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ロシアのプーチン大統領は今のところ、米欧の説得を聞き入れるつもりはない…
ロシアのプーチン大統領は今のところ、米欧の説得を聞き入れるつもりはないようだ。
ウクライナのクリミア自治共和国をロシアに編入するかどうかを問うた住民投票は、国際的な反対に抗して強行された。
編入に9割超が賛成したというが、その結果は開票するまでもなく明らかだった。ロシアが武力で掌握し、異論を封じた中での手続きだから当然だ。
反対派を銃口で沈黙させたうえでの投票は、国際法が定める「人民の自決の権利」とかけ離れているのは明白である。
このままロシアがクリミア半島の併合に進めば、武力による領土拡張に等しい。国際社会の秩序を揺るがす暴挙から、プーチン氏は手を引くべきだ。
そもそも、独立や併合といった国境線の変更は、過去どのように認められてきたのか。
近代に勢いを得た民族自決の権利は、植民支配からの解放を求める権利として、1960年代以降のアフリカ諸国などの独立を後押ししたものだ。
冷戦後は、弾圧や内戦で民族の共存ができなくなった結果として、国際社会が独立を認めるケースが生まれた。旧ユーゴスラビアのコソボや、アフリカの南スーダンがその例だ。
それ以外では、当事者の間で分離独立の合意を平和的に築いている。チェコとスロバキアは93年に連邦を解体した。英国では、スコットランドの独立を問う住民投票が秋にある。
クリミアの事態は、そのいずれにも当てはまらない。
最近まで半島ではロシア系、タタール系、ウクライナ系の人びとが平穏に暮らしていた。
ところがウクライナの政変時に、親ロシア派の党首が軍の後押しで自治政府首相に就き、一方的にロシア編入を掲げた。
地元ではロシアのテレビだけ視聴可能にし、反ウクライナ感情をあおっている。人為的に対立をつくり、民族自決の論理をふりかざしているのが実態だ。
国連安保理では、事前に住民投票を無効とする決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使した。だが、いつもはロシアに同調する中国は棄権した。ロシアの孤立は深い。
幸いプーチン政権も、米欧との対話まで拒んでいるわけではない。大国の身勝手さが過ぎるとしても、クリミア半島の代償としてウクライナを欧米側に追いやる事態は望むまい。
欧米が制裁を強めるのは当然だが、同時に外交交渉の歯車も加速させるべきだ。ウクライナの新政権もまじえ、対話を尽くすほかあるまい。
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