将棋 電王戦 第1局。 習甦(しゅうそ)v.s. 菅井五段の対局は、前者の勝ち。
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棋譜はこちら。
→ http://hantosidegodan.seesaa.net/article/391558072.html
私の分析を期待している人も多いだろうから、以下に書く。
( ※ 素人のたわごとなどは聞きたくない、と思う人は、ここでお帰りください。以下は素人の分析ですからね。お断りしておきます。)
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私の分析では、敗着は 53手目の▲4六飛である。この手の直後に、△5五銀を打たれて、中央を制圧された。これ以後はもう、どうやっても勝ち目はない。
では、どうすればよかったか? △5五銀を打たれる前に、▲5六歩を打つべきだった。これによって、先手が中央を制圧できた。この▲5六歩のあとで▲4六飛と走ればよかった。
なお、51手目の▲6五歩も悪手である。自陣の防御の方が敵陣の攻撃より弱いのに、こんなところで角道を通したら、自陣が損するに決まっている。振り飛車の本質に反する。
だから、51手目の▲6五歩で▲5六歩を打つのが最善手だった。形勢判断で言えば、▲6五歩で形勢の点数は大幅に悪化したと思える。そして 53手目の▲4六飛では、完全に敗着になった、ということだろう。
53手目の▲4六飛で決定的に形勢を損ねたのだから、あとはもう何をどうやっても勝てるはずがない。……これが私の分析だ。
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より根源的には、人間側が振り飛車の本質を理解できていないことが敗因だ。
そもそも振り飛車とは何か? また、居飛車とは何か? 次のことだ。
居飛車とは、飛車道と角道の交点が、2二の位置にある。このことで、敵の2二の位置の近辺に集中攻撃をかける、攻撃的な戦法。
振り飛車とは、飛車道と角道の交点が、左辺の位置にある。飛車の位置しだいで、7七か、6六か、5五の位置にある。したがって、「敵の攻撃を自陣の低い位置で受け止める」という、防御的な戦法である。
以上が本質だ。
では、今回、人間側はどうしたか?
最初は、5八に飛車があった。次に、7八に飛車があった。このように飛車が左右に動くのは、機敏な動きなので、よい戦法である。敵に焦点を定めさせない戦法だ。
ところが、である。そのあと、4八に飛車が来た。これは「玉飛接近」の悪形である。ここでもう本質的に作戦が狂い始めている。
それを見たコンピュータは、敵のミスを咎めようとして、▲4六歩を打った。これは釣りである。この釣りにまんまと食らいついた人間が▲4六飛と走り込んで、釣られてしまった。以下、完敗。
それでもまあ、釣られたあとは、▲4八飛と戻れば、致命的ではなかったかもしれない。しかし▲3六飛と横に逃げたら、この飛車は捕獲されたも同然だ。ここで将棋は終わっている。この時点で投了してもよかった。あとは無意味な戦いである。このあとは、観客へのサービスで手を続けているだけであって、将棋は▲3六飛で終わっている。
振り飛車というのは、飛車が左辺にあって、敵の攻撃を受け止める手である。その飛車が、右辺に行って、攻撃をしようとしたあげく、捕獲されまいとして逃げ回るだけ。これじゃもう、将棋の体をなしていない。
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コンピュータは「将棋の本質とは何か」を考えさせてくれる。本質も考えずに、目先の最善手という細かなことばかりを考えていると、大局的にはコンピュータに負けてしまうのである。
将棋では、目先の手よりも大局観の方が大切だ、ということをコンピュータは教えてくれる。昨年に続いて、コンピュータは将棋の本質を人間に教えてくれるのである。
【 関連項目 】
→ 昨年の電王戦の記事
一般的に言えば、人間側はコマの損得ばかりを考えている。一方、コンピュータの側は、コマを与えて、大局的な形勢を高めようとする。
こういうふうに戦略の差があるので、今のままでは人間側はコンピュータに勝てそうにない。「肉を斬らせて骨を断つ」という剣豪であるコンピュータに対して、肉を斬ろうとしてばかりいるのだから、「肉を斬って骨を切られる」結果になるのは当然だろう。
管理人さんの興味の幅の広さには感服したよ。
というか私はたぶん観ません
その後の変化(分析結果)を教えていただけますか?