電子書籍:学術書に特化した出版NPO発足 ratik

毎日新聞 2014年03月11日 08時00分

学術専門書を中心に電子書籍を出版するratikのサイト
学術専門書を中心に電子書籍を出版するratikのサイト

 学術専門書を中心に電子書籍を出版する特定非営利活動法人(NPO)「ratik」(ラティック)=京都市北区、木村健代表理事=が生まれた。NPOによる電子書籍専門の出版組織は全国初で、企画から編集、制作、販売まで一手に行う。国内の電子書籍の現状に風穴を開けるか注目される。【高橋望】

 学術書は、重要性が高くても採算が取れないとの理由で出版が断念されるケースが多い。こうした不幸な状況を打破しようとratikは設立された。大学の教員・研究者、デザイナーら13人の理事が事業を企画・推進する。ratikは6日、3点目の電子書籍を発刊した。

 ratikによると、紙の本では、用紙代、印刷・製本代、倉庫・運送代、取次・販売手数料などに大きな費用が発生するが、電子書籍による経費の削減で、コンテンツを生み出すところに集中的にリソースを費やせるビジネスモデルが可能となったという。

 利用者は、書籍データをratikのサイトからダウンロードする。データのファイル形式はEPUBで、欧米を中心とした標準の書籍フォーマットだ。オープン、フリーに開発され、パソコンやスマートフォン、タブレット用に提供されている無料のリーディングソフトで読むことができる。「学問を愛する者を信頼」して、著作権法で認められた「著作物の私的使用」を制限するコピー防止策はデータに施さない。

 電子書籍元年といわれた2010年以降、国内ではスマホやタブレットの浸透で、電子書籍は徐々に身近なものになってきた。しかし、書籍フォーマットが多数存在し、電子書籍ストアも乱立。電子化に際して権利関係が複雑すぎることなどが普及にブレーキをかけているともいわれる。

 こうした中でNPOとして発足したratikは、小規模ながらも企画から編集、制作、販売まで一貫した体制を整えており、学術情報を電子書籍で発信する出版活動によって、電子書籍の現状に新たな展望を見いだしたい考えだ。

 木村代表理事は、「ネット社会による膨大な情報の大海に、確かな指針を提供したい。幅広い研究者や、臨床心理士、カウンセラーら実践家の参画を促す学術コミュニケーションの活性化も目指したい」と話している。

 問い合わせはratik(info@ratik.org、075・432・8110)

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