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第三十三話
まさか、こんな騒ぎになるとは思わなかった。
うん、まさかまさかだったなぁ・・・。
いろいろと軋轢はあったけど、俺本人を必要としているという行動から、まさかの敵宣言とは、思いもしなかった。
とはいえ、敵呼ばわりされてヘラヘラしているのもばからしいので、ファンネルやらGシリーズで入ってくる金を運用していた投資グループへ「コメリカ関連から資金すべてを引き上げる」旨の伝達をすると、担当マネージャーが声を潜めて聞いてきた。
「本気、ですか?」
「・・・だって、敵扱いですよ?」
「それは理解してます。しかし、それとこれとは・・・」
「一緒ですよ。ムカつく奴らに金を渡すなんていやっすもの」
「えー、一応、担当社からの情報を集めないと断定できませんが、かなり損をしますよ?」
「関係ないって。損得で運用してるつもりはないっすから」
「・・・!! わかりました。さすが村枝の鬼百合の息子ってところですね」
と、よくわからない評価をもらった。
で、引き上げたらコメリカ経済の混乱。
あれー? と引き上げた資金総額をみて内心失神しそうになった。
だってさ、あれだぜ!? 日本の借金のかなりの割合を返せるレベルなんだぜ!?
とりあえず、投資グループは色々と分散してリスクを減らしているらしいけど、それでもすごい金額が動いたわけで。
・・・こりゃぁ、まぁ、やばい、な。
世界経済って奴は連鎖してる。
コメリカって国がやばくなれば、連鎖的に各国に波及するってものだ。
もちろん、すべての資金が現金化されたわけではなく、別のマーケットに流れただけなので、資金運用の圧力比率が変わっただけなのだが、一カ所に居座った貧乏神の影響がでかいのだ。
・・・あれ、いま比喩で貧乏神って表現したけど、もしかして本当に行ってないか?
まぁ、それはそれとして、個人的な感情で指示した資金引き上げが、世界同時株安に近い状態を引き起こしたのだから怖すぎる。
これに前後して、企業株の大半を金に変えた美神さんの動きは早かった。
加えて、現在進行形で金の価格が高騰している市場をみて、どのタイミングでどんな通貨に変えるかを妄想している姿は、じつに輝いている。
先日放送されたコメリカの番組のせいで、電話取材が多いのなんのって。
まったくメンドクサい話になってきたので、電話事務所でも開いちゃろか、と考えたところで思い出す。
そう、成人女性二人が表の職業をそろそろ辞めるつもりだという話をしていたのだった。
てなわけで、湯上さんと笹倉さんに電話対応をしてもらうことにした。
つうか、秘書業務を委託する高校生って、どんなもんよ? とおもったけど、実は二人がかなり優秀だったもので、美神さんが狙い始めたのは落ちになるかどうかといったところ。
そろそろ金に関わる騒動は他人に任せたいものだ、という思いがしないわけではない。
けして飽きたからとかそういう話じゃないんだからねっ。
最近経済誌を賑わす騒動で、なぜか横島君の顔をがよく出るようになった。
そのくせマンションにコメリカが攻めてきたり、テレビで「コメリカの敵」とか言われたりと恐ろしいことになっていたけど、本人は気軽すぎた。
一応、マンションの店子のみなさんが陰日向にガードしてるんだけど、バカが多くて困ると「嬉」そうだった。
「ほれ、昨日のチンピラ、うまかったのぉ」
「うんうん、濁った魂と濁った血。たまらんのぉ」
えー、食べちゃだめだって話でしたよね?
「おうおう、そりゃ大丈夫じゃよ」
「くっとらんぞ、肉食的に」
・・・だめだわ、詳しく聞いちゃいけないことだってことだけは理解できたわ。
「愛子ちゃ〜ん、わらわも家主殿についていきたいぞ〜」
「耶麻和姫(ヤマトヒメ)さんはだめですって!」
うちの学校霊生徒がおびえます!
関東八州一円の鬼族を纏める姫様なんつう存在がうろうろしないでくださいってば!
「愛子ちゃんもうるさいのぉ。娑婆鬼(シャバンニ)だって自由に遊んでるじゃなーい」
格が違いますって。
あっちは、いわば会社社長一族。
姫様は天皇陛下。
まったく別物です。
「うぅぅ、忠夫の所にくれば、もうちと遊べると思ったんじゃがのぉ」
十分遊んでるでしょうに。
まったく鬼は遊び好きだなぁ・・・。
「ところで、愛子ちゃん」
「何ですか、姫」
「この、忠夫がいっぱい載ってる写真集はなんじゃ?」
「ああ、これはですね・・・」
一応、今までの世界情勢を簡単に説明すると、大いに感心する耶麻和姫(ヤマトヒメ)。
「さすが忠夫殿。うーむ、これなら父上も安心して我を嫁に出せるな」
「姫、姫、それはだめですよ?」
「なぜじゃ、愛子ちゃん」
「・・・虎視眈々とそれを狙うものたちは、三界を通じて五万とおりますし、無視して抜け駆けをすると、神魔連合軍に押しつぶされますよ?」
「まじか?」
「まじです」
がっくり肩を落とす耶麻和姫(ヤマトヒメ)。
まぁ、ね、横島君の自由意志は別らしいから、そのへんにアプローチしましょう、お互い。
「うむ、愛子ちゃんは頼りになるのぉ。どうじゃ、我と共同戦線を張らぬか?」
「と、なりますと、ミィさんとも組むことになりますよ?」
「なんと、さすが未亡人、早いのぉ」
うんうん、とうなずく耶麻和姫(ヤマトヒメ)様でした。
母親として、息子の立ち回りのうまさを大いにほめる電話をしたところ、結構かわいい声の女の子が電話に出た。
なんでも、GS事務所を設立する前に秘書部署を立ち上げたというのだから笑うしかない。
もちろん、専門部署を作らないとメンドクサいほど学業を圧迫しているのだろう。
学業の時間を買うというわけではないのだろうけど、それでも学生という時間を大切に思っていてくれているのが親としてうれしい。
電話口の笹倉さんは、日独英、あとはフランス語とロシア語を少々という才女で、少し鍛えれば一流企業の秘書でもやっていけるほどの女性だった。
そのことで「忠夫がいやになれば、その道を紹介できるわよ?」と言ったところ、にこやかに今の職場を気に入っているので、誘いはうれしいが断る、と返答してきた。
如才無い言い回しで、本当にもったいないと思ってしまう。
まぁ、若いウチに「イケイケ」でいくと、こういう人材が集まるって言うのが「うち」らしいので、いいんだけど。
笹倉さんが電話を転送したのだろう、数十秒の後、忠夫につながった。
音の反響からすると、まだ学校にいたようだった。
「悪かったわね、学校の時間に」
「いいやって、お袋藻なんか用があったんやろ?」
「んー? ああ、今回の立ち回りが見事だったんで、誉めてつかわすって電話よ」
私の言葉に息子は軽く笑った。
「なんやそれ。でもありがとな、お袋。心配してくれてんやろ?」
「そりゃそうよ。かわいい息子のことだもの」
うん、ありがとう。
息子との会話もずいぶんと穏やかになったものだ。
本人は知られていないと思っているであろう苦しみを背負ってから、息子は急激に大きくなったものだ。
とはいえ・・・
「ちゃんとタマモの面倒はみてる?」
「あー、最近イージーかもしれん。せやけど粗末に扱ってる気はないで?」
「・・・この前、電話口で沈んでたから、ちゃんと話し聞いてやるんやで?」
「うん、かーちゃん、あんがとな」
たとえ巨万の富を得ようとも、たとえ世界の敵になろうとも、我が息子は自慢の息子だ。
今この瞬間、そう自信を持っていえる事実を噛みしめるわたしだった。
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2012/04/06 OTR移転版+小修正
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