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第六話です
カオスが頼りになりますw
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第六話
あまりの事態に息をのむ俺たちだったけど、カオスの爺さんは不敵に微笑んだ。
「ふむ、ここ百年ぶりに血肉がわき踊るわ」
なんつうか、ここまで頼りに感じるカオスの爺さんを始めてみた俺たちだった。
雪乃丞と冥子ちゃんなどの六道事務所が本命ルート。
美神さんとシロタマモが陽道ルート。
で、残りが更に遊兵として大暴れ。
ということで、風水盤の地上部分の屋敷をなぎ払っているんだけど、これが結構簡単。
ばらばらにして火を放っただけだし。
どんなに結界で強化してても、両手の手の内で構える「破・壊」の文珠の前には塵に等しいのです。
ピートも随分と感心していたが、突如飛んできた攻撃に当たるほど柔ではなかった。
「・・・やってくれたじゃないか、虫ども!!」
現れたのはメドーサ。
雨のように降り注ぐ霊波砲の中を、サイキックシールドで逃げ延びる俺、霧になって逃げるピート、夜叉丸とともに引く鬼道、がんがん当たっているが耐えるタイガー。
彼の背後にエミさんがいるから動けないだけだった。
「タイガー!」
「ふんがーーーー!!!!」
俺がシールドを四枚展開して守りつつ、タイガーにあわせる。
塗り変わる世界、塗り変わる視界。
神族すら騙しおおす幻覚が広がる。
「ピート、あわせろ!!」
「はい、横島さん!!」
「「はぁぁぁぁ!!!!!」」
収束した霊波で一撃を加えつつ離脱、返す刀でサイキックソーサー、さらにエミさんの霊体撃滅波が襲う。
もちろん、これでどうにか出来る訳ではない。
手傷を負わせた程度だろう。
が、その程度と油断している今なら「どうにか」なる。
『(主、くるぞ!!)』
「(おう!)」
高まる霊波。
研ぎ澄まされる「それ」を感じた瞬間、俺はソーサーをメドーサのの四方に配置。
失敗したときように身構えたが、爆発音が成功を知らせる。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!」
顔を押さえて後退するメドーサ。
「な、なにが起きたんですか?」
「ああ、なんか集中する技を使いそうだったんで、ちょっと罠を仕掛けてみた」
「やるわね、さすが令子の弟子なワケ!」
鬼気迫る形相のメドーサだったが、さすがにプロ。
現状を素早く計算し、何もいわずにその場を去った。
「やったな、タイガー!」
「おいしいところは横島さんにもっていかれたのですジャー」
「馬鹿いうなって、おまえの幻覚があってこその不意打ちだ。」
「そうですよ、そうじゃなくちゃ、あの魔族に打ち勝てるはずがありません。」
「・・・ありがとうですジャ」
「さて、青春ごっこはいいから、そろそろ応援に行くワケ」
エミさんの言葉に頷いた俺たちは、凪払った洋館の基礎から地下への道を見つけた。
地下は大詰め、俺達の応援は千両役者到来という状況だった。
原始風水盤が起動され、魔界化が始まった瞬間に、俺たちが制御端末の背後から現れて、見た目小僧を蹴りとばしたから。
「・・・ぐはぁ!!!」
「いいぞ、小僧!!」
隙をみてカオスが風水盤を組み替えると、魔界化どころか清浄な空気に世界が変わる。
神聖にして清浄なる空間に。
「ぎゃーーーーー!!!!!」
叫ぶ子供はたぶん魔物。
この空間で苦しんでいれば間違いないだろう。
「さすがお兄ちゃん!! 子供相手でも手を抜かない非情さがすてきーーー!!」
ほめてるのか、妹よ。
「ナイスよ、横島君!! このGS美神が、極楽へ送ってあげるわ!!」
白金色に輝く神通棍を叩きつける美神さんだったが、子供は半壊した頭をそのままに、平然と笑った。
「危ない、美神はん!!」
夜叉丸によって引き離された美神さんだったが、肉の槍にかすられた。
「どういうことよ、まさかこの空間で不死身!?」
「そうさ、この俺、不死身のデミアンを相手にしたことを不覚に感じて死にやがれ!!!」
デミアン、聞いたことがある・・・・。
つうか、妙神山のあれか!?
なら・・・・
俺は手元へ文珠を呼び出し、「解・析」をした。
「美神さん!! そいつの本体は、ケツのポケットに入ってる筒の中です!!」
「な、なぜ!?」
驚きのデミアンをよそに、全員の攻撃が集中した。
光が収まると、そこには砕け散った肉の破片が散らばり、透明な筒も割れて残骸があるだけだった。
とりあえず、事件解決かな?
久しぶりに横島君の「霊感がささやく」に助けられた。
地力を延ばし、危なげがなくなったが故に出番が少なくなった「心眼」だが、普段から細かに会話しているらしい。
そんな横島君だから、地上でメドーサを追い返したと聞いても嘘だとは思わなかった。
「とはいえ、あの術はなんだたんでしょうねぇ?」
六道の好意で、二日ほど香港観光をしている中で、ピートが横島君に聞いてみた。
なんでも、直接撤退まで導いた一手前に、イヤな予感がしたのでメドーサ周辺にサイキックソーサーを配置したそうだ。
イヤな予感はあたり、何か術をしたらしいのだが、ソーサーの爆発で負傷したメドーサは撤退を決めたらしい。
「もしかして、超加速じゃないの?」
「・・・あ。」
横島君も目の当たりにしているし、韋駄天を身に宿したときに実感している超高速戦闘術だ。
それを出だしで撃退するのだから、たいしたものだ。
あれは発動した瞬間に負けが決まってしまう、そういうものだったから。
「うっわ、あぶねー。心眼のおかげだぜ」
『主、それは自分をほめているのと同じだぞ?』
「いいや、おまえのおかげだし、みんなのおかげだ」
最近では常態化している謙虚モード。
「でも、横島。おまえはかなりがんばったワケ。」
「ありがとうございます。」
にこやかな笑みに、エミですら見とれた。
つうか、ピート、なぜ赤くなる!?
急遽訪れた香港の休日。
私たちは十分に羽を伸ばした。
・・・はずだった。
「令子ちゃん〜、エミちゃん〜、仕事てつだってぇ〜」
残りの時間が映画撮影の特撮スタッフになってしまったのは泣ける話だった。
正確に言うと「踊るGS香港スペシャル」。
「いやー助かったで、よこっち! おまえらが香港にいてくれてて!!」
だれか、六道夫人を何とかして。
残りの時間とかいってたけど、滞在は二日延長の上、スタントはやらされるわ、着ぐるみは着せられるわ、最後にゃ顔出しまでさせられた。
ほんとうにテレビってひどい。
まぁ、番組宣伝で顔出ししてるからいいんだけどね。
で、で。
前回ので味を占めたプロデューサーとかいう名の中間管理職が「また」お願いします、とかいってきた。
もちろん、美神さんは「GO」。
ギャラにつられたんだろうなぁ。
まぁ、カメラの前で銀ちゃんと遊んでりゃいいだけなので、諦めたけど。
とはいえ、今度もまた女子から総スカンをくらんやろなぁ。
ああ、気が重い。
なんというか、息子はなにをしているんだろうか?
本人曰く「GS」になったといっていたし、免許も見せられた。
しかし、だ。
手元にくる情報は怪しい事この上ないものばかりだった。
たとえば、オカルトの総元締め六道家のオカルトコンサルタントをしているとか、古代陰陽道の呪符開発をしているとか、美神令子事務所の切り札とか、最近では幼なじみに銀ちゃんと東京で芸能活動をしているという話まである。
銀ちゃんは今をときめくアイドルとして売り出し中で、「踊るGS」は国外放映されるほどの人気だった。
ナルニアにもその波がきて、先日第一回が放映されたのだが、その番組宣伝に息子が写っていたのだ。
それもまるで吉本のコンビのように。
またそれが、泣けるほど似合っていた。
本業はそっちやろ、と旦那と一緒に突っ込みを入れてしまったほどだった。
いや、わかってる。
細かな報告は本人から聞いていないが、引っ越した後に銀ちゃんと再会しか事や、アパートの一室に間借りしてることなどもつかんでいるから。
ただ、芸能活動はないだろぉ? 忠夫。
「百合子、百合子、これみてみて」
久しく早く帰ってきた旦那が見せたのは、日本の週刊誌の一ページ。
そこには香港ロケ特集という内容で、取材されている息子の姿があった。
『近畿君の親友 : Y君
大阪在住時の親友で、初恋の人が近畿君と同じ。さすがに近畿君相手じゃかてんわ、と明るく笑う好青年。GSの研修でたまたま香港にきていたところで再会し、撮影協力を申し出てくれた』
何か引っかかるところがあったので、調べさせてみると、恐ろしいことがわかった。
この研修というのは表向きで、実際は中国政府が絶対に漏らさないという機密レベルのオカルト事件が発せしていたのだ。
詳細は不明だが、国家警察や人民解放軍が師団単位で投入されるほどの事件だったことが伺いしれる。
が、投入されたのはわずか十名弱。
どんな狂気かと思ったが、黒崎君はこう纏めていた。
『最高にして最良の最少人数』と。
資格試験に受かったばかりの息子のどこをつつけばそんな話になるのかと、不満を持って別の報告書を読むと、その事実がしれた。
現在日本に登録されているGSでもっとも多いのはD〜Eクラスだった。
そして次に多いのは「B」クラス。
で、Aクラスは三十人を下回り、Sクラスに至っては現役が二人しかいない。
つまり、事件投入できるだけのレベルに達した人間が少ないのだ。
息子は前に「事件が大きくなると知り合いばかり集まる」と笑っていたが、逆に言えば知り合いになってしまうほど選択肢がないともいえるのだ。
そこで注目されるのが息子だった。
現在は見習いのEクラスだが、開業許可を出されれば確実に「Bクラス」への昇格が約束されているという。
すでに六道家からは推薦があり、京都陰陽寮からも推薦+ラブコールがきているとか。
確かに育てた。
手塩にかけて、全力を込めた。
一時期は随分と圧力をかけすぎて、自分というものに全く自信のない子供に育ったことを後悔したこともあるけれど、成人するまでに矯正できればよいとまで思っていた。
が、息子は変わった。
GSという危険な職場で生き抜き、人間関係にもまれ、人と出会い分かれ、そして涙に泣きぬれて。
そんな息子だから幸せになってくれればいいとだけ思っているのに、なんだろう、この迷走ぶりは。
ちょっと一括した方がいいのだろうか?
今回は好評だったらしい。
「近畿君、台本忘れちゃってかわいいー」
だそうだ。
まぁ、凶信者はどこにでもいるので、それなりに毎日呪われてるけど。
半ば実体化したのろい、すげぇ、とか感心したら実は銀チャンのストーカーだったのは笑える。
「わらえんわ!! 見たことも聞いたこともない女が、寝室におるんやど!!」
どうもこれが寮に行きたくない理由の真実らしい。
じゃぁ、とお手製の護符を持たせた。
「これなんや?」
「ん? これは、俺の自作の護符じゃ。ストーカー怨霊を使役できんかなーと」
「使役ってなんや?」
「まぁ、いうことを聞くペットやな」
「よこっち、そりゃ不気味やで。」
「まぁまぁ、成功すればおもしろいやろ?」
「おもろいことあるかぁ!!!!」
とか何とかいっていた銀チャンだったけど、式神化に成功した。
括って出来たのは白猫。
括った対象はストークレベルのファン怨念。
形になるとは思ってたけど、結構きれいになったものだと感心してしまった。
本当は霊力が必要なんだけど、力の源はファンの「気持ち」なので、白猫が可愛ければファンの気持ちが離れていないという証拠になるわけだ。
かなり解りやすい人気のバロメーターだと思う。
最初は不気味がっていた銀ちゃんだったけど、白猫を通してファンを慰撫するという技が使えると知ると無茶苦茶嬉しがった。
「とはいえ、元はストーカーラブなのできーつけやぁ。」
「いやなことを思い出させるなや・・・」
結構うまくできたのでもう一つ作って六道婦人に見せに行ったら、これ以上作らないでほしいと懇願された。
これほどうまくいってるので不満を込めた疑問と返すと悲しそうな顔をされた。
よくよく聞いてみると、妖怪や怪異を呪符で括る手法は何百年単位で失われているため、未だ違法研究がされている分野なのだそうだ。
で、なぜ違法かといえば、この呪法が完成安定してしまうと妖怪怪異の違法売買がまかり通ってしまうからだ。
思わずぞっとした。
なにも考えずなんてものをひっぱりだしてきたんだろう、と。
六道婦人は、目の前でその呪符を燃やした。
それほど有ってはいけないものなのだという。
「横島君、あなたの知識は恐ろしいほど深いわ。それは混沌とした過去ではふつうでも、今の世にはあわないものもあるの。もっと勉強して、よく考えてちょうだい」
いつもの間延びした口調だったが、そう聞こえなかった。
この日初めて俺は六道夫人と正面から向き直ったのかもしれない。
「それより〜、これのことがききたいの〜」
それは簡易式神「ファンネルA」と「ファンネルB」のプランだった。
ファンネルAは半自立式で、指定座標範囲を自動移動しつつ目標攻撃するもの。
ファンネルBは全手動式で、範囲指定も攻撃指定もないけど、自由度が格段だ。
これを混在させて運用するのがファンネルABの最終目標とした企画だ。
「えーっと、初見だったら「A」だけで十分っすけど、量産するとなるといろんなひとが使いますよね? そうなると半自立だけでは対抗策が生まれてしますので、その対策が「B」っす。」
「あら〜? じゃぁ、一般販売は「A」だけにして〜、身内販売は「B」を混ぜるでもいいのかしら〜?」
「そうっすね、犯罪者や犯罪者予備軍に「B」を使われると結構つらいっすけど、でも、どういじっても「簡易式神」っすから、きょうどもそこそこっすよ?」
「そうだったわねぇ〜。でも、少し強力すぎるから〜、弱くしてから使ってみるわぁ〜。」
うんうんと頷く六道夫人。
はじめ、というか、最近まで陰謀や政治闘争の人だと思っていたんだけど、実際につきあってみると「面倒見」のよい人だと感じる。
もちろん、そう思わせているという面もあるけど、それ以上に、身内を守ることに神経をとがらせている人なんだと思った。
その身内が、「自分の娘」「自分の役に立つ人間」という今一なカテゴリーがあるのだろうけど。
「・・・ありがとうね〜、忠夫君〜。忠夫君には〜いろいろ迷惑をかけてるのに〜、こんなに良くしてもらって〜。おばさん〜、どうやって恩を返していいか〜解らないぐらいだわ〜。」
気持ちしょんぼりとした六道夫人。
「なに言ってるんですか。符や術のことを教えてくれているじゃないですか。俺なんか、なにも解らないんですから、そのへんの常識を教えてくれるだけで助かってますよ?」
「それは〜、令子ちゃんの〜お仕事よ〜?」
「はっはっは〜」
現世利益な美神さんに、現場以外のなにを教えろと?
まぁ、そんなことを言葉には出しませんが。
『(あんまり優しくするとつけあがるぞ、こういうタイプは)』
「(有る程度、恩を売っておきたい相手だろ?)」
ともあれ、制作監修に名前を乗せないことで話を通して、利益配分なんかは全部任せることにした。
非常に困った顔をしていたけど、その辺は大人として理性的に振る舞ってもらうほかない。
実に平和に六道邸を辞した俺だったけど、そこまで平和で終わる話ではなかった。
「あ〜〜〜〜、忠夫くん〜〜〜、うちまで来たのに〜、なんで〜冥子に〜声をかけてくれないのかなぁ〜」
ちょっとお怒り気味の冥子さん登場。
その背後にはニヤリと笑う雪乃丞とニッコリ顔の久美さん。
六道夫人は「あちゃ〜」と言う顔。
「あー、ごめんなさい。 この後の仕事があるので、時間がとれないんです。だから声をかけると逆に迷惑かと・・・」
「そ〜れ〜で〜も〜、声をかけてほしかった〜」
ぷんぷんと怒る冥子さんに平謝りして、今度除霊におつきあいするという約束をさせられてしまった。
「最近は失敗無いって聞いてますけど?」
「・・・忠夫君はわかってないわ〜」
「忠夫くん〜、鈍い〜」
まぁ、それはさておき、試作品の「AB」を試してみようと言う話になった。
もちろん相手は雪乃丞。
「A」は最初手こずったけど、「みえる」「そこだ!!」とかいって、のりのりで反撃を始めた。
やっぱなー、と思いつつ「B」を投入した瞬間余裕がなくなった。
最後にはズタボロになる雪乃丞。
が、目は爛々としていた。
「所長、これは最高の訓練になる!!」
さすが戦闘民族、バトルモンガーの感覚は違う。
「そうねー、久美ちゃんに使ってもらえば〜、いろいろと使い分けが出来るんわねぇ〜」
よしよし、そこに目を付けてくれるとありがたい。
「お母様〜、試作品の試験運用〜、うちでやっちゃだめ〜?」
「そうね〜、お願いしようかしら〜?」
「じゃ、こっちは「B」だけ借りてっていいですか? いろいろと訓練になりますんで」
「そうね〜、「B」は精密な意識の訓練になりそうね〜」
そんなわけで、試作品を各持っての解散になった。
事務所に帰って「B」の話になった。
そりゃ面白そうだと美神さんが操ると、そりゃーもう、精密に華麗に動くものだから、おキヌちゃんと二人で感心してしまった。
「ん〜、これ、三つぐらいを意識外で制御するのが効率的ね。ふつうなら攻撃補助で一つ、攻防一体で二つ、いろいろ考えて三つってところね。」
さすが超一流。
一応、ほぼ自立している「A」が有ると聞いてなるほどと笑った。
「じゃぁ、「A」の群の中に「B」を混ぜるのね?」
「うわ、さすが美神さん、即答ですね」
「そりゃ、解るわよ。そうされれば、私だっていやな相手だもの」
美神さんの評価は結構高いものだった。
少なくとも「A」なら自動防御に使えるし、「B」だけでも学生の訓練につかえるというものだった。
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取り合えず、オリジナルアイテムの出現です。
実際は、戻ってくる前によこっちがカオスと共に作ったけど、イマイチ上手くいかなかったものがアイデアの元になっているという設定です。
次回更新は12/31です。
2012/04/04 OTR移転版 + 小修正
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