に繋がるんだから、人の縁って恐ろしいものよね。
「ああ、あと、この文明の方向って月神族に繋がってる感じなんで、わりとつうじるっぽいっすよ」
「・・・横島君、あなたGSよね?」
「勿論じゃないですか、美神さん」
なぜかしら、あなたの笑顔がまぶしくて直視できないわ。
ルシオラはかぶり付きだけど。
というわけで、戦う目的がなくなってしまった星間高機動宇宙戦艦。
九十九神化した部分はまだ寝てるから良いけど、さぁ、これから擬装だ! と盛り上がっていたテレサたちは、ちょっと落ち込んでいる。
「どうすっかなぁ・・・」
「このままというわけにもいかんしのぉ・・・」
冬月教授との約束で、一応、ネオアトランティスは国際救助隊のような組織になることになっている。
その旗艦となるのが目の前の戦艦。
作りたい、でも、災害救助のための事件がおきない事が決まっているのだ。
思わず腕を組む俺たちの前に、マリアが立った。
「提案が、あります」
「なんじゃ、マリア」
「資材は既にあり、人件費には困りません」
「ま、そうだな」
「でしたら、作りましょう」
武装や兵装を後回しにして、船体部分だけでも作ってしまえば、利用目的など後から付いてくるという無謀極まりない意見だったけど、俺たちにはほしい一言だった。
「おっし、つくっか」
「うむ、作るか」
ぱんっ! と俺とカオス、そしてマリアがハイタッチ。
瞬間、テレサたちも拍手と歓声を上げたのだった。
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