遠藤が突き落としで大砂嵐を破る=ボディメーカーコロシアム
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◇春場所<8日目>
遠藤(23)=追手風=が平幕で唯一全勝だった大砂嵐(22)=大嶽=を突き落として4連勝。星を4勝4敗の五分に戻した。両横綱はともに8連勝。白鵬(29)=宮城野=は高安を上手投げで仕留め、自ら持つストレート給金直しの最多記録(1場所15日制定着後)を32度に伸ばした。全勝ターンは最多の7場所連続で自身2度目。日馬富士(29)=伊勢浜=は上手投げで魁聖を下した。綱とりの大関鶴竜は関脇豪栄道との1敗対決を突き出しで制した。かど番大関の稀勢の里は6勝目を挙げ、大関琴奨菊は3敗目。
「土俵際のマジシャン」とでも言おうか。俵まで押し込まれた遠藤は左足一本になりながらも、体の柔らかさを生かして上体をひねり、右から突き落とした。昨年名古屋場所で同時に新十両昇進した大砂嵐の全勝を止めても、クールフェースは崩さなかった。
「我慢して攻めようかな、と思った。そういう(先に落ちない)気持ちじゃなくて、中途半端なことをするのではなく、思い切っていこうと。自分が残っているな、という感覚はありました」
思い出さずにはいられないのが、初場所4日目の宝富士戦だ。俵にかかった左足かかとを浮かせて逆転の下手投げで勝利した。その時のように、この日も持ち前の体の柔らかさを見せつけた。「ヤバい、という感覚はなかったか」と聞かれると「そうですね」。表情だけでなくハートも冷静なのには驚くばかりだ。
遠藤の代名詞とも言えるきれいな四股も体の柔らかさがあるからこそ。小1の時に地元・石川県穴水町で相撲を始めたころから、穴水相撲教室の恩師・上野勝彦さんに付き添ってもらって1日200回も四股を踏んだ。強くなるために最も高いところで3秒止める練習もした。徹底的に基本をたたき込まれたことで柔軟性を手に入れたのだ。
力になる出来事もあった。レスリング女子で五輪3連覇中の吉田沙保里が父でコーチの栄勝さんを突然亡くしながらも、ワールドカップに出場したことをニュースで知った。「そういう状況の中で試合に出るのは精神的にすごい」と遠藤。強靱(きょうじん)な精神力を知って気持ちを奮い立たせている。
4勝4敗の五分まで巻き返してきたが、「特に。まだ中日なので」と遠藤。9日目は地元・大阪出身の豪栄道と激突する。「特別な意識はありません」とサラリと言い残して帰途についた。ホープの進撃がここから始まる。 (永井響太)
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