漁師の格言集
G 漁師の常識 [全133編]
罠籠や刺し網を「海に落とす」と・魚やカニの種が尽きる。 |
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罠籠とは魚やカニ、タコを獲る漁具であり、ハゲ籠やカニ籠、アナゴ籠などを指す。これらの漁具や刺し網は、漁師が毎日引き揚げて掛かった魚やカニ、タコなどを獲る仕掛けだ。しかし、この漁具類の「引き揚げロープ」が切れて海中に放置されると、掛かった魚やカニは傷ついて罠の中で死んでしまう。翌日には「この匂い」に誘引された多くの魚やカニが籠や刺し網に掛かってしまう。これらの漁具は海中でも腐食しないから永遠に「魚やカニの殺戮道具」と化する。 ※ なぜ漁具規制しないのか疑問だ? |
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網抜けした魚は全て死ぬ。 | |
トロール網には「網目規制」なるものがあると聞く。しかし、トロール網の袋部分に入った幼稚魚は、すんなりと網目を潜り抜ける技を持ってはいない。網袋の中には毒クラゲの毒糸やヒトデなどが網目に「せかって」おり、幼稚魚達は袋内を長時間、右往左往するうちに傷付いて苦し紛れに網目を擦り抜けることになる。少しの傷でも、傷付いた魚が自然界で生き抜くことは不可能だ。トロール漁師は「網抜けした魚は1匹も残らずに死ぬ」と豪語する。 |
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シラスやチリメンジャコは旨い魚だ。しかし、このような名前の魚は世界中の何処の海にも居ない。正体はイワシ類を主体とした各魚種の稚魚なのである。 蚊帳の網目ほどの細い網目でのトロール網で一網打尽に漁獲するが、この際問題なのは、希少魚やイカ類を含む、あらゆる魚の幼稚魚も混獲してしまう・・・困ったものだ・・・ 近年は、探索機器や漁具の発達で乱獲が進み、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、キビナゴなどのイワシ類が激減し、同時に仔魚が混獲されるイカ類や大型魚も沿岸から消え去る運命。 シラスやアミ類などのプランクトンは、各魚種の幼稚魚が求める海の肥料であり、イワシ類はあらゆる魚やイカ類の主食なので海の米と言っても過言ではない。 一本釣り漁師は、イワシ類の乱獲がイカ類や真鯛、イサキ、ハマチ、アジ、サバなどのなどの釣り魚を激減させたと嘆き、「3年間でいい・イワシ漁を止めれば、何処にも大魚が湧く」と。 「シラス漁」と偽称して、各種の幼稚魚を獲る漁を許可している野蛮な国は他にないそうだ・・・漁業後進国の証なり・・・ |
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深海で甲殻類を食った鯛は赤く・浅場でイワシ類を追う鯛は色が浅い。 |
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深い海底で「エビやアミなど赤い色素」の多い甲殻類を食った真鯛は見事な赤色だ。太陽光線の射す上層に浮上してイワシ類を追う真鯛は、日焼けと相まって、体色が浅黒いのが特徴である。特に、大きな真鯛ほど鯛色が失せているようだ。 |
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産卵期のヒラメは、刺し網に1匹掛かると次々に掛かる。 |
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ヒラメの産卵期は晩春だ。仲間を求めて多くのヒラメが寄り集まる。刺し網漁師が操業をするが、刺し網業者は一晩では網を揚げずに海中に留めておく。翌日には、掛かったヒラメに求愛する仲間のヒラメが次々と刺し網の犠牲となる。 |
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魚を酸欠にすると擦れる。 | |
活魚船倉に許容量を越す魚を入れると酸素不足となってしまう。酸素不足になると、ひどい時には短時間で全滅してしまうものだ。たとえ、その際に死なず健常に診える魚でも、血液が魚体の隅々まで充分な酸素を運んでないから、魚の抹消部分にあたる尾鰭などの鰭部分や鱗下の皮膚などが壊死してしまう。ひどい場合は1両日で商品価値の無い傷だらけの魚体となり、そのままにして置くと次々と死んでしまう。 ※ 漁師はこの状態を「すれる」と表現する。 |
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夏の魚は酸欠に注意。 |
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冬季は、海水の温度が低く「酸素が海水に多く取り込まれる」だけでなく、魚の新陳代謝が少ないから「酸欠」になりにくいものだ。その逆の夏は海水温度が高く酸欠になり易い。尚、海水の口中通過による酸素供給を助けるには、速く泳げる大きな活かし籠に入れることが必要だ。 特に、アジやサバは少しでも酸欠状態になると「擦れ」の徴候が出やすいものだ。ブリやハマチ、真鯛等も魚体が大きい分、大きな活かし籠に入れて深く吊るしておかないと「擦れ」が発生する。反面、{ホゴ}{メバル}「メジナ」{スズキ}などは擦れにくい。 |
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大漁した時は、船倉の海水を循環させよ。 | |
釣った魚を死なすと商品価値は半額以下となる。魚を酸欠にしないように活魚船倉に給水したり、排水ポンプを入れて海水を入れ替えるがいい。尚、排水パイプの先を「もう一つの船倉」に入れると、2つの活魚船倉の魚が活きる。又、コンプレッサーでエアーを送るのもいい方法だ。 |
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スカッパーは大きな真鍮製を使え。 |
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スカッパーとは活魚船倉の「海水の出入り口金具」だ。真鍮合金は錆びにくくて弾力がある上に、緑青が貝殻や海藻の付着を防いで、海水の流通が悪化することがない。尚、近年の漁船に使用されているスカッパーは、特殊なプラスチックが使用されているから貝殻や海藻の付着は少ない。 |
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ポリ網の手玉は魚を傷める。 | |
ポリエチレン網は、糸が硬くて細い。真鯛などを「ポリ網手玉」ですくうと、跳ねる動きで鱗が剥げ落ちたり、鰭が破れることもある。商品価値が落ちるのは明白だ。※ 柔らかいクレモナ糸で仕上げた手玉を使用するがいい。 |
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釣った魚を握ぎるな・触ると「魚が火傷」する。 |
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当地の海水の温度は冬季で十数度、猛暑の夏でも三十度以下であり、人間の体温よりはるかに低い。魚も海水とほぼ同じ体温であるから、釣り揚げた魚は触らずに鈎を外すことだ。アジクラスの魚は握らず「鈎はずし」を使用して鈎を外すがいい。又、真鯛やブリなどの大魚は外気の影響を受けないうちに素早く鈎を外して活魚船倉に入れる。魚が体験したことのない36度の手で触った魚は「触った部分」の粘液や鱗に異常をきたし、後日には「すれ」がでるものだ。※ 鮮魚業者は「触ると魚が火傷する」と言う。 |
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正位を保てない真鯛は、放っておくと死ぬ。 | |
活魚船倉内で「腹を上にしたり」「沈んで横たわった」大きな真鯛は、そのままにして置けばやがては絶命する。腹腔内の浮き袋」に針を刺して中の気体を抜くことにより解決する。気体が抜けずに浮上した真鯛には腹鰭に錘を付けたり、背鰭の前方に紐をかけて「上から吊るす」など「正位」になるように手助けすると死ぬ度合いが少なくなる。※ この場合真鯛が泳げないから、海水循環などの酸素補充が必要となる。 |
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腹を見せた真鯛は、素早く「フク」を取れ。 |
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釣り上げた真鯛は「浮上して腹を見せる」のが常だ。これは水圧の急激な低下により腹膜内や浮き袋が気体で膨らんだからであり、そのままでは死んでしまう。太い注射針様の「フク取り用具」を「腹腔内の浮き袋」に刺して中の気体を抜くことにより解決する。しかし、気体を抜き過ぎてもいけない。真鯛が沈下して横になると絶命するからだ。 |
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真鯛は釣り揚げた時、直ぐに「フク」を取れ。 |
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釣り上げたばかりの真鯛の腹は、空気袋が膨張しており、放置すれば死んでしまう。空気袋がパンパンに張っている「釣り上げ時点」で「フク取り」すると容易に気体が抜ける。 |
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「フク」を全部抜くと真鯛は死ぬ。 | |
釣り上げた大真鯛や中真鯛は、50m程度の水深であっても、水圧の急激な変化に耐え切れず、腹膜が気体で膨張してしまい活魚船倉に入れた際には、腹を上にして青息吐息の状態となるもの・・・このまま放置して置くと死んでしまうので、正常な遊泳姿勢にする為に、腹膜を破って気体を抜きバランスを取る必用がある。しかし、気体を抜き過ぎると沈んで横になり、やがては絶命する。三分の二を目安に腹膜の気体を抜いて活け間に入れて置けば、破れた腹膜から適量に気体が抜けて正常に泳ぐようになる。
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「フクとり」の道具は細く鋭いものを使え。 |
急な減圧で腹膜内に発生した気体が溜まって腹部が膨らむ・・・この気体を抜く為に「フクとり具」で腹膜を破るのが「フクとり」・・・肛門後脇や左右の鰭脇を浅く挿すと気体が抜けるのだが、「フクとり具」が太いと真鯛を殺すことになる。できるだけ細くて鋭い「フクとり具」を使用することだ。 |
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後部の「フク」は肛門後から左右に浅く・前部の「フク」は鰭際から取れ。 | |
肛門近くが膨らんだ真鯛は、腹を上にして注射針様の「フク取り道具」の先を、肛門の後際から「砂擦り添い」に斜め前に向けて少し刺すと、スーと気体の抜ける気配が感じるものだ。この際、手を添えて腹を軽く押して気体を三分の二程度抜くといい。尚、肛門は真鯛の急所なので、やたら挿して傷付けないこと・・・それでも気体が抜けず前部の脇腹近くが膨らんだ真鯛の場合、左右の鰭の後際の薄い所に針を挿すがいい。 何れの場合も、気体を抜き過ぎると真鯛は遊泳バランスを取れず沈下し横になって、やがては死んでしまうから要注意。 |
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肛門を閉じた1㎏以下の真鯛は「フク」を取らなくても死なない。 | |
腹部の膨張が無く、肛門が閉まった真鯛は「フク」を抜かなくても死ぬことはない。概、1㎏以下の小型真鯛であり、たまに逆さ泳ぎしていても、やがては回復するものだ。これ以上大きい真鯛で、肛門が閉まっているものは、釣り上げる途中に浮き袋が破裂したに違いない。 |
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船際で泡を放出した真鯛は「フク」を取らなくてもいい。 |
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真鯛を釣り上げる際、船際で水圧がなくなると「大量の泡」を出すことがある。「空気袋」が破裂したからであり、概、1㎏以下の真鯛の場合、腹が膨張してなければ「フク」を抜かなくても死ぬことは少ない。 |
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「フク」の取れない真鯛は深く吊るせ。 |
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浮き袋の所在が判らず、やたら内臓を刺すと真鯛を殺してしまう。このような場合、潜水病になった状態の真鯛を網生簀に入れて、水圧の高い「数m以上の深さ」に吊るすと回復することが多い。 ※ ポイント近くの入り江に「簡易の生かし網」に真鯛を入れて吊るしておき、終漁時に船に回収するがいい。 |
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フクが取れずに、浮上した大真鯛などには「正位」になるように手助けすると死ぬ度合いが少なくなる。 沖合では活魚船倉内での対応が必要だ。真鯛が正位になる程度の錘を下鰭に掛けるが、泳げないと駄目だから「正位を保てる」程度の軽い錘を準備しておくがいい。尚、背鰭の前方に鈎を掛けて上方より紐で吊るすのもいい。この場合、クッションゴムを併用しないと背鰭が破れてしまう。 |
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大鯛が暴れる時には、腹を掴むとオトナシクなる。 |
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これは不思議だ。鱗付近に「温度に敏感に反応する感覚」を持つ真鯛は、人の手が触れるだけで、その温度を感知して驚いて動きを止める。釣り鈎を外す際、暴れる真鯛の腹を掌の平で触るがいい。※ 頭部を触ると鋭いエラで怪我をするから要注意。 |
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釣り上げた真鯛は色が褪めており、トレードマークの桜鯛の色合いをしていない。真鯛には、若干体色を変える何らかの「変色仕組み」が鱗にあるものと思われる。尚、類似したチダイは色を変えることは全くない。 |
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イワシやアジ類は、下からは大魚に追われ、空からは水鳥に狙われる。この為、腹部を白く空と同化させ、背部は青い海の色に合わせた保護色となっている。又、魚を狙うカモメやサギなどの腹やミサゴの腹部も白い。空と同化させて魚を喰って大古から生き延びてきた強者だ。 ※ 死魚を狙うトンビやカラスは白くない。 |
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黄色がかったマアジは「地着きアジ」・黒いマアジは「乗っ込みアジ」。 |
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沿岸部に居着いて越冬したマアジは、黄金色かかった光沢があり脂がのっていて実に美味だ。一方、沖合より乗っ込むマアジは薄黒い色合いをしており、若干縦縞模様があるのが特徴。 |
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脂の乗ったマアジは旨い。 |
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姿・色合い・肥満度が真鯛の命。 | |
真鯛ほど個体差のある魚は居ない。人の顔の如く1匹1匹の真鯛の姿形,色合い、肥満度、大きさは千差万別だ。姿、色合い、肥満度合いが良くないと商品価値は半減する。 |
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人間同様に姿形、色合い、肥満度、大きさなど個体差の大きい真鯛 |
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姿・色合いがいいのは保戸島付近の真鯛。 |
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豊後水道海域で水揚げされる真鯛では、姿、色合い、肥満度の三拍子が最も揃っているのは豊後水道中部の保戸島付近で漁獲される真鯛だと言う。漁業関係者の経験では、伊予灘の真鯛は色合いが悪く、潮流が速い速水海峡で獲れる佐賀関の真鯛は痩せて筋肉質であり、姿、色合い、肥満度の三拍子が揃った真鯛は100匹漁獲しても数匹程度とのこと。 |
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豊後水道では、無垢島のモイカが最も大きい。 |
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「食っただけ太る」イカ類は、豊後水道北部では無垢島周辺のモイカが最も大きく成長する。潮通しが良くて小魚や甲殻類などの餌が多いからだと聞く。 |
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イカとタコは食った分だけ太る。 | |
イカやタコは、四六時中餌を捜して食っている。このような習性があるから、餌の多いポイントでは個体数が多い上に肥えていて大きいものだ。 |
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白口は沿岸・黒口は沖合のセグロ。 |
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カタクチイワシは2種類ある。「白口カタクチイワシ」は沿岸部に多くてイリコに最適。「黒口カタクチイワシ」はセグロと呼ばれ、イリコや目刺しの原料に向き、沖合の大海から来流する。 |
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サワラとカツオは釣り上げると死ぬ。 | |
サワラやカツオ、マグロは泳ぐことで「海水を通過させて鰓呼吸」するから、泳ぎを止めると死んでしまう。釣行には氷の持参は欠かせない。 |
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真鯛は尾縁が黒い・尾長クロの鰓の縁も黒い。 |
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真鯛とチダイを判別するには「尾縁」の縁取りが黒いのが真鯛、チダイの尾縁と鰓縁はピンクだ。メジナと類似した尾長クロは、鰓縁が黒いことで区別できる。 |
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天然真鯛の鼻穴は二つ・放流真鯛は穴一つ。 |
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真鯛の鼻の穴を見るがいい。天然真鯛の鼻穴は二つ穴が左右共に前後している。放流真鯛は細長い一つ穴なので判別できる。 ※ 生育条件によっては若干の例外もあるらしい。 |
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養殖真鯛と天然真鯛の違い・・・左の長い一つ穴が養殖物・右側の二つ穴は天然真鯛 |
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天然のヒラメの下腹は真っ白だが、養殖ヒラメや放流したヒラメの腹は真っ白ではなく、黒いブチやシミ模様があるのが特徴だ。業者は「ブチあり」をもじり、親しみを込めてパンダ又はブッチャーと呼ぶ。 |
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左と中の写真は養殖ヒラメや放流ヒラメの下腹、右は天然ヒラメの下腹 |
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左ヒラメ・右カレイ。 | |
ヒラメとカレイは似た魚・・・腹を下にした際に「目玉が左側」にあるのがヒラメ・右側に目玉があればカレイ・・・尚、ヒラメの顔は鬼顔で男性的・カレイの顔は女性的でもある。 |
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白アマダイは目が小さく・尻尾の上下が白い。 |
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希少で肉質のいい{白アマダイ}は白っぽく、小さな目玉の下に黄色い色素が無いのが特徴だ。尻尾には黄色の薄い線が10本ほどあるが鮮明でなく尻尾の中間で消える。アカアマダイの尻尾は下部は薄いブルー、上部は体色と同じだ。 ※ シロアマダイとアカアマダイは同じポイントで釣れる。 |
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左の2点はアカアマダイ、右の2点がシロアマダイ |
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アマダイは、尻尾に七本の黄色い線が走る。 |
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赤っぽい{アマダイ}は、大きい目玉の下に黄色い垂れがあり、尻尾の上半分には鮮明な七本の黄色い線が走る。 |
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ニベは喉越しに歯様の突起・脊髄は尻尾まで。 |
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日向灘から豊後水道にかけて生息するニベは、30㎏にも達するスズキに似た巨大魚だ。エラにつながる喉の周辺には歯に類似した突起があり、尻尾の中央には脊髄の延長らしき骨が連なるのが特徴である。なんだか原始的な魚だ。 |
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冬に砂泥地で釣れるコブイカと紋甲イカ(カミナリイカ)は類似した甲イカだ。コブイカの脊中の模様は波型であり、500gほどに成長する。沖合いを好む「紋甲イカ」は小判型の紋を背中に散りばめた2㎏程に成長する高級な甲イカ。尚、別府湾などに多く、甲イカでは唯一灯火に寄る習性を持つシリヤケイカの背中はアバタ模様。 |
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甲イカ三種・・・左より、シリヤケイカ・コブイカ・モンコウコウイカ(カミナリイカ) |
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エラの縁はカミソリ・釣った魚に仇を打たれるな。 |
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魚のエラの縁は、C形の刃物状態となっている。これは、より大きな天敵に襲われた際に抵抗する武器なのである。真鯛、スズキ、メジナ、アマダイ、イトヨリ、メバル等、大群を形成しない魚のエラ縁がこの状態になっているようだ。尚、ハマチやアジ、サバ等の青魚のエラは刃物状態ではない。 ※ 特に「1㎏前後の真鯛」には注意が必要だ。 |
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真鯛の口に指を入れるな。 |
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真鯛の咬噛力は凄い。カニの甲羅や貝類を噛み潰す威力がある。滅多に「噛み付き動作」をしない真鯛ではあるが、釣り揚げた真鯛は口を開けており油断はできない。鈎を外すにはペンチなどを使用すると無難だ。 |
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ヒラメは食い付く・手で鈎を外すな。 |
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ヒラメの歯は「ウナギ鋏」の如く強烈だ。うっかり口に手を出すと反り返って食い付くことがある。 |
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タチウオの歯傷は血が止まらんぞ・真鯛の棘は痛むぞ。 |
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タチウオは歯が鋭い。一寸でも触ると歯傷を負うが、不思議にも痛みは少ないが出血が止らないものだ。中小の真鯛の場合、棘が刺さるとオコゼやゴンズイ等の猛毒魚程の激痛はないが、顔を顰める位は痛み、後日まで鈍痛が残るのが特徴だ。 |
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ハモとウツボは歯・エイはシッポ・オコゼは鰭を触るな。 |
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ハモとウツボ、サメは近寄ると攻撃的に鋭い歯で食い付く。エイは尻尾の根元に猛毒の棘をもっている。オコゼ類は背鰭、腹鰭、胸鰭などに毒棘がある。この他に、ゴンズイ、アイゴなども毒棘を持っている。 |
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左の写真はオコゼ、中の写真がハモ、右はエイの刺 |
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アナゴなど・長い魚を刺身で食うな。 | |
アナゴやウナギなど、長い魚は弱毒を持つ・・・刺身で食すると食当たりする人もいる。しかし、この毒素は熱で分解されるので、カバヤキや蒸し料理すると安心して食べることができる。 ※ 60度で蒸すと安心だ・と料理人は言う。 |
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釣った魚を蹴るとバチがあたる。 |
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青魚以外、大半の魚の脊中や腹には鋭い棘がある。外道魚だからと安易に蹴飛ばすと、長靴を刺し抜いた棘が足まで達する。特に、オコゼ、ゴンズイ、アイゴなどの毒魚の刺は勿論、マトウダイや真鯛などの棘も鋭い。 |
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マツイカ(スルメイカ)は握ると食い付く。 |
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生きたマツイカ(スルメイカ)を握ると、反り返って抱き付いて食い付く。釣り揚げたイカは、スッテを持って逆さにすると外れる。 |
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イカの墨は粘っこい・タコの墨は洗うと落ちる。 |
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イカの墨は黒くて粘っこく、衣類に吐き付けられるとアウト。タコの墨は海水と混わるから洗浄が可能だ。しかし、イカの墨も塩素系洗剤には弱いものだ。 |
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甲イカの墨は墨汁・水イカの墨は少なく薄い。 |
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甲イカ類のイカ墨は墨汁の如く濃いだけでなく、その量も凄く多い。それに比べると水イカ類の墨は少ない。泳ぎが不得手な甲イカ類は天敵魚に追われた時に「イカ墨の煙幕」に身を隠す。 |
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魚をスポンジマットに乗せると暴れない。 ※ これは本当だ。 |
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釣り揚げた時や魚を〆る際、座布団程のスポンジマットに置くと静かになるものだ。鈎外しや活き〆が楽にできる。 |
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鰭を傷めたり鱗が落ちると、真鯛の商品価値はない。 |
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少しの鱗が落ちただけでも真鯛の商品価値が半減する。ポリ網などで作成した手玉は、糸が硬いから魚が跳ねると鱗を飛ばすことがある。
見惚れるような立派な大鯛も、タモの中で激しく跳ねると背鰭や胸鰭が破れてしまう。又、若干ではあるが鱗が落ちることもある。「活き造り」や「店頭飾り」となる大真鯛なので釣り上げた後も大事に扱いたい。 |
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魚の脂肪は常温では溶ける・低温保管して手早く調理せよ。 | |
体温を持つ肉類の脂肪は煮炊きしての高温で溶解する。その反面、魚類の脂肪は常温で溶けるから低温保管して手早く調理することだ。当地の海水温度は冬季で13度、猛暑の夏でも30度を超すことはない。漁師は釣り揚げた魚でも握って鈎を外さない。握ると魚が火傷すると言う。 |
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活き〆の潮氷は、海水60%真水40%がいい。 |
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魚の生き〆に使用する潮氷には海水を使用するが、海水だけの場合は、活き〆する魚が少量の場合などには、超低温となって目玉が凍結して白濁することがある。商品価値を落とさない為には、海水60%真水40%の混合水に「かち割り氷」を入れるがいい。 |
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身焼けとは、「〆てからの潮氷」の温度がが不十分で魚の肉質が落ちた状態を言う。活き〆する際の過度な動きで体温が上がったり、冷却や血抜き不十分なことでもおきる。 |
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ブリやカンパチなどの青魚は、水揚げした際には活発に動くから手に負えない。活き〆するには、先ずハンマーで頭部を殴って脳震盪させてから、包丁でエラ下より延髄を切って殺し、血液を出して直ぐに潮氷に入れるがいい。 |
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目玉とエラの中間三角点が手鉤位置。 |
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魚の活き〆は、魚体の右側に(頭を前に上から見て)、目玉とエラの中間三角点に位置する上部より大骨(脊髄)にある延髄部分に向けて手かぎする。 ※ 中間に目視される薄い点線の上部に当たる。 |
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魚を「活き〆」する際、魚体の右側に(頭を前に上から見て)手鉤することだ。これは「活き造り」や「煮物」などの料理は、食卓では頭が左、腹が手前に皿盛りするからであり、魚に「手かぎ跡」が見えると失格。 |
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鰓下から手鉤すると手鉤傷が見えない。 |
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手鉤で「活き〆」する際、手間はかかるが、鰓下から大骨(脊髄)にある延髄部分に向けて手鉤すると手鉤傷が見えない。左右のどちらからでもいい。 |
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活き〆後・尻尾近くの中骨にナイフを入れて血を出せ。 | |
手鉤しただけでは、血液の排出は万全ではない。尻尾近くの背骨にナイフ先を入れて、頭部を持ち上げた魚を軽くS字型に曲げると血液が完全に出る。 |
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究極の活き〆は延髄通し(神経抜き)。 |
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魚を〆た直後に、鼻の下穴からステンレス線を差し込むと延髄に達するので、そのまま刺し通すとシッポ近くまで届く。この施術をすると、魚体が締まらずに鮮度の持ち日数が違う。尚、尻尾近くに包丁を入れて露出した背骨の中に、ステンレス線を差し込んでもいい。業者は「神経抜き」とも言う。 |
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活き〆の延髄通しは「目玉が動く位置」を通せ。 |
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真鯛の場合、前頭部の左右にビックリマーク!の如き鼻穴がある。この前穴から目玉の三分の一の位置を目がけて細いステンレス線を差し込むと「目玉がクルクル」と動く。そのまま刺し通すと、魚体がピクピクと反応しながら延髄内を通過してシッポ近くまで達する。尚、絶命した真鯛は、このような反応は全く無く延髄通ししても効果は無い。 |
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生きた時に延髄通しすると12時間は〆らない。 |
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生きた魚を〆た直後に血抜きして、延髄通しする瞬間には「魚体がピクピクと反応し最後のあがき」をするものだ。この処置後に潮氷すれば硬直せず、12時間は鮮魚状態を保てる。 |
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死んだ魚に「延髄通し」しても手遅れ。 |
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死んだり、生きていても極端に弱った魚は、延髄通しする瞬間に「魚体がピクピクと反応し最後のあがき」をしない。このような魚は延髄通しの効果が100%ではなく、「血抜き処置」もうまくできないのが常だ。 |
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直接氷が魚体に触れると色褪せする。 |
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魚の出荷は、魚体が冷却されるまで待ち、発泡スチロール製のトロ箱に並べるが、魚体に直接氷が触れると色褪せするから、パージしてその上に氷を打つ。 ※ アジなどの青魚は、鯛などの色物に比較すると色褪せしにくい。 |
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イカは真水に触れると白くなる。 |
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イカの体には真水を触れさせないのが鉄則だ。クーラーに入れた氷は融けると真水となるから、氷の上に新聞紙等の吸着物を乗せておく。イカはその上に置くが、水分を絶つ為にラップで遮断するか、ビニール袋等に入れておく。尚、空気中からの結露水にも注意を要する。 ※ 温度の低い側の側面に、気温の高い空気が触れると結露して水滴となる。 |
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イカを〆るには箸で刺せ。 |
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イカ類を〆るに際には、必ず一発で仕留めることだ。一寸でも急所を外すと「濃い墨を吐いて」始末が悪い。急所は「口の奥」に位置するので「トビカラス」と呼ばれる「イカの口」付近より深く挿すが、先の尖った金具で刺すよりも、先端容量の大きい「竹箸」を挿すと効き目がいい。尚、目玉の中間より斜め奥に向けて刺してもいい。 |
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甲イカは背中を掴んで〆ろ。 |
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甲イカを〆る際、白い腹側を掴むと、水を吐くロートが真正面に向くから、モロに「濃いイカ墨の攻撃」を受けることになる。 |
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一発〆が成功したイカは、一瞬にして白くなる。 |
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イカ〆では、急所を刺しが成功すると、墨を吐く間もなく劇的に白く色変する。多くの「イカ〆作業」を経験して「刺す位置と角度」を学習することだ。 |
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赤ナマコは岩礁地帯・青ナマコは砂泥地に居る。 |
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海草の多い岩礁の浅場が赤ナマコの住処だが、海草を食する気配はない。一方、青ナマコは岩礁から続く砂泥地に多く、20m近い深場の海底にも居る。 |
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ナマコは水温が低下すると姿を現す |
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ナマコは水温が低下する12月に入ってから姿を見る。酷寒の頃でも暖かい日にはその姿は少なく、寒波が襲来して水温が急激に下がると、多くのナマコが出現するものだ。 |
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波浪があるとナマコは出てこない。 |
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ナマコの腹側にある「足の吸盤?」は小さくて弱い。波の影響を受ける浅場では、自由に動くことができず、海藻や岩場に隠れたナマコは姿を見せない。 |
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タコやイカは水潮が大嫌い。 |
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タコやイカは水潮が大嫌いだ。目視されるような浅場に揚がるタコも、大雨や長雨の後にはその姿を見ない。塩分濃度が薄くなるのが要因らしい。 |
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横綱魚は白アマダイ・クエ・アラ・トラフグ。 |
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クエやアラ、マハタ、トラフグは誰もが知る超高級魚だ。これに勝るほどに白アマダイは旨くて希少な高級魚だ。尚、冬季にだけ漁獲される「赤ヤガラ」も、食通を「うならせる」食味を持つ |
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幻の超高級魚アカアマダイとシロアマダイの二種 | |
サワラの旬は冬。 | |
当地では秋季に多く漁獲されるが、脂がのって旨くなるのは水温の下がる冬季だ。 |
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サワラを釣るには氷を持参せよ。 | |
釣り上げたサワラは、活魚船倉に入れても数分で息絶える魚だ。直ちに血抜きして「潮氷」に浸すことで鮮度が保たれる。尚、カツオやシビ子も同様な魚だ。 |
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サワラの身肉は柔らか・鮮度は落ちなく日持ちする。 | |
サワラの身肉は柔らかくて一見鮮度が落ちたように思えるものだ。しかし、ブリやアジなどより日持ちする魚だ。 |
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スズキの旬は春から初夏だが・寒の内も旨い。 |
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スズキには、マルスズキとヒラスズキがある。概、ヒラスズキが旨いが旬は青葉の頃だと漁師は言う。マルスズキは肥えたのは夏も旨い。しかし、寒の内でも肥満した個体は脂がのっており、「あらい」などで食すると実に美味だ。 |
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真鯛の旬は、盆前と正月頃。 |
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産卵を終えて貪欲に餌を追って脂が乗るのは概7月頃になる。又、真鯛の好む水温になる晩秋にも多くの餌を食って「脂」が乗ってくる。 |
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孕むと子(卵)に取られて旨くない。 |
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魚が産卵期を迎えると、栄養分が腹中の子孫に移ってしまい、脂肪分が抜けて旨く無いと言うのが定説だ。特にアジやサバ、ハマチなどの青魚にその兆候がでる。白身魚の場合は、極端な脂の落ちはないようだ。 ※ イカやタコ、魚ではイサキだけは、抱卵していても脂がのっていて旨い。 |
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産卵前の青魚は、卵に栄養を採られて旨くない。 |
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アジ、サバ、ブリなど、抱卵中の青魚は栄養分を卵に採られて痩せているものだ。 |
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白身魚は抱卵中でも脂が多くて旨い。 | |
真鯛やメバル、カサゴ、イサキなどの白身の魚は、抱卵中でも肥えている。 |
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真鯛の婚姻色は腹が黒ずむ。 | |
真鯛の産卵は初夏だ。産卵時季が近づく3月頃から、真鯛達は徐々に浅いポイントに寄るようになる。腹部の体色が黒ずんでくるのが特徴だ。漁師は「青鯛」と称する。 |
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真鯛は初夏・チダイは秋に産卵する。 |
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当地での真鯛の産卵は4月から5月にかけてであり、チダイは晩秋の10月下旬に産卵する。尚、水温などの気象に変化がある年には、産卵時期に「多少のずれ」が生じるようだ。 |
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むっから鯛(麦殻鯛)。 |
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産卵直後の真鯛は痩せてしまい、薄いしみ状の斑紋模様が浮き出ているのが特徴である。漁師はこの時季が、周辺の段々畑の裸麦が「黄色く色づき」収穫期に当るので、この、痩せた大真鯛を総称して「麦殻鯛(むっからだい)」と卑下して呼ぶ。これは、美味しいはずの真鯛が(麦殻を味わうほど)美味くないとの例えでもある。 |
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産卵後の真鯛も餌が多いと直ぐに太る。 |
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当地の真鯛は4月から5月にかけて産卵する。産卵後の真鯛は、婚姻色が残って痩せているが、食欲は旺盛で餌が多ければその回復は早く、一月程で元の状態に戻る。 |
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真鯛は肥満した2~3㎏物が最も旨い。 |
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真鯛にも旬があるが、肥満した2~3㎏物であれば時期を問わずに旨いものだ。俗に「1貫目鯛」と呼ばれる大真鯛や小鯛の「脂の乗り」は今一歩。 |
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日焼けするのは真鯛と人間だけ。 |
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「日焼け」する動物は人間だけではない。見惚れるような「桜色の真鯛」も、長期間海面生簀に入れておくと、赤黒い「養殖真鯛」紛いの色となってしまう。 |
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真鯛は「日焼け」する・生簀を深く吊るせ。 |
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真鯛を、長期間生け簀に入れておくことは避けたい。痩せる上に、太陽光線が射すから体色が黒ずむ。太陽光線を軽減するには生簀を海中深く吊るしておくことだ。 |
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真鯛は「日焼け」するが・チダイは「日焼け」しない。 |
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真鯛は「日焼け」するが、類似したチダイは全く日焼けしないから不思議だ。 |
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深場のベラ類は紅く・浅場に居るのは色褪せしている。 |
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浅い海藻領域に生息するベラ類は色褪せており、30mを超すポイントのベラ類は赤見がかっているものだ。同じ仲間のカンダイも例外ではない。 |
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モブシは強いメスが雄になる。 |
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モブシとはカンダイであり、春には大きなベラに似た姿の「メスのカンダイ」が浅場に乗っ込む。コブを持った雄のカンダイには縄張りがあるそうで、その雄カンダイが失踪すると、最も強いメスが性転換して巨大な雄カンダイになると言う。 |
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チダイは成魚になるとオデコが出てくる。 |
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チダイの老成魚は、大きな個体でも1㎏程度だ。このような大チダイはオデコが出っ張っている。特にオスの老成魚はその傾向が強い。大きなチダイは「ハナオレ」と言われる。 |
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メバルとホゴは「寒の内から早春」にかけて産卵する。 |
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黒メバルの産卵は寒の内頃であり、赤メバルやホゴこれに続いて産卵するが、ホゴ(カサゴ)は3月中旬まで抱卵した個体が散見される。 |
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メバルとホゴは卵胎生で仔を生む。 |
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早春に釣り上げた、ホゴやメバルの抱卵母体からは、仔魚の姿をした子が大量に流れ出る。 |
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メバルは親魚が多いと・仔を喰うから多く育たない。 |
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早春に産卵するホゴやメバルの抱卵母体が多い年は、親が仔魚を食い漁るから多くは育たない。これで自然界のバランスがとれる。 |
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親魚が少ない年には、若い魚も産卵する。 |
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メバルやカタクチイワシなどは、産卵母体の個体数が少ない年には、通常の時期を過ぎてから再度抱卵したり、通常では産卵しない若年魚が産卵すると言う。自然界の「種族保存の法則」なのであろう。 |
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ゴカイの産卵は初夏・成虫となって海を泳ぐ。 |
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釣り餌として欠かすことのできない各種のゴカイは、梅雨の頃には成虫となって一斉に海中に泳ぎ出て産卵し、一生を終える。 |
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成熟した青いゴカイは雌・赤いゴカイが雄。 |
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ゴカイは、春先から初夏にかけて赤い個体や青い個体が徐々に多くなるものだ。これは産卵を控えた婚姻色とのことで、「青いのが雌」であり億単位の卵を産み「赤いゴカイ」は雄だと聞く。 |
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夏のブリには寄生虫が潜むから安価。 |
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初夏から秋にかけて釣れる数㎏物のブリには、サナダムシ様の寄生虫が身肉内にトンネルを通している個体がある。特に、外海より乗っ込むブリで「痩せているもの」はその比率が高く商品価値はない。尚、養殖ブリの他、1年から2年物のハマチや、秋から漁獲される数㎏を超す大ブリでは、肥えた個体には寄生虫が居ないようだ。尚、この寄生虫は人体には危害はないそうだ。 |
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死なすと商品価値がない・活かす知恵を身に着けろ。 |
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釣り上げた鯛類やブリ、アジ、サバなど殆どの魚は、活魚での取り引きが基本だ。同じ魚が、死なすと三分の一の価格になってしまう。空気袋を潰す「フク取り」技術や「酸欠させない」工夫が肝心だ。 |
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魚の鮮度は、眼球と鰓を見ろ。 |
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水揚げした魚は鮮度が命だ「目玉は黒くて張りがあり、鰓は紅い」これが新鮮さの証となる。又、硬直したものは「活き〆が不十分」な魚だ。 |
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鰓は魚の急所・傷めると死ぬ。 |
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釣り上げた魚は慎重に扱いたい。特に、鰓は肺と同じ機能を持つから、鈎を外す際に少しでも傷めると、その魚は死んでしまう。 |
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赤ヤガラは頭を捨てるな。 |
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赤ヤガラは、冬季にだけ深海から沿岸に寄る超高級魚だ。嘴が長く頭部と合わせると体長の半分もある。嘴や頭部分は空洞のようだが、筒切りにして「スープや潮汁」にすると内部にある髄液の味が出て、実に「いい味」に仕上がる。 |
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マトウダイとウマズラハギは肝が旨い。 |
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新鮮なマトウダイやウマズラハギの肝は大きくて実に旨い。肝を他の内臓と共に捨てるのは勿体ないから他魚の料理に利用したい。 |
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小骨の多いエソでも・臍から下には小骨が少ない。 |
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外道として嫌われ者のエソも「すりみ」の原料としては高級品だ。白身で肉質はいいが小骨が多いのが欠点のこの魚も、臍(肛門)より後ろの部分は小骨が少なく、フライや唐揚げすると食味は上品で結構いける。 |
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正月魚・盆魚・祭り魚・祝い魚。 |
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自家用や贈答品として、盆正月、お祭り、祝い事に利用する魚。大真鯛や大ブリなどが好まれる。 |
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旬の魚を食え・旬を外れた魚は旨くない。 |
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各魚には脂が乗った旬がある。概、産卵直後の魚は痩せていて旨くないものだ。 |
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豊漁で安価な魚でも・魚の味は変わらない。 |
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一本釣り漁師は、豊漁で安価となった魚は狙わない。しかし、大漁で安価となった魚の味が「まずい」訳ではない。 |
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安価な魚を時間をかけて獲るな。 |
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各魚には食味のいい「旬」がある。旬を外れた魚は漁価が安くて漁獲価値はない。特に夏のブリは安価だ。アジやイサキ釣り時など、細いハリス仕掛けにブリが掛かった場合、時間を浪費して獲り込むよりも、意識して鈎を持ち去らせるのが漁師の釣りだ。時は金なり。 |
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網構えれば魚は逃げる。 |
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相手の魚も兵である。焦って物事を成就させようとしても思うようにならないものだ。 |
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ドロボーを見つけて縄をなう。 |
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急に新顔の来流魚があった際に「慌てて仕掛けを調達する」これでは手遅れであり、十分な釣果を得ることはできない。各魚の来流時季にはサイクルがあるから、事前に仕掛けを準備しておくことが大漁を呼ぶ。 |
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夏蜷を食うな。 |
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春先には「潮干狩り」をして二枚貝や蜷を採って食する。浦前の伝承では「夏蜷(なつにな)は食うな」と言われている。暖かくなると毒性プランクトンによる「貝毒」が発生することがある。又、冷蔵庫や氷が無かった頃、高温では、傷付けた貝類は短時間で腐敗が進み、食中毒を起こすことが多かった。 |
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イワガキは肉切りナイフで貝柱を切れ。 |
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ナツガキやクツガキとも称されるイワガキは、大きくて殻が厚く調理が大変だ。穂先を少しハンマーで割り、この隙間から肉切りナイフを入れて貝柱を切ると、殻が開くから、むき身や味付けの焼きガキも可能となる。 |
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苦いクロメも細切りすると旨くなる。 |
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潮流の速い岩礁地帯の浅場で育つクロメは、そのままで食したのでは、苦くて「食える海藻」ではない。しかし、斜めに交互に細切りしたものを味噌汁に入れたり「熱いご飯に乗せて」かき混ぜて醤油味で食すると、苦味は消えてしまい、茶色⇒緑色に変色し、トロロや納豆のような粘りも出て食材としては絶品だ。「水温が低く新芽が育つ冬季だけ」の食材である。 |
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サメは賢い・退治すると寄り付かない。 |
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[水の子島]「保戸島沖、北ヶ瀬」「速吸海峡」などの好漁場には、例年盆過ぎになると多い魚群を狙ってサメの群が居付く。サメは釣り上げる途中の高級魚を食い盗って行く憎まれ物だ。 被害が甚大になると[水の子島]では、漁師達が共同で「フカ退治」なる行事を行い、釣り揚げた大サメを細切れにして漁場一帯に撒く。すると、賢いサメ達は「身の危険を感じ」て、一潮(半月)程は姿を消すと言う。 |
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エラ穴が左右にあるのがサメ類・下腹にあればエイ類。 | |
サメ類とエイ類は、その分類が難しい・・・複数のエラ穴が左右に見えるのはサメ類・白い下腹にあるのがエイ類だ。 |
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「ひぼかす(焼く)」とうまいぞ。 |
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当地では、魚を短期間保存する為に焼き魚にする事を「ひぼかす」と表現する。※ 火化かす? 冷蔵庫の無かった昔は、魚を貯蔵するには、塩蔵と干物以外に方法はなかった。小骨が多くて乾きにくい雑魚は、焚き火や炭火で焼き魚にし、魚の身を解してから「天日干し」して保存していた。※ 解した焼き魚の身は「フライパンで水分を飛ばす」と手っ取り早く、冷蔵庫での保存期間も長い。 一連の操作で「燻製的な効果」が出るのか{一味違う}食味となって舌を潤す。歯答えも良く、魚独特の生臭い匂いも消えるから味噌汁や酢の物のダシには欠かせない。 アジやサバ等の青魚を「ひぼかす」のもいいが、ホゴ、メバル、イサキ、チダイなどの白身魚であれば尚いい。又、外道として嫌われるべラやアイナメ、メジナもいい味がでる。特にエソやトラハゼ、タチウオは絶品だ。但し、鮮度がいいことが絶対条件であるのは言うまでもない。※小骨は丁寧に取り去ること。 “釣りを愛する諸君、冷蔵庫での長期貯蔵も効くので一度お試しあれ |
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「追い波」が大きいと船速が増し、船首が下向きで舵不能。 |
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追い波は怖い。後ろから追われるから船速が増して、次の大波が来た時に船首が下向きになって海中に突っ込んでしまう。又、船の傾斜とスクリュー墳流水の低下で操舵不能に陥る。 |
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「曳き波」が大きい船は燃費が悪い。 |
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船が航行する際には「曳き波」が立つ。海水の抵抗が大きい程「曳き波」が大きい。 | |
船に不必要な物を乗せるな・走りが悪い。 |
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船が重いと沈下して抵抗が増すから走りが悪く燃費が増す。不必要な物は陸揚げしておくことだ。 |
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活け間を開けたまま走るな。 |
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活魚船倉に海水があると「浮上容積」が減る。使用しない活け間は、常に排水しておくのが基本。 |
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エンジンオイルは早目に交換せよ。 |
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エンジンオイルはエンジンの命だ。頻繁にオイル量や汚れ具合を点検して適宜交換することだ。又、オイルフイルターも適宜交換するがいい。 |
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エンジンオイルは多過ぎない量を入れよ。 |
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エンジンオイルの量は多過ぎても少なくてもいけない。オイルが多過ぎると排気口から白煙を吐く。クランクが重くなって高温になるなどの悪影響があると聞く。 |
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冷却水の点検はエンジンが冷えてから。 |
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魚船のヂーゼルエンジンは、冷却水を海水の循環で冷やす方式だ。エンジンが熱を持っている時にキャップを開けると蒸気が噴き出して危険だ |
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真鍮金具は赤く変色したら脆い。 |
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循環水や水温計など、船外の海水と繋がる真鍮金具は「赤く変色」すると脆くなっている。「割れたり折れたり」すれば大浸水だ。 |
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防食亜鉛は小さくなる前に交換せよ。 |
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推進器やシャフト、舵などは電飾被害が著しい。防食亜鉛の取り付けは欠かせない。 |
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防食亜鉛には船底塗料を塗るな。 |
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防食亜鉛の取り付け位置は、推進器やシャフトや舵などであるが、防食亜鉛の取り付け位置や防食亜鉛にペンキや船底塗料を塗ってはならない。海水との通電がないと、その役目を果たせない。 |
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秋サバほど旨い魚は他にはない。 |
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秋季に一本釣りで獲るマサバは、脂がのっており絶品だ。特に刺身で食するとマグロのトロにも劣らぬ「独特の旨さ」をもっている。このサバの漁場は「関サバ、関アジの釣れる」豊後水道北部の速吸海峡付近だ。 |
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活きサバでも、身肉がピンクのサバは食うな。 | |
鮮度のいいサバの身肉には目立つ色は無い。生きたマサバであっても身肉がピンクのサバを食べると酷い食中毒を起こす・・・これ、本当・・・ |
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活きサバの刺身は他所では食うな。 |
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当地のマサバ漁場は「関アジ、関サバ」の釣れる豊後水道北部である。マサバの刺身は最高のご馳走であり、多く食しても「食当たり」することは皆無だ。しかし、マグロ漁師の話では、他の漁場では獲れたばかりの「活きサバ」でも、刺身で食すると「当たる」ことが多いと言う。 |
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大きな漁船を持った漁師は漁が上手。 |
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一本釣り漁師が狙う魚は高価な高級魚だ。小船では、活魚船倉が狭くて漁獲した魚を死なして売り物にならない。頻繁に大漁する漁師は収入もあり、広範囲の漁場を網羅する為に、活魚船倉の容量が大きくて設備の整った大型漁船を求めることになる。 |
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{肉質のいい魚}を{一本釣り}で捕って{活き〆}すると味が違う。 |
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「一本釣り」で釣り上げた「関アジ、関サバ」は確かに美味い。当地、津久見市の半島部は、漁場が「関アジ、関サバ」の釣れる「豊後水道北部」であり、昔から一本釣りで釣り揚げた「大アジ、大サバ」を「釣りアジ、釣りサバ」と称して珍重してきた。しかし、同一漁場に於いて「巻き網」で捕獲した、同一の活きている「大アジ、大サバ」は、その食味が数段落ちるから「網もの」と呼ばれて敬遠され、浜価も半値以下が通り相場だ。 同じ、活きた魚を〆るのに、何故、これ程「味に格差がでる」のか、長い間疑問であったが、その答は、漁師の話や活魚仲買人による活魚の扱い方を観察するうちに出てきた。 関アジ、関サバの他、真鯛やブリ等の全ての大魚は、体内全体に広がる遊泳筋肉内に、旨味となる「しもふり」状の脂肪分を蓄積していると言う。この「しもふり脂肪分」は、天敵からの逃避時や採餌の際に瞬間的なエネルギーの役目をすると言う。漁師が「しもふり脂肪分は爆薬だ」と表現する程だ。 一本釣りで漁獲する「関アジ、関サバ」は、釣り上げる時間が僅かに数分間であり、活魚船倉は、暗くて適度に狭いから、多少のストレスがあってもエネルギーを使用しない。その上、過密で酸欠状態になる程に釣り揚げることもない。 一方、網漁で捕る魚は、網で包囲してから水揚げするまでの間、時間単位の過度のストレスを与える上に、網を寄せた際には、逃げようとした魚の大群が網底で超過密状態となって酸欠状態が続く。一次的であっても、酸欠状態となった魚体には血液が充分な酸素を運んでなく、抹消部分が壊死して「スレ」ている固体もあるほどだ。 このように、ストレスと酸欠で弱った個体は、例え活きていても肉質は悪くなっており、完全に「しもふりの脂肪分」が飛んで無くなっていると言う。さらに、大量漁獲した魚を運搬船の活魚船倉に過密に入れたり「チョウチン」と呼ばれる運搬具を浮かべ、漁場から漁船で牽引して、数時間もの時間を費やし自港に持ち帰ることになる。もう最悪だ。 |
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活き〆とは |
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活きた魚の急所を刺して、同時に血液を抜き、手早く「潮氷した海水に浸して」魚体が冷えるまで待つ。これが基本であり、一連の動作を、漁師は{活き〆}と表現する。 ※ 容器に、多量(海水と同量程度)の「かち割り氷」を入れて、事前に冷却準備したものを漁師は「潮氷」と称する。 「〆ると同時に」に「血抜き」して「直ちに潮氷」に入れた魚と、〆てから僅か数分後に冷蔵庫に入れた魚を比較すると、「別の魚ではないか」と思える程に「色合いや食味」が違うものだ。全く硬直もなく、特に「日持ち」の差は歴然だ。 魚を水揚げして〆る際にも「しもふりの脂肪分」を飛ばさないように、細心の注意が必要だ。〆る魚を、生け簀や活魚船倉内で過度に追い回したり、手玉ですくい揚げた際に、船上で「バタバタ」させるような過度のストレスを与えると、僅か数十秒単位の短時間で「しもふり脂肪分」を爆発的に消費してしまう。その際、魚の体温が急上昇して肉質も悪くなってしまう。当然ながら、食味も味気無いものとなってしまう。 これを防ぐには、魚を同時に多く水揚げせず、1匹ずつ「そっと」手玉で、すくい揚げて、スポンジマットに乗せて速やかに〆る。これが基本。 〆ると同時に血液を抜くことで、魚の臭みを取り除き、鮮度と肉質を確保することができる。尚、手早く血液を抜くには、包丁で延髄を切ると出血するが、大アジや小鯛はエラの奥にある「幕」を手鉤や掻っ切ると血液が噴出するものだ。 〆た魚は、体温が急上昇しているので、そのまま放置すると「僅か数分間」で鮮度や肉質が極端に落ちる。これを防ぐには「〆ると同時に血抜き操作を終え」直ちに「潮氷に入れる」ことだ。※ 活魚業者が潮氷に入れる氷の温度は零下4度である 潮氷に入れておく時間であるが、アジ、サバクラスで30分、ハマチ、中鯛で1時間、 ブリ、大真鯛ではそれ以上の時間はほしい。尚、この間、氷が溶けないことが前提条件となる。活き〆が効いて冷え切った魚体は、硬直せずに数日間は新鮮に保てるものだ 潮氷して冷えた魚は、発泡スチロールの魚箱に入れて、魚体と氷が触れないようにパッケージして、その上にかち割氷を、たっぷりと入れておく。これで完璧だ。 ※ 近年、大型魚には、背骨の中にステン針金を通して延髄内を破壊した上で潮氷に入 れて鮮度を保つ方法が主体となった。 活魚店や料理屋の生け簀の魚は、漁獲されてから日時が経過しているだけではない。この間、長距離輸送時の酸欠や、数度にわたる「移し替え」など、想像を絶する過度のストレスを受けており、「しもふり」が完全に飛んでしまい「活きているだけの魚」となっているから、旨味が無くて、活き〆した鮮魚の足元にも及ばない。 |
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