STAPについてはなるべく客観的な立場で書いてきたつもりですが、今回は少し主観が入ります。というのも、理研の調査中間報告の質疑応答で、気になる点が1箇所あったからです。


  • 非常に危険な状態ではないか
質疑応答で、以下のようなやりとりがありました(文字起こしをしたわけではないので要旨としてください)。

Q:小保方ユニットリーダーに研究活動を停止させたのはいつか。
A:正式に停止させたことはない。研究ができるような精神状態ではなく、研究室に来ない日が長く続いたため、自然と停止になっているのが正確な状況。

また、このようなやりとりもありました。

Q:調査委員会は何回聞き取りを行ったのか。
A:人によって違うが、小保方ユニットリーダーは3回行っている。騒動が大きくなってから(いつかは不明、プロトコルを公開した3月5日以降か?)は精神状態が思わしくなく、ヒアリングができない状態となっている。

Q:論文の取り下げを提案したときの小保方ユニットリーダーの様子は。
A:心身ともに憔悴したような状態で、うなずくという感じだった。


これが本当なら、非常に危険な状態です。理研はすぐにメンタルサポートを行うべきです。さもないと、最悪の事態を招きかねません。


  • 悪意があったかどうか、それ以前の問題では?
なぜ、このような状態になっているのか。別の質疑応答に、このようなやりとりがありました。

Q:電気泳動の写真の加工について、本人はどう思っているのか。
A:やってはいけないという認識がなかった、申し訳ないと述べている。

Q:加工に抵抗がなかったということか。
A:そういう倫理観を学ぶ機会がなかったのかもしれない。

もしかしたら、彼女は不正とは全く思わず「他の人もやっているであろう当たり前のこと」「研究の本質とは関係のないこと」と思っていたかもしれません。それが急に「不正だ!」「捏造だ!」と世界中から言われたら、それまでの研究生活、あるいは人生を全否定されることになります。その精神ダメージは相当のものがあるはず。


  • 「研究不正」を学ぶ機会はあったのか
では「これは不正である」と、一体どこで教えてもらうべきだったのか。これは、やはり大学または大学院の研究室、つまり指導教官から教わるべきだと僕は考えます。

僕が学部4年で研究室に配属されたときのこと。修士1年の先輩が「写真にゴミが写ったら加工して消していいかな」と直属の上司に言ったら「明日から机と椅子がなくなるぞ」と言われたそうです。

「ゴミくらいいいのではないか、メインの被写体には関係ないし」と2人して話していたのですが、すぐに「やっぱりマズイよな」という結論になりました。というのも、些細なところでも不正があれば「他にも不正があるはず」とすべてが疑われるからです。

こういうところから、本来は学んでいくはずなのです。

とはいえ、このような、いつ誰が教えてくれるかあやふやなものはシステムとして弱すぎるので、授業や研修などでしっかりやるのがイマドキでしょう。

指導環境に本当に問題があったのか、現時点ではわかりません。早稲田大、ハーバード大、理研のいずれにもフェアに聞き取り調査をすべきです。


  • 僕が懸念するたった1つのこと
現状で僕が最も懸念するのは、論文の取り下げでもなく、STAP細胞の実在の有無でもなく、小保方ユニットリーダーの精神状態です。本人のことは本人にしかわかりませんが、精神的な症状は突然に現れ、そして体を蝕みます。そのようなことがあるというのは、僕にはわかります。経験がありますから。

どこかのブログで「彼女は世渡り上手だから何を言われても平気だ」なんて書いてあるのを見ましたが、ふざけるなと言いたい。そういう人が、周囲をうつ病にさせていることに、どうして気がつかないのか。そういう人が、そういう言葉が、そういう空気が、ダイレクトに見えない圧力をかけていることにどうして気がつかないのか。

もちろん、悪意のあるなしに関わらず、不正行為が認められれば、それなりの処分は受けなければならない。でもそれを決めるのは、所属機関となっている理研である。ダイレクトに見えない圧力をかけ、人の命まで奪うことなど許されない。

ただ、その理研自体が、ダイレクトな見えない圧力をかけてしまっているようにも感じた。「未熟な研究者」という言葉を何度も使い、組織が守るべき個人を攻撃しているシーンが何回かあった。彼女の実績や才能を認めて採用したのは理研のはずなのに。自分を守ってくれる人は誰もいない、と彼女が思ってしまえかねない。 


僕はこのぶろぐで、まったりと"さいえんす"を伝えたい。STAPの問題が浮上した後でも、なぜ問題なのかを理解するための土台のようなものを、ゆるふわイラストとともに書いてきた。望まれる環境ではないけれども、こういうときにでも興味をもってほしかったからだ。

でも今回わかったことは、すでに関係者が好ましくない状況になっているということだ。僕も、その状況はわかる。もしかしたら、これまでの記事そのものが、ダイレクトな見えない圧力となって、状況をより悪化させるのかもしれない。

だとしたら、僕がこれ以上ここでSTAPについて書く必要性がないし、むしろ書きたくもない。このぶろぐは趣味で書いているものであって、お仕事ではない。もちろんお仕事と言われれば、最大限配慮したかたちで、読者のためになるようなことは書く。だけど、それも最小限に抑えたい。


今回の問題は、いろいろな人がいろいろな疑問をもっている。それは別にいい。僕も気になることがいくつもある。ただ、僕はこれ以上ここで書くつもりはない。それは彼女を傷つけないためでもあるし、過去の自分を守るためでもある。


STAPの記事は、これでおしまい。