| 2012年3月21日(水) |
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公営競技のオートレース、ボートレースで70歳を迎えた「古希レーサー」が奮闘している。別格の“長寿”で、孫と同じくらいの年齢の若手に交じって頑張る姿は、ファンに勇気を与え、注目を浴びる。 ▽歴戦の強者 昨年11月28日に70歳になったオートレーサーの谷口武彦(たにぐち・たけひこ)(浜松)が感慨深げに話す。「始めたころは40歳まで続けるのすら無理だと思っていた。まさかこの年齢までやれるとは」。競馬などを含めた公営競技全体で70歳でのレースは谷口が初めてだったが、昨年12月には1着を記録した。 浜松市出身で24歳の66年にデビュー。これまでの戦績は輝かしいとはいえず、現在は最も下のB級に所属する。ただ、半世紀近い選手生活で5千を超えるレースを戦ったことだけでも歴戦の強者といってもいいだろう。「幸せ。やめろと言われるまで続けるよ」と穏やかに笑った。 谷口から約1カ月半遅れの1月12日にボートレースで70歳選手が誕生した。1970年鳳凰賞(現総理大臣杯)や77年笹川賞などの最高峰のレースを制覇した実績がある埼玉県秩父市出身の加藤峻二(かとう・しゅんじ)(埼玉)で、3日後に1着になった。 59年に17歳でデビューし、53年目。1万4千回を超える通算出走回数は史上1位、通算1着回数は同2位。3度の賞金王にも輝いた名選手は「若い子(弟子)が周りにいるので、しっかりしなきゃと思ってきた。他には、長く続けられた秘訣(ひけつ)は特にない。これからも現状維持を目標に頑張る」と気張らずに語った。 ▽「好きだから」 2人のすごさは、他のプロスポーツの最高齢記録と比較するとよく分かる。プロ野球は浜崎真二(はまさき・しんじ)の48歳、JリーグではJ2の横浜FCに所属する三浦知良(みうら・かずよし)の45歳。競輪は湯浅昭一(ゆあさ・しょういち)の68歳、競馬の騎手は中央が岡部幸雄(おかべ・ゆきお)の56歳で、地方は現役の山中利夫(やまなか・としお)(金沢)の62歳。 「好きだから」と老雄は声をそろえる。だが、最高時速はオートレースが100キロ、ボートレースは85キロに達するといい、動体視力や反射神経などが衰える中、けがと隣り合わせのレースに出るのは簡単なことではない。主催者によると、一定数のレースに出場し、好結果を出せないと引退勧告されることもある。 厳しい世界で、大ベテランが頑張るさまは、幅広い年代から支持されている。川口オートレース場で谷口の走りを見たという埼玉県在住の30代の男性会社員は「ただただ、格好いい」。平和島ボートレース場では東京都内に住む60代の男性が「同年代が走る姿を見ると、まだ自分も何かやれると元気づけられる」と感銘した。 (共同通信社) |