2014-03-15
STAP細胞騒動で問われていること。
文系では、たいした業績でもないのに、世間的にもてはやされるということはよくある。著書の内容に踏み込んだ評価よりも、その話題性、著者のスター性で評価され、メディアでの注目度が優先されてしまう。ミッシェル・ウエルベックは、『地図と領土』で、アートの世界がそうなっているということを作品で描き出した。そういうことは、哲学や思想、文学といったところでも、ないわけではない。フランスのヌーヴォ・フィロゾフなんてのはその始まりだろう。ドゥルーズは、こいつらはマーケティング戦略で自分らの思想を売り込んでいるだけだと断罪していた。
現代の日本の文系では、そのあたりの歯止めがなくなっているような気がする。あまりいいものではないと思う。売れたものん勝ちみたいな風潮は、やっぱり考えものだろう(まあもちろん、篤実な研究者もいるので、全員がそうなっているというわけではない)。
そうしたことが、このSTAP細胞の発表においても当てはまるんじゃないかとおもった。まず、Oがスターとして登場した。研究の中身は「すごい」としかわからない状態でも、とりあえず「発見者は若い女性」ということでフィーバーするというのが一月下旬の状況だった。私はこのとき、「若い女性で割烹着とか、研究内容とは関係ないところで盛り上がるマスコミはどうなんだ?」と思い、研究内容のすごさ、意義をこそ報道すべきと思った。だが現在、このOはもはや科学者でもなんでもないインチキ学者という評価すら出ている。その観点からすると、研究成果よりもまずはOさんという女性科学者のキャラクターを世に周知し、そのうえで、研究成果を認知させるとか、そういう戦略があったのではないかとすら勘ぐられてくる。
「笹井氏は小保方氏を大舞台に押し上げようと奮闘。会見に備え、理研広報チームと笹井氏、小保方氏が1カ月前からピンクや黄色の実験室を準備し、かっぽう着のアイデアも思いついた」
研究論文も虚偽であるが、その演出も虚偽だった。割烹着は祖母にもらったという話も虚偽。つくりだされたイメージで、研究成果の虚偽性を隠蔽し、真実であるかのように見せかける。真実の演出。スターだから、誤りではない。批判を封殺。
さらに、そもそもSTAP細胞など、実在しないという説もある。
kahoの日記 | スラッシュドット・ジャパン
そうであるならば、実在しないものを、画像の捏造や論文のコピペだけで、あたかも存在するかのように論証した、ということになる。この論証の正しさを支えるために使われたのが、メディアを利用した演出であった。
Oは、コピペで論文を作成するのがなぜ悪いのか、わからないと言っているらしい。剽窃はいけないという、研究者としての基本的な倫理観が破綻しているわけだが、ではなんで、こんなのが理研に採用され、研究できたのかという疑問が出てくる(剽窃の問題性については、林達夫もエッセーで論じている。これについても、文系学問でも無関係な話ではないので、また時間をかけて考えてみたい)。
思うに、これは黒幕がいるのだろう。Oはその黒幕のコマでしかない。壮大な虚偽が演出されていたのだと、考えてもいいのだとおもう。そのへんは、これからもツイッターや匿名のブログなどで断片的にわかってくるのだろうから、しばらく時間を要すると思う。
私としては、こういう虚偽が演出されてしまう背景にある時代状況とは何なのかを、考えてみたい。真理の破綻、虚偽の演出、倫理観の荒廃。これはたぶん、アーレントやベンヤミンが、ファシズムの時代において課題にしたのと同じことではないかとも思う。そうしたことを課題とするのが、現代の人文学の研究をおこなう人間に課された使命なのだろう。
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