金曜日にインターナショナル・フィナンシャル・レビュー(IFR)が「アリババのIPOはクレディスイスとモルガンスタンレーが仕切ることになる」と報道し、ウォール街の話題になりました。
「アバター作戦」という暗号名で呼ばれているこの上場計画は、まだ幹事証券、上場時期、そして上場市場(香港になるか、それとも米国になるか)すら決まっていません。
しかし売出し総額160億ドルとも言われるこのIPOを誰が仕切るかで、リーグテーブル(=ランキングのこと)が大きく変わってきます。
因みに160億ドルはフェイスブックのIPOでの調達金額とほぼ同じです。

また上場時の時価総額としてはアリババは過去最大級となります。

クレディスイスは昔からアリババと親密な幹事関係がありますが、引受業者としての実力は、ハッキリ言ってB級です。モルスタがフェイスブックのIPOで惨めなズッコケを演じたことを思い出せば、この大事な檜舞台で実績に乏しいクレディスイスを起用するのは(どんなものかな?)と僕的には首をかしげざるを得ません。
上場市場が香港と米国の間で揺れている理由は、アリババがパートナーシップの企業形態を取っており、香港の上場ルールでは認められていないからです。その点、アメリカではパートナーシップの上場例は沢山あります。
今回、香港が「一株につき投票権は一票」という大原則を曲げなかったのは、一般投資家の立場からすれば称賛に値します。むしろデュアル・ストラクチャー(A株、B株のように議決権で差をつけた複数の種類の株式を出す事)を容認している米国の取引所の方が、やっていることが「ずるい」という考え方もできるわけです。
アリババは中国特有のビジネス習慣に基づいたビジネス・モデルを採用しています。中国の商人はミドルマン(仲に立つ人)に口銭を払うのを嫌がるので、アリババは売り手と買い手をマッチングする場合でもマージンをアリババに払う事はしません。また売り手の商品をアリババが在庫としてキャリー(=つまり買い取り)し、小売値を嵩上げして売ることもしません。
むしろアリババは売り手の商品を宣伝することで広告料金を得るという課金の仕方をします。
このためアリババの売上高は実際の「扱い高」よりずっと過小に報告されているわけです。
IPOでピア・コンパリソン(=比較対象との対比)をする場合、単純にアマゾンの売り上げ規模とアリババの売り上げ規模を比較できないのは、このためです。
零細な売り手は決済に際して信用できない場合があるので、アリババはアリペイ(Alipay)というユニークな決済システムを構築し、安心して買い手が商取引できるような工夫をしました。この「信頼できる決済方法」をアリババが有しているということは、同社の絶大な競争優位だし、モノの取引だけに限定せず、より広い金融取引へ発展するプラットフォームと成り得ます。
ただアリペイがバーチャルなクレジットカードを発行しはじめると、既存の金融機関の領域を侵食することにもなるので、中国政府はこれには慎重です。
このように中国のeコマースの「土管部分」を司っているアリババが、上場市場としてアメリカを選ぶということは、米国の証券界からすれば「鴨が葱を背負ってやってきた」ようなラッキーであり、なるべく高いバリュエーションでアリババがIPOできるために「ネット株や中国関連ADRの悪口は一切言ってはいけない」緘口令がウォール街の証券会社に敷かれているわけです。
「アバター作戦」という暗号名で呼ばれているこの上場計画は、まだ幹事証券、上場時期、そして上場市場(香港になるか、それとも米国になるか)すら決まっていません。
しかし売出し総額160億ドルとも言われるこのIPOを誰が仕切るかで、リーグテーブル(=ランキングのこと)が大きく変わってきます。
因みに160億ドルはフェイスブックのIPOでの調達金額とほぼ同じです。
また上場時の時価総額としてはアリババは過去最大級となります。
クレディスイスは昔からアリババと親密な幹事関係がありますが、引受業者としての実力は、ハッキリ言ってB級です。モルスタがフェイスブックのIPOで惨めなズッコケを演じたことを思い出せば、この大事な檜舞台で実績に乏しいクレディスイスを起用するのは(どんなものかな?)と僕的には首をかしげざるを得ません。
上場市場が香港と米国の間で揺れている理由は、アリババがパートナーシップの企業形態を取っており、香港の上場ルールでは認められていないからです。その点、アメリカではパートナーシップの上場例は沢山あります。
今回、香港が「一株につき投票権は一票」という大原則を曲げなかったのは、一般投資家の立場からすれば称賛に値します。むしろデュアル・ストラクチャー(A株、B株のように議決権で差をつけた複数の種類の株式を出す事)を容認している米国の取引所の方が、やっていることが「ずるい」という考え方もできるわけです。
アリババは中国特有のビジネス習慣に基づいたビジネス・モデルを採用しています。中国の商人はミドルマン(仲に立つ人)に口銭を払うのを嫌がるので、アリババは売り手と買い手をマッチングする場合でもマージンをアリババに払う事はしません。また売り手の商品をアリババが在庫としてキャリー(=つまり買い取り)し、小売値を嵩上げして売ることもしません。
むしろアリババは売り手の商品を宣伝することで広告料金を得るという課金の仕方をします。
このためアリババの売上高は実際の「扱い高」よりずっと過小に報告されているわけです。
IPOでピア・コンパリソン(=比較対象との対比)をする場合、単純にアマゾンの売り上げ規模とアリババの売り上げ規模を比較できないのは、このためです。
零細な売り手は決済に際して信用できない場合があるので、アリババはアリペイ(Alipay)というユニークな決済システムを構築し、安心して買い手が商取引できるような工夫をしました。この「信頼できる決済方法」をアリババが有しているということは、同社の絶大な競争優位だし、モノの取引だけに限定せず、より広い金融取引へ発展するプラットフォームと成り得ます。
ただアリペイがバーチャルなクレジットカードを発行しはじめると、既存の金融機関の領域を侵食することにもなるので、中国政府はこれには慎重です。
このように中国のeコマースの「土管部分」を司っているアリババが、上場市場としてアメリカを選ぶということは、米国の証券界からすれば「鴨が葱を背負ってやってきた」ようなラッキーであり、なるべく高いバリュエーションでアリババがIPOできるために「ネット株や中国関連ADRの悪口は一切言ってはいけない」緘口令がウォール街の証券会社に敷かれているわけです。