独立行政法人理化学研究所元主任研究員 和田達夫が平成21年9月8日に背任罪で逮捕され、9月29日に起訴された事件について、調査委員会の
調査結果がまとまりましたので報告します。
事件の概要
当事者など
当事者 |
和田 達夫(元超分子科学研究室主任研究員)
平成21年9月29日懲戒解雇処分
嘉藤 悦男(秋葉産業株式会社代表取締役)
|
罪名 |
背任罪(刑法第247条、第60条(共同正犯)、第65条1項(身分犯の共犯)(嘉藤について)) |
逮捕・起訴 |
逮捕 平成21年9月8日(火)
起訴 同 9月29日(火) |
判決 |
平成22年1月12日(月)
和田 達夫 懲役2年6月、執行猶予3年
嘉藤 悦男 懲役2年、執行猶予3年
(両名とも、控訴提起期間内に控訴せず、刑確定) |
概要
秋葉産業株式会社(代表取締役:嘉藤悦男)が和田のために肩代わりして支払った和田の飲食代金などを、独立行政法人理化学研究所(以下、
「理研」)の資金から回収しようと考え、和田と嘉藤が共謀の上、和田および同社の利益を図る目的で、和田が、平成16年11月ころから平成20年5
月ころまでの間、21回にわたり架空取引を行い、理研に1,172万2,410円の財産上の損害を加えたものである。
調査委員会による調査
1.調査委員会の設置
平成21年9月8日(火)、理事長の下に総括担当理事を委員長とする調査委員会を設置した(別紙)。
2.調査結果
- 本事案に係る事実関係について
- 21件の架空取引については、物品購入要求、発注から納品、検収までを和田が一人で処理しており、発注時や納品時などの各段階におけるチ
ェック体制が十分でなく、業務フローの不備と権限付与の不備があった。
- 上記21件のほかに、背任罪としては時効が成立している18件、432万750円の架空取引があったことが明らかになった。
- 21件の架空取引のうち10件については、和田が主宰していた研究室の研究員に担当者として名前を貸してほしいと依頼し、当該研究員がこれ
に応じていたこと、この研究員は単に名前を貸しただけであって、架空取引には関与していないことが明らかとなった。
- 類似事案の調査結果について
- 理研と雇用関係にある職員および労働者派遣契約により理研で勤務する人材派遣職員の計4,794名を対象に書面調査を実施した。さらに、100
万円未満の物品についての発注権限、検収権限を持っている研究リーダーら365名から聴き取りなどによる調査を実施した。
- その結果、架空取引、預け金、プール金、付回し、接待といった事例は確認されなかったが、6名の研究員(事案としては2件、6名のうち2名
はすでに転出)が3月に契約をしていながら、年度を越して消耗品などを納品させるという不適切な研究費使用をしていた事例が明らかになった。
再発防止策
- 研究費の不正使用を徹底的に排除するため、コンプライアンス意識の醸成を図る研修などの強化
- 物品購入要求、発注から納品、検収までの業務フローの見直し
- 発注権限の見直し
100万円未満の消耗品などに係る発注権限、納品確認・検収権限は研究リーダーに付与していたが、平成19年度以降、
納品確認センターを設置し、事務部門が納品確認を実施することにより、内部抑止力としてきた。今回、発注権限も事務部門に移管することによ
り、発注権限と納品確認、検収権限の分離を徹底し、さらなる内部抑止力の強化を図る。
- 納品確認の徹底と検収方法の見直し
納品確認センターにおける納品書と納品物の照合を改め、注文書と納品書、納品物の3つの照合を行う。
- 単価契約の促進
- 予算執行に関する立ち入り検査の強化および外部資金執行管理体制の充実
- 関連する予算執行方法の見直し
- 役職員による立替金支払の見直し
- 旅行代理店の活用と出張手続きの電子化
※ 報告書全文はこちらを参照ください。
新たに判明した事案の措置
- 以下の者を口頭による厳重注意処分とした。
- 不適切な研究費使用を行った現職の4名の研究員
- 和田が行った架空取引において担当者として名前を貸した1名の研究員
- 背任罪としては時効が成立している18件、432万円余りの架空取引について、和田、嘉藤両名に対する損害賠償請求を行うこととしている。