ウクライナ:住民投票…クリミア市民の思いは? 深い溝
毎日新聞 2014年03月16日 06時00分
クリミアの住民たちは、どのような思いで住民投票を迎えようとしているのか。16日の住民投票について、ロシア系住民のイワン・ジトニュクさん(63)=クリミア将校連盟代表=と、先住民族クリミア・タタール人のレフィク・クルトセイトフさん(50)=クリミア工科教育大学助教授=に聞いた。【シンフェロポリで田中洋之】
◇「ようやく自分で将来を決めることができる」
◇ロシア系 ワン・ジトニュクさん
住民投票は歴史的な出来事だ。ようやく自分で将来を決めることができる。ソ連時代の1954年、クリミアがロシア共和国からウクライナ共和国に帰属替えされた時、住民の意見は聞かれなかった。ロシア系住民は母なる故郷のロシアに戻りたいと願っている。80%以上がロシア編入に賛成するだろう。首都キエフは過激派が権力を奪った。
独立は考えられない。クリミアより小さく人口が少ない独立国はあるが、ロシアと一緒にやっていくのが一番だ。クリミアでは年金はロシアの半分、ガソリンはロシアより20%高い。ロシアに入れば生活の水準が良くなる。(ロシア系住民の多い)ウクライナ東部や南部の州も住民が望むならクリミアに続けばいい。
プーチン露大統領は(ロシア系住民の)保護者だ。クリミアを受け入れてくれると信じている。(住民投票を違法として認めない)欧米諸国はロシアを恐れているだけだ。
◇「民族衝突に発展する可能性がある」
◇タタール人のレフィク・クルトセイトフさん
住民投票はボイコットする。ロシア系武装勢力に包囲された自治共和国議会が先住民族クリミア・タタール人を無視して決めたもので違法だ。ウクライナ憲法も地方自治体の住民投票を認めていない。多くのタタール人が棄権するだろう。
英スコットランドの独立を巡る住民投票(9月)は住民が長期間議論しているが、クリミアでは決定から10日後の実施で、議論そのものを拒否している。
ロシアはクリミアが編入を決めればタタール人に配慮するというが、ナンセンス。スターリン時代にタタール人を中央アジアに追放し故郷を荒廃させた。タタール人のクリミア帰還を認めてからも、ウクライナ領になったとの理由で何もしてこなかった。クリミアのロシア系住民は武装しタタール人に脅威を与えている。民族衝突に発展する可能性があり、極めて危険だ。