NOMO法の開発

BornとOppenheimerによって提案された電子と原子核の運動を分離して扱うBorn-Oppenheimer(BO)近似は,分子軌道(MO)法や密度汎関数理論(DFT)などの電子状態理論の基礎となっている。BO近似のもとでは,ある特定の原子核配置に対する電子波動関数は,電子Hamiltonianに対する時間に依存しないSchrödinger方程式を解くことで求めることができる。しかしBO近似では,ゼロ点振動・トンネル効果・共鳴・散乱・干渉など原子核の波動性に由来する現象の記述が困難である。この問題を解決するためnon-BO理論の開発に取り組んできた。我々の手法における重要な出発点は,原子核の1粒子軌道として核軌道(NO)を導入することである。
分割統治(DC)法による大規模系の電子状態計算

我々は,分割統治(DC)法に基づく高速な電子状態計算法として,DC-SCF(HF/DFT)法やDC-MP2法,DC-CCSD法に関する開発・報告を行ってきた。これらの手法では,まず全系をいくつかの重なりのない部分系に分割する。部分系の分子軌道(MO)を部分系自身(中央領域)の原子軌道(AO)とその周辺環境(バッファ領域)のAOを用いて構築し,これを用いて全系の密度行列や部分系の相関エネルギーの計算などを行うことで,計算コストを抑えている。これらの計算手法は,2009年1月から量子化学計算パッケージGAMESSの公開版に組み込まれており,誰でも使用できるようになっている。
エネルギー密度解析(EDA)の開発と応用

Energy density analysis (EDA)は,当研究室で開発された,電子状態理論計算により得られた全エネルギーを構成原子ごとに分割する解析手法である。本手法の開発によって,電子状態計算の結果から,より多くの化学的理解を得ることが可能となった。本手法と,分子動力学法や相互作用エネルギー分割法との組み合わせや,本手法の結合領域に対する拡張も行っている。
非経験的シミュレーションの高速化手法の開発

分子シミュレーションとして,分子動力学(MD)やモンテカルロ(MC)法が広く用いられてきた。さらに,これらの手法と非経験的(ab initio) MO/DFT計算を組み合わせた非経験的シミュレーションが行われて いる。AIMDシミュレーションは,ab initio計算のエネルギー勾配計算から求められる力場を用いてMD シミュレーションを行う方法であり,結合の生成・開裂を伴う化学反応ダイナミクスを追跡できるという特長を持つ。一方,AIMCシミュレーションは,ab initio計算によるエネルギーを基に,構造をランダムに発展させることにより,高精度な統計平均を得ることができる方法である。
しかし,いずれの手法も,ステップごとにab initio計算を必要とするために,計算コストが非常に大きいという欠点がある。その中でも,SCF計算がボトルネックとなっている。 このような連続した核座標変化を伴うシミュレーションの特徴を利用して,分子軌道予測法を提案し,SCF 計算の収束性の向上による高速化を行っている。
- その他,励起状態や超原子価結合,DFTなど様々な研究を行っています。これらのテーマに対する研究成果は論文,学会などで活発に発表されています。
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