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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > 恥ずかしながら戻ってまいりました!~GS横島忠夫の再演 > 第四十五話
原作とは違い、まるーくなっている「うちの」美神ですが、こんなアマアマ美神でもイイという人だけ受け入れていただければ幸いです(^^;
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第四十五話
「どう、横島君?」
前の現場が終わったんだろう、美神さんがこっちの現場まで来た。
俺は背後に居る美神さんにわかるように、簡単なブロックサイン。
「(力みすぎ)」
「やっぱり」
苦笑いの美神さんが俺の隣まで来た。
「あれ、全力全開ってやつ?」
「ええ。やっぱ、美神さんを身近で見てるせいか、どうも基本的な出力で押えるってのが解ってないっぽいっすよ?」
「・・・あははは、ほら、ねぇ?」
思わず誤魔化しにかかりましたね?
まぁ、なんだ、力押しの相手ならそれでいいんだけど、今回は長時間じっくりという仕事なので、力半分でマラソン的な出力というのが必要だったりする。
そのへん、妙神山で修行してなかったっけ?
うむ、まぁ、そのへんは要注意ということで。
「つうか、シロは?」
「車でオネムよ。なんといってもまだまだ子供ですもの」
というわけで、そろそろフォローに入ります。
「そうね、そろそろ燃料切れかしら?」
ファンネルとネクロマンサーの笛という二大霊具を末永く使う修行は始まったばかり。
がんばれやー、オキヌちゃん。
「きゅ〜」
「あ、燃料切れね」
ファンネルオリジナルは、結構「重い」。
あの伊達君が霊力アップの道具に使っていたぐらいの負荷になっている。
つまり、今のおキヌちゃんには、かなりの負担になっている。
でも、あのファンネルとネクロマンサーの笛が自在に使えるようになれば、単独で事務所を開くだけの霊力を得られるようになったといえるだろう。
もちろん、死霊使いとしての霊能から、単独で事務所なんて開かせてくれないだろうけど。
未だ十代のネクロマンサー、その価値は計り知れない。
「まぁ、まだまだっすけどね」
「まーね」
六女の在校生としては破格の実力のおキヌちゃんだけど、そのレベルに周囲があわせてくれるわけではない。
年々強力になるオカルト事件、日々力を付ける悪霊たち。
追いつけ追い越せのパワーゲームに途中参加するためには、ずいぶんと無茶な努力が必要なのだ。
その点で言えばファンネルによる地力上げは安全で効果的といえる。
「さー、イモリの黒焼きだよー」
「いもりいやぁ・・・・・」
半泣きでイモリを食べるおキヌちゃん。
まぁ、半人前の登竜門よ、それ。
「よこしまさーん、やっぱり一か八かでいきましょうよー(はむはむ)」
「美神さんにそまりすぎや」
あら、失礼ね。
私の場合は、事務所を維持しながら必要だから短期決戦だったんだから。
「うー、やっぱり楽な道はありませんねぇ・・・」
「おキヌちゃん、おキヌちゃんって結構近道してると思うけど?」
「そうですか?」
ま、そのとおりね。
おキヌちゃんの同級生が聞いたら腸捻転起こして血反吐吐くほど悔しがるわよ?
「そ、そうなんですか?」
「まぁ、試しに一文字さんあたりに言ってみたら絶交されると思うな」
「ええええええええ!?」
そういうものよ、自己認識なんてものは。
氷室さんの天然ぶりには目眩を覚えますわ。
横島GSや美神お姉さまに、「一文字さんにいったら絶交される」と聞いたから、私に聞いてみたですって。
わたしだって、血反吐吐くかと思いましたわよ!!
あの、横島GSのバックアップでカリキュラムが組まれた霊能実習ですって!?
諸手をあげて参加したいですわよ!
というか次回参加させないと絶交ですわよ!
「え、ええええええええ?」
「えー、じゃありません!」
ふつう、そんな豪華絢爛な研修をGS免許を取る前に経験できませんわよ!
だから、この話を一文字さんにもして仲間に入れないと、ほんきで怒られますわよ。
「・・・そ、そうなんですか?」
「どれだけ恵まれた環境か、本気で説教しないといけないようですわね!?」
こんこんと説き伏せた私は、どうにか一文字さんとともに美神事務所の研修に参加できるような手管を得ることができましたわ。
ふふふ、氷室さんの天然さんぶりに少しだけ感謝いたしますわ。
つうわけで、女子高生三人の監督をすることになった俺です。
くそぉ・・・、いずれ劣らぬ美少女ばかり、俺にどんな試練が・・・。
「横島君、なにかあったら、殺すからね?」
出かけに聞いた美神さんの本気を思い出してしまった。あの本気を聞けば、俺だってびびるわい。
唯一の助けは、三人三様の霊衣をきていることだろうか?
そうじゃなけりゃ、やばかった。
だって、こう、かわいいお尻がフリフリしてるんだよ、おい!
「うっ」
「くぅ」
とかうめいてるし!
「どう?」
あ、やばいやばい、ステイステイ。
「さすがにおキヌちゃんはこの前より余裕ですね」
「ま、ファンネルの数減らしてるしね」
この前は、ファンネルABを全部で三つ浮かせていたけど、今回はABで二つ。
負荷は少ないはずだ。
逆にABを同時使用なんかしたことがないはずの弓さんと一文字さんはキツそうで、他の術なんか使用できないレベルで集中している。
こうみると、タイガーやピートは、二三段上のレベルなんだと確信できる。
そしておキヌちゃんへの訓練方針は間違っていなかったこともわかった気がする。
「それにしても美神さんの方は早上がりっすね」
「そりゃそうよ。シロとタマモちゃんまで借りてるのよ?早く終わるに決まってるわ」
まぁ、加えて美神さんが指揮官なんだから、あたりまえ、と。
一応、イケイケの除霊が週に1〜2件出始めたので美神さん中心の攻性チームを作って叩き回り、Cクラス以下の除霊を訓練代わりに俺がおキヌちゃんと回ることにしていたんだけど、弓さんと一文字さんもそれに加わることになってしまった。
もちろん、実力伯仲の仲間がいることは良いことなので、美神さんともども受け入れを許可したんだけど、バイト代を聞いて内心泣いた。
時給5000円の待機時。
時給15000円の除霊時。
危険手当とか諸々入れるとスゴい価格に。
まぁ、なんつうか、俺も人を手配することがあるんで、わかっていたけど、こう現実を見せられると泣ける。
いやいや、わかってるんだぜ?
これは美神さんが俺に対して、これが普通の価格帯なのよ、って教えてくれているって。
でも、過去の250円を思い出すと、ねぇ?
「横島君、そろそろ終わりそうよ」
「うっす」
さすがにおキヌちゃんたち三人でかかれば、霊力切れより除霊完了の方が早い。
「じゃ、これから全力解放!」
「「「はい!!」」」
ばぁっと高まる霊力。
やはり、頭一つ弓さんが強い。
そしてそれを見て、おキヌちゃんと一文字さんが限界を超えて強まろうと背伸びする。
で、弓さんはそれを感じて背伸びをする。
まるで、子供同士が背比べをしているときに「背伸び」をしあっているかのようなほほえましさ。
美神さんも苦笑い。
「無理は必要ない。でも全部出し切るつもりで!」
「「「はい!!」」」
なんか、こう、女子バレーの監督になった気がするな、うん。
コーチとか呼ばせたら、背徳的だろうか?
横島君がおキヌちゃんのレベルアップを、と言いだしたとき、なにを考えているんだろう、と思ったけど、いざふたを開けてみると確かに必要だった。
補助的な役目の多いおキヌちゃんを、集団除霊限定などにしてはもったいなかったというのが実感できた現実だった。
加えて、弓さんと一文字さんの研修を受け入れてからは、おキヌちゃんにも気合いが入って良い影響を受けている。
おキヌちゃん自身、自分の実力が劣っているのは仕方ないと感じていた感がある。
たしかに、私や横島君レベルの人間しか周囲にいないのだ、実力は劣るだろう。
しかし一緒に勉強をしている人間と比べられるとなると話は別らしい。
霊力の高まりや集中力、スタートダッシュや持続力。
細かなところで張り合ったり賭をしたりして競いあっていた。
無論狭い範囲での競争だ、一番だったりビリだったりすることに意味はない。
端的に言えば井の中の蛙を作っているようなものだとも言える。
しかし、この競い合いには大きな意味がある。
身の丈にあった目標という大きな意味が。
絶望的で隔絶された目標を見せられ続けるよりも、遙かに分かりやすい目標と言えるだろう。
短期的にみて良い話だし、長期的に見ればさらに良い話だった。
伸び悩んでいたおキヌちゃん、今やぐんぐん延びている。
弓さんや一文字さんも手応えを感じているよう。
うーん、これは、あれかしら?
「なんすか?」
事務所待機中だった横島君が、ソファーからこっちを除き見る。
「学習塾」
その一言で通じたらしく、声を殺して笑い始めた。
タマモちゃんも解ったらしく一緒に笑っており、シロだけがキョトンとしている。
「横島さん、準備できました!」
「お待たせしたっす」
「遅くなりましたわ!」
三人娘の準備が終わったということで、そろそろ本日の業務開始。
「弓さんと一文字さんは横島君と組んで。おキヌちゃんは私とシロとタマモちゃんチーム」
「「「「「はい!」」」」」」
「今日の除霊はかなり気合いを入れないと死ぬわ。だから、絶対に生き残ること」
「「「「「はい!!」」」」」
なんか、このまま事務所運営したい気がする一体感よね。
所長私で副長横島君。
各現場責任者におキヌちゃん・弓さん・一文字さん。
シロ・タマモちゃんは緊急強襲。
あー、なんかいい感じ。
横島君さえ説得できたら、現実になる話ね、うん。
前の時戦力外状態だったおキヌちゃんを戦力化するには今しかないと思っていた。
それに加えて弓さんや一文字さんが加わってきたのはうれしい誤算。
三人とも少なくとも前の時のタイガー並になっていると思う。
つまりGS試験の合格レベルということだ。
加えていろいろと修行しているので、個人レベルの技は別として最大霊力は非常に高まっている。
もう六道女子では抜きんでているだろう。
「ま、私の在学中と比べても頭一つ上ね」
美神さんの台詞を聞いて、三人ともに鼻息が荒い。
なんというか、美神さん、鞭の入れどころが絶妙だよなぁ、うん。
なんつうか、霊力の質も上がってるし。
「じゃ、横島君は『Gメン支援』ね」
「うっす」
これって、西条への売り込みっすよね?
「ま、そうね」
にやにや笑いの美神さん。
まぁ、いまの人手不足の中で見ればおいしい餌に見えるんだろうなぁ。
加えて餌だと解っていても食いつかざる得ない。
あー、解る解る、わかるぞぉ、西条。
みすみす罠と解っていても食いつかざる得ない餌。
その状況と心境。
ああ、悲しいほど解る。
そういえば、小鳩ちゃん、元気に貧乏してるかなぁ?
カスタムG1、霊子力甲冑の支給はオカルトGメンの戦力を上げたが、戦術の幅を狭めたとも言える。
より強引に、より豪快に。
その意味では民間GSの強力は不可欠になりつつある。
そう、見本としての強力が。
今のオカルトGメンにとって、力を振り回さない、力に振り回されない除霊やオカルト対処は必須であり、身につけるべき事例だった。
だけどね、横島君、そりゃないんじゃないかね?
「弓さん、一文字さん、ファンネル展開!」
「「はい!!」」
実に美しい、実に力強い霊力の流れに乗って、横島君の代名詞とも言える霊具「ファンネル」が少女たちの周囲を巡る。
うちの人間では絶対に無理だと言える制御技術だった。
「西条さん、要人警護はお任せください」
「・・・うん、頼んだよ」
にこやかな笑みの横島くんを、これほど恨めしいと思ったことはない。
これほど実力が隔絶していては、見本もくそもないじゃないか・・・。
その上、警護に目麗しい少女がついていては、うちの活躍なんか目に入らないだろうに。
ああ、恨めしい、恨めしいよ。
「どうです、うちの新人二人は?」
「喉から手がでるほどほしいね」
正直に言ってしまったよ、うん。
「おキヌちゃんの六女のクラスメイトなんですよ」
「・・・・・」
そうか、六女、そうか・・・。
彼女たちレベルの人間が何人もいるとは思っていないけど、それでも研修や修行次第ではないだろうか?
ああ、そういえば、シロ君やタマモ君も六女だった。
うん、うん、検討に値するな。
「・・・美神さん、その辺をねらってますよ?」
「・・・令子ちゃん・・・」
きみはそんなに僕が嫌いなのかい?
オカルトテロリズム、という、本当に信じられない現場に連れられてきた。
業界トップの美神事務所で研修させてもらえると言うだけでスゴく幸運なのに、その上若手最強、オカルト業界の牽引者でもあるという横島GSの指導を受けられている幸運は、明らかに運の使いすぎといえる。
おキヌちゃんの友達になっただけで転がり込んだという幸運、絶対切れねぇ。
で、様々な仕事をしてきた私らだけど、今回の仕事はさすがに研修レベルじゃない。
国外呪術者による要人オカルトテロからの防衛と呪詛返し。
世が世ならば陰陽寮の仕事であり、今でいうならオカルトGメンやGS協会のトップレベルの仕事とだと思う。
でも、この仕事に美神所長は私たちを当てた。
そう、私らを。
弓なんかあまりの感激に気絶しそうになってたぐらいだ。
まぁ、アタシも感激で痺れたけど。
でも、実のところこれは実力によるものじゃない。
新霊具「ファンネル」による効果だと思ってる。
でも、横島GS曰く、
「ファンネルの能力は、自分の霊力が支えてるんだ。君の力の一つだよ」
そうは言ってもなぁ、と私がごねると、どこからか一本の日本刀を引っ張りだした。
「ねぇ、一文字さん。俺はこの刀で岩を切れるけど、素手じゃ無理だ。これって刀の力に依存してるのかな?」
すっと目の前の何かが取り払われた気になった。
そうだ、アタシも木刀を使ってる、と。
弓は水晶、おキヌちゃんは笛。
そう、そういうことなんだ。
「横島さん、ありがとうございまっした!」
ちょっと照れくさそうに笑う横島GS。
結構かわいいところあるよな。
「一文字さん、集中」
「はい!」
やべーやべー、妄想に集中しちまった。
「・・・ん、わかったわ。じゃ、二人を送った後、事務所で細かい報告は聞くわ」
横島君から仕事完了の電話がかかってきた。
いろいろとあったらしいけど、正直に言えば100店満点の仕事だったと思う。
政府要人に対して六道の力を示し、美神事務所の間口の広さを示し、横島君の指揮力を示し、そしてオカルトGメンの視線を六女に向けることに成功した。
これに加えて、こっちのおキヌちゃんとシロやタマモちゃんの連携も別方面でアピールできている。
本当にこの一晩でどれだけの成果があったのか、計算しなくても解るほどだ。
すでに関係省庁どころか政府非営利団体からの問い合わせも始まっている。
もちろん、横島君とのつながりを求めるものだろうけど、それ以外の話も少なくない。
ま、今後のオカルト業界を考えれば、大きく世界に対して恩が売れたと言えるだろう。
本当に、横島君はとんでもなくなったものね。
心底おもしろく思っちゃう。
「あのー美神さん。横島さん、事務所に戻ってきますか?」
「ええ。タマモちゃんも回収したいだろうから、一度来るって言ってたわ」
「じゃ、夜食にしませんか?」
「いいわよ」
「狐うどん、狐うどん!!」
「肉うどん、肉うどんでござる!」
・・・ふふふ、なにかしらね。
この空気、とっても暖かくてうれしい空気。
ぎゅってだきしめて離したくない、そんな甘い匂いがするわね。
この空気の中に、もうすぐ横島君が帰ってくる。
本当にそれだけなのに嬉しくなっちゃう。
なんだか私も甘くなったものだわ。
嫌じゃないけど。
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他のSSでも、原作時期の空気を美神が思い返すというシーンをよく見かけます。
それは後悔とかそういうものではなく、あのときこそが最高だった、そんな風に。
ただ、ただ、私の作品ではそんな美神になって欲しくないという思いがあります。
これはアンチに通じるエゴであり、別種の原作破壊であることは理解しています。
できるだけいろんな物を取り入れた「再演」でありたいとは思っておりますが、主成分が筆者の独断であることをご理解いただきたく思います。
2012/04/06 OTR移設版+小修正
文字数は6,509文字