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早稲田大学の理工系の非コピペ文化について/電気・情報生命工学科の学生から

早稲田大学の理工系におけるコピペ文化について

こんな記事が出てました。

在学の身からすると、これは学科によって違うだろうな、と思ったわけですが、Twitter上の反応・はてブの反応を見ていると、こういうのが一般化して語られていてとても気になったので、書かせていただきます。

前提

どうあがいてもポジショントークになるので、先に前提を書いておきます。

  • 早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科の情報系の学生
  • 系属校の学生(と書くと一個しかないんだけど)
  • 在学中の学部4年
  • 成績は悪い方
  • 剽窃は一切したことがない
  • TAをしたことがある(業務上知り得た、秘密にするべき事項について、述べない)

ということで、まだ卒業していないので、かなり婉曲な表現を含むかもしれませんよ、と

本学のコピペ(剽窃)に対する態度について

まず大前提として、コピペ(剽窃)に対する態度は、極めて厳しい、という印象です。そして例年、学部内で剽窃がバレて処分される学生もいた記憶があります*1

学期の始まりにガイダンスがあり、こちらでも実験の心得的な話をします(剽窃ダメです話もしたと思います)。出席しないと実験書がもらえず、実験を受けることができないと(いう建前には)なっています。

また、対策として意味をなしているかは全くわかりませんが、レポートを書く際に「チェックシート」というものがあります。これは、「私は適切に引用し〜剽窃してません」的なチェックにレ点をつけていき、最後に署名を行う、というものです。

以上のように、少なくとも大学として剽窃いいですよね、みたいな雰囲気は全くありません

しかし、これは明確に批判したいことなのですが、コピペを防ぐ制度ができているとは思いません。大学のレポート提出は、基本的に紙です。つまり、アルゴリズムを用いて剽窃を防ぐという仕組みはありません(ひょっとしたらOCRしている可能性がありますが、これはわかりません。ただ、手描きで提出する人もいるので、フェアではないでしょう)。

同じ学年内での使い回しや、ウェブからの不適切な引用は、教員の感覚で防げるでしょうが、上の学年のレポートの使い回しに勘付くのは、少し難しいように感じます。

したがって、今後はpdfでの提出を義務付けるべきであると考えています。

学科内の実験での剽窃に対する態度について

これは学科によって異なりますから、電気・情報生命工学科の話になります。さらに学科内でも分野によって実験がわかれるので、情報系に限った話でもあります。

学科内の実験でも、剽窃はダメです。ガイダンスがあり、チェックシートがあり、ダメですよ、というアナウンスはしていると思います。

ただし、レポートの評価者が異なっています。基礎実験の場合は、誰が評価しているのかよくしらないのですが*2、学科内の実験の場合は、担当研究室の者がチェックする、ということになっています。少なくとも私が知っている事例では、研究室の学生がアルバイトで評価していることがあります。

一応述べておくと、レポートの評価には時給がつかない仕組みになっています。

このことは、実験をする側だと知らないことが多いと思います(つまり、研究室の学生がアルバイトで評価しているので、剽窃してもバレなさそうだ、という動機は発生しないだろう)。少なくとも私はそうでした。

他の学科の実験についてですが、レポートの量が尋常じゃない学科はあります。私の場合はそうではありませんでした。したがって、剽窃して楽をする必要性を全く感じません。

実験手順の剽窃について

これは少しややこしい問題です。

基礎実験の場合、実験手順はどうしても似通ってしまいますし、そもそも実験書に手順が載っています。したがって、どうあがいても「実験書のコピペ」になってしまいます。

で、それは仕方ないとして、問題はちゃんと引用しているか?だと思います。ここがややこしく、「実験書を文献として適切に引用せよ」というのは、実はちゃんと言われていないような気がします。私自身は、「いやいや引用しなきゃダメでしょ」という感覚でしたが、おそらく人によって異なると思います。

したがって、実験書の引用を適切に指導するべきであると私は思います。

卒論のコピペについて

先輩のものをコピペして使っている例は、現実的に多分あると思います(背景・手順など。先輩の研究自体を引き継ぐことは多い)。ただ、私の場合は先輩と研究内容がかぶらなかったので、そういうことはありませんでした。

「自分が書く分って案外少ないよね」みたいな話を聴いたことはあります。

また、私の知っている事例として、卒論を教授が見ていないらしい、という話を聴いたことがあります。

修論に関しては全く知りません。

指導する学生の数について

毎年、研究室配属の段階で7-8人が配属されます。平均7.5人とすると、7.5×3=22.5人学生がいることになります。これは最大値です。

人気のない研究室の場合、院進学の段階で学生がいなくなるという事態が例年起こっている研究室もありますから、学生の数は研究室によって異なります。

私の研究室の場合はいつもいるドクター・(教授以外の)教員の方はいませんでした(遊びに来てくれたり、班によって指導してくださる方はいる)。が、たいていは1人くらいはいるんじゃないでしょうか。私の研究室の場合は、今年で(平和的に)なくなるという事情がありましたので、特殊事例です*3

大学のレベルが高いか低いか

知りません。が、直すべきところの多い大学なんじゃないかな、と思います。もしくは、大学というシステムがそもそも歪んでいるのかもしれませんが、事情を知らないので知りませんとしか言えません。

ただ、一部の質の悪いクラスターの意見を見て、「早稲田(私大)のレベルは低い」みたいな言うのは、ちょっと違うんじゃないかなと思います。

付属校学生がボンクラであるかに関して

当たり前ですが、ボンクラな学生と、ボンクラじゃない学生がいます。この比率は、学科によっても違います(当たり前ですが、受験だったら学力的に受からない人でも、入れる学科があります)。

通常、「差がある」というときは、平均と分散に目を向けなければならないと思います。このことについてあえて触れるのは、「附属高校から上がってくるボンクラ学生」が目立つからといって、平均に差があるとは限らない、ということです。分散が大きければ、「附属高校から上がってくるボンクラ学生」と「附属高校から上がってくる超優等生」がいるので、これは一概にどちらが優れているとは言えないでしょう(この段落は、平均に差があることを否定するものではありませんし、肯定するものでもありません。ただし私の印象では、少なくとも分散は大きいです)。*4

系属校・附属校についてですが、当たり前ですが、成績でふるい落とされることはあまりありません。これは理工学部への推薦入学の枠の広さから言っても同様です(というのは資料を見ればわかると思いますが)。ここから一般的に導かれる話は、入学者の入学当初の学力は、一般入試の入学者に比べて、推薦入学者の方が、平均的には学力が低い可能性が高い、ということです。

だから、じゃあ系属校・附属校ダメだね、という話かというとそうではないというのが私の意見です。系属校でどういう教育がなされてきたかで言うと、「いろいろなことを経験させる」という方面です。私個人の記憶では、例えば地学の巡検に行ったり、大量の実験を行ったり(もちろんレポートも。物化生地すべてやったような)、受験で扱わないであろう範囲の数学を習ったり*5、文系的な方面でもリサーチのために放浪させられたり。

あまり養護する義理もないのですが*6、理系教員の中には、教育にかなりこだわりを持っている人がおり(研究を志す者として、どうあるべきか、という観点)、そのような教員に少なくとも1年間は教わるわけですから、そういう方面ではしっかりしているのではないかな、というポジショントークを付しておきます。

言いたかったこと

事情が大学レベル、学部レベル、学科レベル、分野レベル、研究室レベル、班レベルでも様々なので、それを一般化して、「早稲田大学のコピペ文化」みたいな感じにしてほしくない。

(早稲田に限らず)大学機関は、レポート提出はpdfにして、機械的に剽窃を防ぐようにして、かつ、実験書への引用を指導して「どんな場合でも不適切引用はダメ」ということを徹底してほしい。

以上2点です。

追記

これは擁護したブログではありません。早稲田(or学科)のダメなところはダメだし、「こういう風に言われてるけど実態は」みたいな着地点にしてほしいくないです。

早稲田のダメなところは本当にダメで、それは本文中でもオブラートに包みながら指摘しているところであり、それが批判的な論調になっていないのは、ひとえに私が在学中だからです。

*1:処分内容は覚えてないですが、おそらくその学期の単位0=留年だと思います

*2:一応、教授のチェック印がついています。学科内の実験にはついていません

*3:余談ですが、秘書の方がいらっしゃいましたので、書類系の事務などの負担はあまりありませんでした

*4:余談になりますが、AO入試ダメだね論調についても、果たして平均がダメなのか、分散が大きいのかは、注意深く見る必要があります

*5:受験してないので不正確かもしれません

*6:高校にそんなに良い思い出がない