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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > 恥ずかしながら戻ってまいりました!~GS横島忠夫の再演 > 第六十二話
月編終わり、一歩前です。
世界各地で月が虹色に輝く現象が観測された。
それは幻想的で神々しくて、不気味とか不吉とか、そんな言葉に結びつく光景ではなかった。
各宗教でも、各国でも、その月は美しいものと判断されるほどの共通性があり、その認識だけで言えば世界を統一したといえる。
が、その後の動きはさすがに人間らしいものだった。
世界中の科学者や天文学者たちがその解明に全力を尽くしデータを収集し、数多の新興宗教が自分たちの教祖の力によるものだと謳った。
あの輝きは、未発見素粒子によるものだ。
虹色ということはスペクトル変化によるか思考認識の範囲なのだから・・・
視覚外波形にも同様の傾向が見られる。
太陽活動との同期はない。
教義によるところの、預言書のどおりだ。
かつて記された聖書の「この」部位に暗号化された・・・
この光景はマヤ碑文に記された・・・
様々な意見や表明が、事件後のテロリストによる犯行声明のように世界を席巻した。
我こそは、と名乗りを上げる団体が四桁を越える頃、ひとつの情報が世界を巡ると、騒動の勢いは一気に鎮火した。
「ああ、あれは、美神事務所の仕事ですよ」
発表元は日本GS協会。
依頼主は妙神山。
正式な発注所や依頼金額なんかも公表されてしまっていたりする。
世界の非常識とまで言われ、某外貨借金大国のひざを折らせたGSが所属する、あの、美神事務所のやることだ、と半ば納得してしまった世界であった。
となると、ここでいきなり方向転換が始まった。
魔力の宝庫ともいえる月の石を入手できるチャンスなのだから。
美神事務所や横島電話事務所、さらには六道・村枝・氷室に至るまで、美神関係者に恐ろしいまでの問い合わせが舞い込み、なんとしてでも手に入れてほしいと総理府からも依頼が入るほどだった。
文珠による共鳴通信で状況を聞いた美神さんは鼻で笑い飛ばす。
前の美神さんなら、トン単位で地上に持ち込む方法を模索しただろうけど、目の前の美神さんは最少量を見切りつつ突入艇に満載して、日本政府預かりで受け取れるように八丈島沖に着水するように射出する方向で固めた。
既にグラム単位で配布先が決まっていて、採取場所の指定まであるのが笑える。
再突入艇を輸送目的に使うとなると、自分たちの帰りは? という疑問が出るが、現実的にG4の性能なら地球圏脱出は出来なくても大気圏突入は難しくない。
とはいえ、そんな性能を見せてしまうと、今度はG4を寄越せという話になるので、月神族から「月の石船」を貸与してもらうことにした。
自動帰還装置なんかも付いているので、各国やルシオラの魔の手から逃れることだろう。
そんな打ち合わせをした月の城で思ったのは、何気に科学寄りのテクノロジーなため、現代地球科学での応用がたやすいというもの。
まぁ、応用というよりも、劣化再生という感じなんだけど。
それにしても、現段階でこのレベルの科学は見せちゃいけないな、という配慮から、出来るだけ報酬は形にならないものでお願いすることにした。
少なくとも、現行の魔族VSGSが、連邦対ジオンに変わること請け合いだから。
それも、ノリノリで。
とはいえ最近興味のある冶金学の方面で、月面による低重力合金作成なんかして見たら、恐ろしいものが出来てしまって、混沌研究所に低重力区画の作成を決意するほどだったりするのだが、それはそれ。
「とりあえず、柵ばかり増えた仕事っすね」
「そんなもんよ、GSなんて」
さすがの美神さんもお疲れ顔だったりするのだった。
現実の話、月の石も惜しいけど、今回の月の副業で一番美味しかったのはヘリウム3の勧誘鉱床の発見とその権利取得だろう。
月の土地売ります、なんていうサイトにコメリカ政府をバックにつけて、世界共有化まで推進。
資本主義社会の89%までの認証が得られた時点で、世界意思といえる形になった。
今回の報酬でも月神族から許可を得ているので、これ以上のバックボーンはないだろう。
そのバックボーンの更なる裏打ちとして月の石の収集もあったものだから、割と細かな採取が必要だったんだけど、それはそれ、これはこれ。
正直、狂ったかのような開発はやめたといいながら、そっちのほうは楽しいまでに進んでしまうのがなんともいえない話だ。
「ねぇ、横島君」
「なんすか?」
「・・・実は既に宇宙戦艦とか作ってない?」
「・・・」
「目を見なさい、目を!!」
みれまへん、みれまへん。
先日カオスと一緒に南海沖に沈む某戦艦が九十九神化しつつあったので、するっと転送して修復しただなんていえません。
今回のG4運用実験で得られたデータで、トリプルマニドライブを主機関にした、高機動戦艦を作ろうとしていただなんていません。
「・・・で、いくら突っ込んだの?」
「2000億ぐらいっす」
「このあほたれーーーーー!!!」
「男のロマンなんやーーーー!!!」
ちゃんと原作者と手を組んで、スケールモデルから起こして本格的にやったら、そんぐらいかかってしまったのだ。
正直、突っ込みすぎたかと思ったけど、原子力空母なんざ、建造費だけでも一隻7兆円はかかるはず。
製作総予算は5000億円ぐらいで済ますことが出来る予定なので、絶対に安い。
加えて原子力も使っていないので、絶対に安全。
ただし、動力が動力だけに神魔に目をつけられること請け合いなんだけど。
しかし、しかし! 絶対に買い手はいる!!
少なくとも、エンタープライズタイプで作れば、二三隻は売れる。
そのテストベットで某戦艦を「宇宙」タイプで作ったのだから、仕方ないのだ!
「とりあえず、その話はカオスも含めて地球に帰ってからじっくりするわよ」
「それでも、わいは曲げへん」
「・・・珍しく強情ね?」
「だって、もう、船魂が出来てんですもん。動く体をあげたいじゃねーですか」
すっと、視線を細くする美神さん。
「ほんとうに、あんたは人外収集器なんだから」
その表情は怒りよりも苦笑いの方向であった。
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