(cache) 世界初 ナノ絆創膏の医用応用に成功―天然素材のため安全性が高く、術後癒着を大幅に低減―|Press Release|早稲田大学

世界初 ナノ絆創膏の医用応用に成功
―天然素材のため安全性が高く、術後癒着を大幅に低減―

Pressrelease
2009年7月7日


武岡教授
早稲田大学の研究グループ(理工学術院 藤枝俊宣助手、武岡真司教授ら)は、防衛医科大学校の研究グループ(松谷哲行研究員、木下学准教授)と共に、動物実験で天然多糖類を用いた高分子超薄膜(ナノシート)を外科手術用創傷被覆材(ナノ絆創膏)として医用応用することに世界で初めて成功。肺、盲腸、胃袋などの柔らかい生体組織が損傷を受けた際にナノシートを貼付するだけでくしゃみ程度の負荷が加わっても安定に閉鎖できることを確認しました。術後の組織癒着を伴わずに患部をきれいに治癒することも可能となり、縫合、切除、被覆材の利用といった古くからの外科的手法に、ナノ絆創膏の利用が新たな手法として加わることが期待されます。
6月19日付けの「Nature Nanotechnology」に研究内容の一部が掲載され、Advanced Functional Materials誌新規ウィンドウで開きますにも掲載されました。



◆世界一薄い創傷被覆材(ナノ絆創膏): シート状ナノ材料の医用応用


早稲田大学の研究グループ(理工学術院 藤枝俊宣助手、武岡真司教授ら)は、防衛医科大学校の研究グループ(松谷哲行研究員、木下学准教授)と共に、高分子超薄膜(ナノシート)を外科手術用創傷被覆材(ナノ絆創膏)に医用応用することに初めて成功し、その成果がAdvanced Functional Materials誌(電子版)に掲載される。この薄膜は、既に医用材料として用いられている生体適合性・生分解性の高い多糖類であるキトサンとアルギン酸塩を交互に積層して作られたものであり、強靭性、柔軟性、透明性かつ高い密着性を持っている。膜厚は75 nm程度と極めて薄く、市販の絆創膏の十万分の1の薄さに相当する。共同研究グループは、ナノシートの膜厚と密着特性の関係を明らかにし、肺などの柔らかい生体組織が損傷を受けた際に、ナノシートを貼付するだけでくしゃみ程度の負荷が加わっても安定に閉鎖できることを確認した。このナノシートは、従来の血液製剤や化学接着剤を用いた創傷被覆材とは異なり、ファンデルワールス力と呼ばれる分子間の物理的な接着力を利用していることが特徴である。また、この方法では、術後の組織癒着を伴わずに患部をきれいに治癒することができる。


血液細胞を支えるナノシート(写真上半分の薄膜がナノシート)
キトサンは水溶液中でカチオン性に、アルギン酸塩はアニオン性を示しているので、これらを交互に基板上に積層させると静電的相互作用によって強靭な超薄膜が得られる。この積層数を変えることで膜厚を自在に制御でき、既存の成膜技術の応用により大量製造も可能である。
ナノ絆創膏は、外科手術の大幅な時間短縮を可能にし、更には縫合が困難な内視鏡手術分野などの低侵襲手術法に対しても大きく貢献することが期待される。

<報告文献>
Fujie, T.; Matsutani, N.; Kinoshtia, M.; Okamura, Y.; Saito, A.; Takeoka, S. Adv. Funct. Mater., in press (DOI: 10.1002/adfm. (200900103))

以 上