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「エネファーム」の排気ガス問題

 「エネファーム・トラブル」は、エネファームを推進するガス会社や機器メーカーが、エコキュートのような「据付ガイドブック」を発行しなかったために発生した。

 念のために、ガス会社や機器メーカーの対応をチェックする。

 東京ガス「エネファーム・スペシャルサイト」QA欄 には、次のように記している。

 「水素と空気中の酸素を使って発電しますが、水素は都市ガスから化学反応により取り出しています。この化学反応の過程でCO2を排出します。また貯湯ユニットのお湯がなくなった時は、バックアップ熱源機が燃焼するため、その際にもCO2を排出します」

 この記述が意味するものは何か。それは、「エコキュート」は騒音と低周波音が出すが、CO2(二酸化炭素)は出さない。しかし、「エネファーム」は騒音と低周波音を出し、さらにはCO2を含んだ排気ガスも出している。

 よって、据付に際しては、「エネファーム」は、「エコキュート」よりも念入りに、隣家に配慮する必要がある。しかし、東京ガスのウェブサイトからは、これ以上の情報を得られなかった。

 次に、大阪ガスの「エネファーム取扱説明書」をチェックする。

 「排気ガスが、直接、建物の外壁・窓・アルミサッシなどや、物置などの塗装品に当たらないように設置する。ガラスが割れたり、変色したり、塗装がはがれたりする原因になります」(18ページ)

 「暖房時の音が気になるときは静音(にします)」(50ページ)

 排気ガスが隣家に悪さをし、かつ音が気になることを認めているものの、隣家への配慮はまったく記載されていない。

 さらに、アイシン精機「家庭用コージェネレーション」もチェックする。

 「コージェネレーションユニットの排気ガスが、室内に入る可能性のあるところへ設置はしないでください。屋内への給排気口や窓、通気口の近くへ設置すると、排気ガスが室内に流入し、中毒や酸欠などの原因になります」(1ページ)

 「点検・メンテナンス作業や空気吸込みのため、上図の据付スペースを確保してください」(10ページ)

 排気ガスの危険性、点検・メンテナンス作業のために必要なスペースについて触れているものの、やはり隣家への配慮は抜け落ちている。

(以下、「後編」に続く)

 
細野透(ほそのとおる)
細野 透 建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。細野透編集事務所代表。大学と大学院で建築の構造を学んだ。師である構造家の坪井善勝・東大名誉教授(故人)は、建築家の丹下健三氏(故人)と組んで、代々木オリンピックスタジアム、東京カテドラル聖マリア大聖堂を設計した。ジャーナリストになってからは、方向音痴にめげずに、1000作品以上の建築&住宅を現地取材。インタビューした建築&住宅専門家は3500人を超える。日本建築学会学会賞選考委員会、建築計画委員会、現代建築評価小委員会、リスクコミュニケーション手法に関するWG委員。住宅Webマガジン「日経ネット・リビングスタイル」編集アドバイザー。ブログ「建築雑誌オールレビュー」主宰。

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