2014.3.15 SAT
TEXT AND PHOTOGRAPHS BY SANAE AKIYAMA
プログラミングコンテストの会場に集結する参加者たち。
カタカタカタカタ……。2月10日、寒さの厳しい米ボストン・マサチューセッツ工科大学(MIT)の一室では、キーボードを打つ音だけが鳴り響く。ここは日米の若きエンジニアがしのぎを削る、プログラミングコンテストの会場だ。誰も笑わず、会話もない。コンピューターの画面を見つめる表情は、空気に張りつめる緊張感を表すかのように、真剣そのものだ。
次世代を担う若者たちに、世界最高ランクのエンジニアとしての自覚を促し、彼らに機会の提供と支援をするべく開催されたイヴェント。それが日本を代表する企業であるリクルートがグループ会社のIndeedと共同で開催した、プログラミングコンテストである。
参加資格は学生であること。参加者は、日本からが22名、MIT36名、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校26名、テキサス大学オースティン校からは53名で、トータルで137名だ。日本勢はMITの生徒たちと共にオンサイトで競技を行い、イリノイ大学とテキサス大学の参加者は、オンラインで繋がった会場で同じ課題を競った。
アップルのスティーブ・ジョブズや、グーグルのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、そしてフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ。彼らのサーヴィスは世界を改革の渦に巻き込み、いまわれわれは、彼らのプロダクトを基盤に生活をしている。エンジニア出身の起業家が成功している事例は、米国では数多く存在する。それと比べ、日本ではどうか。日本のエンジニアは、世界でもトップクラスの技術力があると評されるにも関わらず、米国のような企業を目にする機会が少ないのはなぜだろう。日本にも、そのような才能を持つエンジニアがいるはずなのだ。
以前、リクルートワークス研究所が行った研究では、ITエンジニアが持つ優れた才能を開花させるには、いくつかの環境が必要だという結果が導き出された。ものごとに没頭しやすい気質を持ち、常に新たな技術に貪欲であるエンジニアは、日本に古くから根付く仕事環境では、存分に才能を発揮できない可能性がある。
「自ら学んで仕事にのめり込む」、「世の中に貢献したいという信念がある」、「数多くいるエンジニアの中で、自分のもたらす価値とはなにを考え、他人との差別化をはかりたい」。エンジニアが持つこの3つのスタンスは、「優秀なエンジニア同士のネットワークがある」、「システムの中で核の部分にいると感じられる」、「どのような経験でも評価される」という、3つの環境要因とかけ合わさることで、優れた才能を引き出すことができるのだという。
日本にもこのようなスタンスを持つエンジニアは数多く存在するが、環境面のサポートが十分ではないことが多い。日本の若きエンジニアには、これらがしっかりと整備されているアメリカに赴き、実際にエンジニアの現場を肌で感じてもらうことで、いずれ世界を見据える一流のエンジニアになってもらいたい、というのがリクルートのねらいだ。日本での才能の開花を待つには、“機会”という種を蒔いておく必要がある。その一環として設けられたのが、ボストンMITでのプログラミングコンテストであり、テキサス州オースティンにあるIndeedへのフィールド・トリップなのだ。
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