タモリさん語る「輪」広がる 75年の京大学園祭、爆笑の渦
軽妙なトークで万人に親しまれる半面、タブーを恐れない毒気のある芸風を併せ持つタレント、タモリさん(68)。司会を務める長寿番組「笑っていいとも!」が3月末で終了するのを機に、トレードマークのサングラスで「昼の顔」となる以前の芸人としての顔に注目が集まっている。本格デビュー前、京都大の学園祭で数々の「禁断のネタ」を披露した浅からぬ縁がある京都で、関連イベントも開かれている。
兵庫県西宮市の森英貴さん(60)が40年来のファンになったのは同志社大4年の時だ。京都大の学園祭で見たタモリさんの毒気にすっかり当てられた。
その時、森さんが録音していたテープを聴かせてもらった。
時は1975年秋。まだ無名だったタモリさんが奇抜な即興芸を次々と繰り出す。静かだった会場が爆笑の渦に。「みんな、あっけにとられましたよ」
デビュー前後の逸話は数知れない。福岡のホテルで、まったく面識のないジャズピアニスト山下洋輔さんらの宴会場に「乱入」し、デタラメな外国語を操る芸などで場を沸かせた。才能を見込んだ山下さんらに招かれて上京。漫画家赤塚不二夫さんや作家筒井康隆さんが集う新宿のバーで、限られた人だけを相手にネタを披露し、知る人ぞ知る「密室芸」と呼ばれていた。
京都大を訪れたのはまさにその頃。森さんは一緒に出演した筒井さんが目当てで友人とともに出向き、会場の音声を録音していた。テープでは、開演から約20分後に「九州の大天才」としてタモリさんが紹介される。開口一番「久しぶりの母校であります」と、観客を戸惑わせた。
デタラメな中国語による北京放送や、中国の国連加盟時の各国代表の物まねなどが次々と繰り出され、ネタが笑い声でかき消されるほど盛り上がる。日本各地を訪ね歩くNHKの番組「新日本紀行」のパロディーで農村の生活ぶりをちゃかしたかと思えば、1人4役の「4カ国語マージャン」で互いにののしり合いつつ、ベトナム戦争への風刺を込める。
「京大ということでブラックユーモアに対して自由な考えを持った方ばかりだと思う」と前置きすると、タブーに切り込む舌鋒(ぜっぽう)はさらにエスカレート。当時大きな国際問題になっていた事件を題材に架空の取り調べの様子を演じ、約40分にわたる舞台を終えた。
タモリさん初のレギュラーテレビ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」の放映開始は76年、「いいとも!」は82年。京都大の録音テープは本格デビュー前夜の初期タモリさんの貴重な記録だ。あらためて聴き直した森さんは「当時でもテレビでは絶対にできない。内輪だけで許される『密室芸』だからこそ」と感慨深げだった。
【 2014年03月16日 15時51分 】