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第十七話

トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > 恥ずかしながら戻ってまいりました!~GS横島忠夫の再演 > 第十七話





 

本作「〜再演」の真実の一端が現れます。


・・・とりあえず、酔ったときバージョンw
不評なら書き改めますが・・・w
********************************************

第十七話

 

 俺の収入とカオスの収入をマリアとテレサに処理してもらっていたんだけど、美神さんもそれに便乗した。
 途端、今まで脱税していた部分の大半が「節税」で補えるとわかり、美神さん狂喜乱舞。
 この上脱税すれば、みたいなことをささやいたので、マリアに追徴課税分をささやいてもらい、火を消しておいた。
 とはいえ、詰め込んだ仕事が終わった頃、ようやく美神さんは重い腰を上げた。
 オカルト研究も仕事も一段落。
 そう、やっと行く気になったのだ。

 

 

 妙神山へ、時間能力の封印に。

 

 

 事務所全員で行こうとなったとき、テレサに後を任せるつもりだったのだが、テレサも行ってみたいといい始めた。
 ちょっと考えた美神さんだったが、それもいいかと考える。
 たぶん俺の文珠で解決するつもりなのがありありと解る笑顔で「何とかなさい。事務所の仲間の頼みなんだから」とかなんとか。
 まぁいいですが、ということで、カオスが追加した文珠共鳴器官に文珠をはめ込み、「軽」の文字を込めると、テレサの重量が20kgほどになった。
 これならお姫様だっこでも可能。
 そういって笑うと、なんとなく照れた顔のテレサ。


「テレサ、あとで記憶の共有を要求します」
「姉さん。了解。条件として、過去の共有を要求」
「条件付きで了解」
「「ふふふふふ」」


 なんだか似たもの姉妹らしい。


 俺の箒にテレサを乗せて、あとは全員自分の箒にまたがった。
 何しろ箒で行けば交通費がゼロ。
 免許も不要となればコブラより活用しているぐらいだ。
 車両税もモッタイナいから車売ろうかしらとか言っているあたり本気だ。
 西条さんは血の涙を流して魔鈴さんに箒の量産を依頼しているが、真っ向両断で断られ続けているという。
 かわいそうだが、この事務所分の箒にはそれなりの取引があったのですよ、ええ。
 もらった箒の性能も格段で、全力で行けば明神山に日帰りできるというのだから恐ろしい。
 むろん、文珠などで障壁を張らないと風でスゴいことになるけど。


「お父様、よろしくお願いいたします。」
「テレサ、お父様はやめようよ」
「ですが、ドクターカオスとともに私を作ったのはお父様だと聞いています。」


 事実は事実だけど、人件費を軽くするために手伝ったにすぎない。
 最終的には「忠夫様」で勘弁してもらったんだけど、それでも美神さんやおキヌちゃんの視線が痛い。

 

 

 

 鬼門の前に立ったシロは、鼻息も荒く挑み打ち勝った。
 タマモも軽くいなして勝ち、とりあえず俺も勝っておいた。
 この時間でまだ勝ってなかったし、自分の実力も見ておきたかったから。
 で、極めつけはおキヌちゃん。
 ネクロマンサーの笛で強制的に眠らせて勝ち。
 というわけで、美神事務所全員が妙神山に入る資格が出来たわけだ。
 もちろん大興奮の小竜姫様。
 美神さんを除き、霊的に成長期の人間 (ぽいの)が四人も着たのだ。嬉しくないはずもない。


「修行ですね、修行ですよね、修行ですよね〜」


 きゃっほ〜、と喜ぶ小竜姫様を後目に、にっこり微笑む美神さん。


「いいえ、私の能力封印の相談よ」
「え? 修行、じゃ、ないんで、すか?」
「相談よ。」
「・・・・・・・・・・」


 滂沱の涙を流す小竜姫様に、手軽な交通手段が出来ましたのでちょくちょく修行にきますよ、と囁くと、元気いっぱいに復活した。
 この人、というか柱も随分前の時と変わってしまったなー。


『(面白いからよかろう?)』
「(まーな。)」


 とかなんとかやってる内に、美神さんの時間移動能力に封印がかかった。
 どうやら早々に封印を行って、楽しい人間指導をしたかったらしい。


「さぁ、みなさん。修行しましょう!!」


 金を払ってでも修行したいと言われる妙神山で、ここまで勧めてくれるのだからということで、みんなで一泊して修行することになった。
 ただし、この一泊がこれから先の流れを大きく変えることになった。

 

 

 

 

 修行を終え、風呂から上がり、夕食という頃になって、ふらりとその人物は現れた。


「ほぉ、今日は客人が多いな」


 その人物こそ、


「だれ、この猿」
「み、美神さん、 失礼ですよ!」
「よいよい、おじょうちゃん。ワシはただの猿の神様じゃよ」
「・・・ハヌマン?」
「そうとも言うな」


 瞬間、背筋を伸ばして礼をとる美神さん。
 もちろん、俺もそれにならい、おキヌちゃん、シロもそれに続いた。
 当たり前だが、タマモはそれを無視。
 彼女の大本の霊格を考えれば、仕方ないだろう。


「よいぞ、客人。気にするな。たんなるじじぃじゃよ」
「・・なーんだ。じゃ、きにしない」
「よろしくっす、老師」


 とりあえずリラックスした俺たちを、にやにや笑って受け入れる老師。


「ところで小僧。なんでワシを老師と呼ぶ?」


 しまった・・・、完全にミスった。
 表情を隠せず、ダラダラと冷や汗が流れる俺を、不振そうに事務所仲間も小竜姫様も見つめていた。


「小僧、飯の前に話を聞かせろ。」


 首根っこを捕まれて、俺は老師の部屋に引き込まれてしまった。

 

 

 


 とりあえず、老師にも逆行記憶があった。
 神族と魔族の上級職一定にもあるそうだ。
 つまり小竜姫様は雑魚扱い。
 ちょっと泣ける。


「で、とりあえず、どの辺が前と違うんじゃ?」
「えーっとですね・・・。」


 そういいながら、懐のメモ帳を出す。
 このまえ心眼と一緒にまとめたリストを出すと、一度眼鏡をかけなおして溜息の老師。


「おまえ、自重しとらんな」
「・・・アイツを救うと決めましたんで」
「それにしたって、ヌルを使うか? 普通。」
「たぶん魔界のどこかで、おもしろおかしく実験してると思うんすけど?」
「お前たちから逃げて以降行方不明じゃよ」
「・・・さすがに甘かったか。」
「そうでもないぞ? 一応追跡調査で時々浮かんできおるが、これと行って犯罪はしておらんらしいしの」
「へぇ・・・。」


 犯罪はしていない、魔界にも帰っていない。
 なにしてるんだ、アイツ。


「まあよい。・・・ところで、そろそろ「ウルトラスペシャルデンジャラス&ハードコース」をせぬのか?」
「・・・う。」


 地力は上げたいんだよなぁ・・・。
 でもあれをやって、なにに進化する?
 正直に言うと、この先に「なって」しまうのが怖い気もする。


「小僧の進化の先は、あの二文字の文珠ではないぞ。たぶん同期連係文字数の増加と威力の拡大じゃろう」


 あー、それはほしいかも。
 連係文字数が多くなれば多いほど精度と威力が上がるし、奇跡へのアプローチも可能になる。
 そう、イメージの拡大が容易になるのだ。
 少なくとも、四つ連係できれば、芦田さんに負けない手段がとれるし。


「そりゃなんじゃ?」
「んー、上司に秘密に出来るなら教えますけど?」
「無理じゃな。」
「じゃ、企業秘密ということで。」
「明日の朝にはヒャクメがくるぞ」
「それでものぞけない記憶封印の彼方においてありますので。」


 つうか俺用の記憶層は、ヒャクメだって覗けないし。


「ほぉ、記憶や考えを外の機械に置く、か。面白いのぉ」
「こうすると、並列演算が自分だけで出来て面白いっすよ」
「人間もやるのぉ。」
「カオスなんか、世界中に売り出したテレサの演算の一部をリソースに使えるから、本気で化け物並の演算速度を使えるっすよ。」
「そりゃ一度見てみたいのぉ。」


 そんなことをいいながら、俺たちは格闘ゲームをしていた。
 もちろん、周辺で覗こうとしている人たちへのアリバイ作りであった。


「で、やっとくか?」
「やりましょうか・・・。」


 この選択は、基本的に順当だ。
 しかし、この選択が、すべてを狂わせた。
 さすがに自分の完全な未来を知ることなど誰にも出来ないのだと思い知らされた。

 

 

 

 

 


 横島君が、翌朝ハヌマンの修行を受けると聞いた。
 強烈な霊力をハヌマンから受け、潜在能力を開花させるというバカみたいな修行で、一瞬で終わってもおかしくない時間加速空間での修行を、もう10分はしている。
 小竜姫様の話では、すでに加速空間で20年は過ごしているだろうという話だ。
 精神的にも霊力的にも成長期な横島君には、非常に有用で有効な修行なのだろうけど、私はひどく焦っていた。
 まるで置いて行かれてしまうような気がして。


 そんな風にやきもきしていると、不意に横島君の目が開く。


「・・・あ、美神さん。久しぶりっす」
「私には一時間も経ってないんだけど?」
「そうすっすか・・・いやー、長かったっす。」


 苦笑いでふらりと立ち上がり、そして構えた。


「さて、忠夫。お主は今、人を遙かに越えた所に立っておる。解るな?」
「あー、すでに行き着く先と結果も見えるっす。」
「ならばその結果、ひきだしてみせい!」
「うっす!!」


 魔猿となり、嵐のような攻撃を始めたハヌマン。
 避難した私たちを守るように、それでいて一瞬たりとも攻撃を受けずに逃げる横島君。
 彼の周囲には、まるでファンネルのように文珠が三つ、四つと取り巻き始めた。
 不意に気づく。
 彼の周囲に浮かぶ文珠の数がスゴい勢いで増えていることを。
 まるで、そうまるで、一枚の壁のように文珠が密集していた。


「ほぉ、同期連係拡大は間違いないようじゃな」
「いやー、不味いことにその先があったっす」
「なるほど、みせてみよ!!」
「後悔するっすよ?」


 そういいながら、文珠が輝く。


「・・・っ、そうか! そういう効果があったか!!」
「まだ先があるっすけど、見せられないっすよ?」
「いや、引き出す!!」


 まさに局地災害のような猛攻の中、横島君は冷や汗一つで受け流していた。
 いや、今のところけがをしていないだけだ。
 一撃でも受ければ塵も残らない。
 そんな攻撃だった。


「老師! それでは横島さんが!!」
「だまれい! まだ、まだ先があるのじゃ!!」


 瞬間、横島君のつきだした手の中で光が生まれる。
 文珠ではない何かの光に、ハヌマンの攻撃は止まった。


「・・・なるほど、後悔したぞ、忠夫」
「でしょ?」


 光輝くそれを体内に隠した横島君は、苦笑いでしりもちをつく。


「参りましたよ、老師。もう俺、人外っすよ」
「ではその力封印するか?」
「それもモッタイナいっすね」
「便利に使え。そして持て余したらここにくればよい」
「へーい。」
「・・・ただな、死ぬなよ。」
「うっす。」


 そんな会話のあと、私たちは詰め寄る。
 一番熱心だったのは小竜姫様だった。


「とりあえず、今まで作ってた文珠、人が作れるから人文珠てことにしますけど、量産できるっす」


 そういってつきだした両手の中に、山のような文珠が瞬間的に現れた。
 絶句する私たちの目の前で、その文珠は数を減らして色を変える。
 金色の文珠に。


「で、これが、太宰府の藤原道真公が作れる文珠、神文珠っすね。」


 溢れるばかりの神々しさ、そして力。
 信じられないものを作り出してしまった。
 が、小竜姫様の猛攻は続く。


「・・・横島さん、前座はいいです。最後のあれは何ですか!?」


 神の文珠が前座? どういうこと!?
 そんな強い視線を向けると、ひどく困惑した顔で横島君はハヌマンをみていた。


「教えるしかないじゃろ?」
「じゃぁ、まぁ教えますが・・・。」


 記憶していることに耐えられなくなった言ってください。文珠で記憶を消しますから。
 そんな一言とともに彼の手の中に生まれたものは、透明な珠だった。
 大きさはソフトボールほど。
 ただ、その霊気はおそろしいものだった。


「こ、これは・・・。」


 のどを掠らせて呟く小竜姫様に、横島君は軽く答えた。


「龍珠っす。」


 瞬間膝から落ちる小竜姫様。
 龍珠、といえば、成人した龍が自分の霊力を込めて生成する宝具であり権能の核ともいえるものだ。
 未だ年若い小竜姫様が持っていないのは仕方ないが、龍神でもない横島君が至ったというのは・・・。


「まぁ、俺の霊脳を開花させたのは龍神の小竜姫様っすから、ありうべき未来だったかもしれないっすね」


 そういいながら、その権能を説明されたんだけど、それが無茶苦茶デタラメであった。
 まず、雲を呼び、雨を呼び、雷を呼ぶ。
 これを霊能消費なしで行えるというのだからでたらめだ。さらに、その龍珠に文字を込めると、その龍の権能が使えるというのだ。


 
「氷」氷竜
「火」火竜
「水」水竜
「風」風竜
「闇」闇竜
「光」光竜


 こんなことを魔鈴に知られれば、明日から実験動物生活だろう。
 で、気づいた。
 入れられるのは文字。
 色もはいるだろう、と。


「実はここからが本番っす。」


 現在龍神の主流を占めているのは「青」龍。
 しかし「赤」龍も「緑」龍も「白」龍もいるのだ。
 で、そのすべての権能を使えると聞いて、小竜姫様は泡を吹いたが、瞬間的に復帰する。


「『黄』は、はいりますか?」


 その意味の重さに。
 で、横島君は、戸惑いながらもうなずいた。


「・・・今までの、すべての非礼に対してお詫び申し上げます。「黄」龍様。」
「・・・だぁ・・・、だから言いたくなかったのに。」


 黄龍はすべての龍を束ねる種族でありながら、この世界から姿を消してしまった龍。
 その龍が再び舞い戻るまで、「青」龍が龍神をまとめているだけというのが伝承なのだそうだ。

 

 

 

 

 何とか説得して、どうにかこうにか龍神界には伝えないでもらったものの、絶対下界に帰さないと息巻く小竜姫様。


「一応ですね、俺は人間で学生で!!」
「ですが、あなた様はいずれ「黄」龍に至る方! 龍のすべてを捧げたいお方!!」
「だったら、小竜姫様が下界に降りるっすか!?」
「いいんですかぁ!?」
「・・・ばかもの」


 老師の肉体的説得により、一度は引いた小竜姫様だったけど、いつの間にかうちの部屋にゲートをつないでいた。


「忠夫様のお世話が出来るように、老師にお願いしました!!」


 てなわけで、龍神の一柱が、ちょくちょく家にくるようになってしまった。

 

 

 

 


 湯水のように溢れる文珠を有効に使おうということで、カオスとともに開発したのが精霊石の代わりに霊具に仕込もうというものだった。
 神通棍との相性はばっちりで、シロの剣にも相性がよかったが、ファンネルには強力すぎた。
 フレームが追従しないため、コストを考えずに改良しないと耐えられそうになかった。
 逆説的に文珠を消耗品ととらえられるほど頑丈なファンネルはファンネルじゃないので、別開発だという結論に至る。


 現在は美神さん、シロ、おキヌちゃんの霊具増幅用に使っているが、実に気持ちいいほど意味がない。
 彼女たちはただでさえ協力なので、普通の仕事にはオーバースペックなのだ。
 故に、文珠式霊具はお蔵入りしている。
 はぁ、なんか使えればなぁ・・・。


「マリアは、文珠に感謝です」


 マリアとテレサの動力源として、文珠も使えるようにしたら、性能が格段に上がったそうだ。
 そりゃいいことだ、ということで、常時三つほど持たせているのだけれども、消費量は少ない。
 やはりそれだけ日常では使うことがないのだろう。
 そうなると、自動車やバイクの動力に転用するか?


「意味がない。箒があるじゃろ?」
「そりゃそうだ。」


 まったく意味のない成長をしてしまったと思った俺だった。

 

 

 

 

 速攻で終わってしまった仕事の帰り、タイガーにもピートにも教えていない店で飲んでいたら、タマモが姿を変えて現れた。


「なんだタマモ、中学生の来るところじゃないぞ」
「いいじゃん、お兄ちゃん」
「うっわー、かわいい!」「先生、しょうかいしてよー!」


 俺をGSだと知っていろいろとホステスが相談しに来ているうちに「先生」とか呼ばれるようになってしまった。


 まぁいいけど。


 で、そんな店でゆっくりしていると、いつのまにかタマモが現れて女の子に説教してゆくようになり、いつのまにかタマモが増殖している状態になって居心地が悪くなるのだ。
 ここも潮時か、ということで、あきらめざる得ない。


「・・・あのね、あんたたち。そんな態度で男が気持ちよくなると思うの?」
「だって、先生みたいないいおとこならいいけど・・・」
「ばかね、バカな男にも惚れて見せるのが商売女でしょ?」
「でも・・・」
「じゃあ聞くけど、お金を払えば近畿剛一が食事してくれるって話があったらどうする?」
「い、い、い、いくら!?」
「二十万まで出す! 即金!」


 囂々と燃えるホステスたち。
 銀ちゃん人気もんやんぁ。


「おしゃれとかするし、落とす気満々でいくでしょ?」
「「「もちろん!!」」」
「でも向こうは、ぜんぜんこっちをみるきなかったら?」
「・・・・・・」


 彼女たちの心の内には、金を払ったんだから相手するのは当たり前だろうという気持ちと、近畿君に相手にしてもらえるほどの魅力はないし、という気持ちが渦巻いてる。


「なにもね、ベタぼれになる気はなくていいの。ただ、近畿君に向けるであろう気合いの一部でも見せるべきでしょってはなし。あんた等に金払ってるんだから」
「「「勉強になります!」」」


 こうしてサービス満点のタマモ系列が出来てゆくんだよなぁ。


「おにいちゃんも、こういう有望な店を見つけるの上手いわよね?」
「あーもー、営業だよ営業。」


 こういう店での無料霊能相談の影響はバカに出来ない。
 わりと太線の客が相談に来るからだ。
 前の時、美神さんは全く認めてくれなかったけど、今回は営業効果が高いと言うことで週二で営業することを認めてくれている。
 今回の美神さんはいい女だなぁ・・・。


「さってと、そろそろかえっかな。」
「もう少し飲んでいってもよかろう?」


 ふらりと現れた美丈夫。
 見た瞬間に背筋が凍った。
 タマモも総毛を立てている。


「あー、芦田さん?」
「ああ、君がそう呼んでいるせいか、向こうでも結構気軽にそう呼ばれていてね。かなり気に入ってるよ」
「あはははは、それはうれしいですねぇ。」
「あはははは、感謝してるよ。」
「「あはははははは」」


 内心は滝のような汗をかいている。
 だってそうだろ、この時期に芦田さんが出歩いているなんてありえんだろ!?


「そんなに焦らなくてもいいんじゃないかな? 婿殿」
「「ブバーーーー」」


 俺とタマモは思わず飲みかけたものを吹きました。
 吹いちゃいましたよ、ええ!!


「あのぉ、芦田さん。もしかして、逆行知識あり?」
「なにを言っているんだね。私はこれでも上層部だよ? 知らん分けないだろ」
「あははは、そうっすねぇ」


 くそ、さっちゃん、きーやん、今度泣かす!


「ん? もしかして君は勘違いしてないかな?」
「なにがっすか?」
「私が計画のじゃまになる君を消しにきたとか。」
「え?」
「私は感謝しているのだよ。確実に私を魂の牢獄から救ってくれた人間が現れたのだからね。」
「・・・?」


 救ってくれた?


「もしかして、芦田さん、すでに?」
「ああ、私は立場的に魔王だが、すでに固定化された柱ではないのだよ。」
「じゃぁ、戦争は仕掛けない?」
「それは歴史的に決まっているのでな。茶番だが仕掛けるよ」
「・・・出来レース?」
「そうならんように戦力を増強しているのだが・・・。」


 曰く、オカルト兵器が売れなくて収入が厳しい、曰く、バカな金持ちをだましてオカルトを売りたいのに上手くいかない、曰く・・・・・。


 囂々と続くグチの数々に目を白黒差せていた俺とタマモ。


「こまってるんだよ、実際。君とカオスのせいで資金不足でねぇ。・・・このままでは「娘」も作れない。」
「「ぶふぅーーーー!!」」


 思わず吹きましたわよ、再び!!
 つうかもしかして・・・。


「金を貸せ、と?」
「いやいや、娘を二人ともたぶらかされた可哀想な男に見舞金でも、と」
「金をよこせ、と?」
「いやいや、催促なしの利子なし担保はあるよ? なにしろかわいい娘だ」
「てめぇ、無茶言いやがるなぁ。」
「ああ、そうそう、侍女に「テレサ」もほしいかなぁ?」
「芦田さん芦田さん?」
「いや、あの「テレサ」はいいね。可愛いし素直だし。うん、じつにいい」


 足元見やがって。


「テンコマンド抜き。寿命切り替え簡易化。」
「よかろう。」
「で、いくらだよ?」
「二千万ほどで窮地を脱するのだが・・・。」


 上目使いの魔王ってどんなんだよ?
 その目の奥で語ってるし。その目の「おく」で。


「わかったよ、二億ほど口座に放り込むからな」
「・・・! いやぁ、催促したようで悪いなぁ。」
「してたじゃん、目で「億」よこせっていってたじゃん!」


 歓喜の芦田さんにはタマモの呟きは聞こえていなかった。


「借金を迫る魔王、この写メ、いくらになるんだろう」


 しかし芦田さんの不幸は止まらない。
 つうか、わりと安易に助けられそうな予感。


「いやーさすが龍珠を生み出す人間だな」
「「ぶぶーーー!」」


 三度吹きました!


「な、な、な、ななんで!」
「・・・バカか君は。妙神山なんて隙だらけの場所で権能を見せれば、ばれ放題に決まっているだろう? 神界も魔界も、あののぞき魔が言い触らしておるぞ。」
「だ、駄女神め・・・。」
「うん、いい命名だ。広めておこう」


 が、まずすぎる。
 文珠でさえ不味いのに、龍珠ってのがまずい。
 少なくとも龍神総出で殺しにくるか拉致にくるか・・・。


「いい着眼だが、事実はもう少し斜め上だ。」
「というと?」
「いま、龍神は各部族総出でビューティーコンテストをしてる」
「は?」
「美人で悩殺しようと言う話になってな、一番の美人を決めるそうだ」


 わっかんねーーーー!!!
 でも、時間が稼げそうだ、うん。


「魔界でも同じ流れで美人コンテスト中だ。」


 おい、魔界。・・・大丈夫か?


「もちろん、娘たちの枠はあけてあるから期待していてほしい。ちゃんとトップに入って君にお披露目するからな」


 そういって、伝票をちゃっかりこっちに押しつけて「におくにおく〜」とスキップで帰る魔神。
 稼いでいてよかった、なんだけど、結構複雑な思いの俺であった。

 

 


************************************************
実に駄目親父になってしまった芦田さんw

でも結構気に入ってます。
やっぱりほら、魂の牢獄が彼を引き上げていたんですよ、能力とかいろいろ!
そういうことにしました!!

で、再演、つまり、既知者にとっての過去の再演という意味でもあると言う話です。これも過去SSでは手垢が付いたねたですねw

2012/04/04 OTR移設版 + 小修正



文字数は8,845文字