「不思議音」とは何か
紹介した3件のうち、最初の2件が「不思議音」である。騒音問題が発生した場合、被害者は、何とか原因を突き止めなければならない。しかし、専門家でさえ、なかなか原因を突き止められないことがある。そのような場合には、「不思議音」と命名される。
この不思議音に関しては、「日本騒音制御工学会・研究部会・不思議音分科会」のウェブサイトに、「事例集」が掲載されている。
そのうち、1番「サッシ─熱伸縮」の「ドン、ゴン、コン、トン、カン、バシ、パキ、ピシ」という音と、10番「エアコン排水ドレーン─室内圧力差」の「ポコポコ」という音は、ぜひ聞いていただきたい。こういう音が聞こえたら、誰でも、「ギクッ」とするに違いない。
「不思議音」の原因を調べるためには、専門家に依頼することになる。日東紡音響エンジニアリングは、技術ニュース「不思議音の測定方法について」の中で、不思議音の概要、効率よく測定するための手法を紹介している。
「不思議音の測定で厄介な点は、いつ発生するかわからないことです。私たちが発生状況を測定するときには、対象室にマイクロホンを設置し、音が発生するまで収録し続けます。頻度が低いものになると、一昼夜待っても発生しない場合があります」
「その間、ひたすら録音状況を聴き、数時間おきに収録テープの交換を行う必要があります。これだけでも大変な作業で、観測担当者は休む暇もありません」
「やっと近年、コンピュータのサウンドカードの音質とハードディスクの容量が進歩し、これらを利用して長期間無人でデジタル録音することができる環境が整ってきました」
問題は測定費用である。全方位音源探査システム「ノイズビジョン」で測定した場合、「東京近郊の現場で30万円程度以上」になる。個人にとっては、重すぎる負担である。