領土問題を棚上げして経済的利益を得るのがロシアの思惑
そもそも“解決”とは何かについて、日露双方に大きな隔たりがある。
日本側の目的は、最終的には4島の返還だが、それが現実的でないことは外務省も理解しており、とりあえず「4島の帰属を日本とする」ことを考えている。そこで外務省としては現在、まず第一歩として「2島の返還(もしくは帰属変更)と、残り2島の継続協議」を目標としている。
それが実現可能と踏んでいるのは、「ロシアは日本の4島一括返還要求には応じないが、それを当面引っ込めて、2島の継続協議までこちらが妥協すれば、合意するはず」との読みがあるからだ。
しかし、ロシア側にそれで何か利益があるのだろうか? 現状で4島はロシア側が実質的に支配しており、向こうにとっては現状維持でなんら問題がない。利益が見込めない合意をロシアが呑むと見るのは、単なる希望的観測でしかない。
ロシアが領土問題を動かす気がないことは、前述したような「結果的に、これまでまったく妥協していない」ことと、「具体的な妥協を約束するいかなる言質も、注意深く避けている」ことでほぼ証明されているが、さらにそれを裏付ける状況証拠としては、「ロシア側には領土を返還する動機がない」ことも重要だ。
かつての冷戦初期、例えば日ソ共同宣言の頃ならば、旧ソ連には安全保障という利益があった。日ソ共同宣言の頃のソ連の目論見は、日ソ平和条約交渉によって、日米同盟を弱体化させることにあった。つまり、日米安保条約を破棄させ、在日米軍を撤退させるという、ソ連にとっての大きな利益である。
しかし、その後、日米同盟が崩れる可能性が考えられなくなった後は、ロシア側の利益は、経済的な利益しかない。ところが、それは実際のところ、平和条約がなくても可能だ。したがって、ロシア側とすれば、領土問題を実質的に棚上げし、それとは別のスキームで経済協力の道を開くことが“得”になる。それがロシア側にとっての“解決”にほかならない。
また、戦後間もない冷戦初期とは違い、北方領土にはすでに現地で生まれ育ったロシア国民が多数居住している。ロシアのナショナリズムは非常に強固なものがあり、そこでロシア政府が妥協する余地はまずない。
したがって、ロシア側としては、日本と完全に決裂しないために領土問題では口当たりのいい無難な表現でどこまでも先送りにし、その間隙に経済関係を深めていきたいということになる。実際、日本側の領土問題進展の期待とは裏腹に、両国の関係はその方向で話が進んでいる。
たとえ小さな2島でも、ロシアが手放すなどということはないだろう。今回のウクライナ危機で明らかになったのは、ロシアは自分たちの“縄張り”は絶対に手放さないということにほかならない。