ほねっこアニメ部屋

俺たちは腐ってるんじゃない 発酵しているんだ

01-12

2014

サンジゲンの「セルルック」と、3DCGアニメの行方

・広がるCG利用
昨秋放送した「蒼き鋼のアルペジオ」が日本では珍しいフル3DCGアニメーションとして話題になりましたが
ここ1~2年くらいで、メカニック以外でもCGが用いられるケースが増えたように思えます

中でも「車」や「群衆」のシーンでは特に顕著に感じられます
これまでは、街中のシーンでは、動かないモブキャラを背景にガヤ音を被せることで表現していたり、
車道のそばを歩くシーンでは、全く車が通らないか、もしくは停止した車が描かれているだけであったりしていましたが、
モブキャラをCGで描いて各々動かしたり、CGで作った車を走らせたりするようなシーンが増えてきたように思えます
ノラガミ
ノラガミ第1話。交通量の多い道路らしく、いろんな車種の車が引っ切り無しに行き交います
げんしけん29
げんしけん2代目第9話、文化祭シーンの1カット
これらモブはCGで描かれており、一人一人が動いてました

・セルルックアニメーションとは?
平たく言えば、日本の手描きアニメーションに似せて制作したCGアニメーションのことであり、
この制作技法ではサンジゲンが突出しています
サンジゲンは、よりCGっぽいフォトリアリスティックではなく、セルルックの技法を磨くことで
戦闘シーンを全て3DCGで描いた「ブラックロックシューター」、全編3DCGの劇場作品「009 RE:CYBORG」、全編3DCGのテレビシリーズ「蒼き鋼のアルペジオ」で好評を博し、今や「CGといえばサンジゲン!」と言われるほど

そもそも、3DCGと手描き、その見た目はもちろん違いますが、それ以外の表現方法として手描きとCGはどう違うんでしょう?
視聴者に与える最も大きな違いは、動画の割り方でしょう

映像作品は1秒あたり24コマの動きがあります(コマと言うよりフレームやfpsと言った方がなじみがあるかも)
24コマ一枚一枚動画を書いていたら予算も制作期間もエライことになってしまい、1週間に1本作らなければならないテレビシリーズの制作は絶対に無理
その問題を「鉄腕アトム」が4~12コマ程度に減らした「リミテッドアニメーション」で打破します
鉄腕アトム以降、テレビシリーズや劇場版問わず日本で制作されるアニメはほぼ全てが「リミテッドアニメーション」になります
手描きアニメではこの制約された動きを逆手に取り、コマ数を増減させたり、タイミングをずらしたりするなどして動画の割り方を工夫し、表現の幅を広げています
(中割り以外にも、動いていないのに動いているように見せる術は、カメラワークなどいろいろとあります)

一方CGでは、24コマのヌルヌルアニメーションを作ることは簡単なのですが、熟練の原画マンのような中割り技術はありません
リミテッドアニメーションに慣れた僕らがCGの動きに違和感を感じるのはこのためです
そして、この中割りの違いをできるだけ手描きアニメーションに近づけよう!とすることがセルルックアニメーション

そのほかにも、出来るだけ手描きに近づけるため、線画っぽく見せる処理をしたり、コマ落としさせたり、カメラワークを工夫したり、見得を切らせたりと、いろいろとやっているみたいです

・フル3DCGのメリット
1.ランニングコストが安い!
モデリングなど初期コストはかかるが、同一素材を使い回せるのでランニングコストは安く済みます
すなわち、長期シリーズで有利に働くということであり、「キングダム」や「団地ともお」はこのメリットを享受していることでしょう

2.動員人員数が少ない!
アニメで一番人件費のかかる作画作業ですが、CGでは設定画に似せて一枚一枚絵に起こす必要がないため、スタッフ数を抑えることができます。
「蒼き鋼のアルペジオ」では、通常ならば120名以上のスタッフがかかるところを、30名前後のスタッフで仕上げたそうです。また、全ての工程をほぼすべて社内で完結させているため、制作進行が外注先から成果物を回収する、なんてことはなかったようです。

3.手描きアニメが抱える問題を解消できる?
現在、40代50代のベテランアニメーターに支えられている現状であり、アニメーターの人材不足が問題視されています
また、低賃金・重労働・分業化の徹底でアニメーターが育ちにくい環境にもあります。
CGを使えば、アニメーターは絵を描きまくらなくてよくなりますし、絵が描けない人間でもアニメーターになれます
この制作工程の劇的な変化が、人材不足を解消してくれるやもしれません

・日本で3DCGアニメは広まるか?
セルルックアニメーションは日本独自の技法のため、
全編セルルックアニメは「009 RE:CYBORG」と「蒼き鋼のアルペジオ」しかなく、まだまだ未熟な部分が大きいです
セルルックとはいえ、アップになったキャラクターが手を上げたり首を傾げたりする日常演技にはいまだにCG特有の違和感を覚えます
「CGなんだから手描きに似せる必要なんてないし、自由に表現した方が演出の幅も広がって良いんじゃないの?」
という声も聞かれますが、それでは手描きアニメに慣れ親しんだユーザーがついてきません
セルルックではないバリバリCGの演出をしたところで、視聴者側が抵抗を示すリスクが大きく商業的な成功を収めることは難しいでしょう
完璧なセルルック技術が出来上がるか、または、視聴者がCGに慣れるか
この条件を満たさない限り3DCGアニメがマジョリティにはなれないでしょうが、どちらもかなりの時間がかかりそう。
正直、自分が3DCGアニメを抵抗なく鑑賞している姿を想像できない・・・

しかし、今後スケジュール面や採算面からCGを活用としようとする動きは活発化していくことでしょうし、
いつかCGアニメが一般的になる日が来ることでしょう

一人のアニメファンとして、手描きからCGへのシフトに乗り遅れないようにしたいですネ
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COMMENT

残念ですがセルルック3Dがサンジゲン独自の技法というのは大きな間違いです。もっと前からありますよ^^http://freedom-project.jp/
2014/01/12(日) 20:10:25 |URL|4jigen #- [EDIT]
セルルック=サンジゲン独自と断言してしまうのは不適当でした。修正いたしました。
2014/01/12(日) 23:40:11 |URL|ほねっこ #HYjQ5mMM [EDIT]

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