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吉田、涙のタックル「優勝が父の喜び」
- レスリング場に飾られた父栄勝さんの写真の前で鋭いタックルを決める吉田（左）
レスリング女子５５キロ級で五輪３連覇を含む世界大会１４連覇中の吉田沙保里（３１＝ＡＬＳＯＫ）が今日１５日、悲しみを乗り越えて戦いの場に立つ。１４日、三重・津市内で、くも膜下出血で１１日に急死した父栄勝さん（享年６１）の告別式に参列後、女子国別対抗戦のＷ杯（東京・板橋区立小豆沢体育館）の前日計量のために東京都内に移動した。精神的ショックの大きさも懸念される中、「優勝に貢献したい」と誓った。
午後７時２０分、吉田がマットの上に体を打ち付ける音が響く。「バーン、バーン」。父栄勝さんから教わったタックルは鋭く、速い。深い悲しみに沈んだ時間を超え、４日ぶりに練習に取り組んだ。「父も代表コーチで一緒に戦ってくれる。優勝することが、また父の喜びにもなる。気持ちを切り替えて頑張りたい」。涙で腫らした目に、タックルを重ねるごとに鋭さが戻っていった。
その約５時間前の午後２時過ぎ、三重県津市内の斎場で、父を見送った。１０００人を超える弔問客があった告別式の最後に「お父さんは世界一です。ここまで育ててくれて本当にありがとう。お父さんに教わったレスリングを忘れずに頑張ります。大好きだよ」と涙ながらに語りかけた。
そして出棺。家族も乗り込んだ霊きゅう車を１人で見送った。Ｗ杯の計量などで東京に移動するため、火葬場まで同行できなかった。「お父さんなら絶対に『出ろ』と言うはず」。あふれる涙を拭いて決戦の地へ向かった。
近鉄特急、新幹線、ＪＲ京浜東北線を乗り継ぎ、都内のナショナルトレセン（ＮＴＣ）に到着したのは午後６時３５分だった。ユニホームに着替え、計量は５４・１キロ。これまでの５５キロ級から新設の５３キロ級で挑む初の大会。プラス２キロがリミットで、一発でパスした。計量会場では日本代表を始め、各国の選手から次々と握手で励ましを受けた。７５キロ級の浜口京子は「試合に出られて良かった。励ましてあげたい」。米国でコーチを務める山本聖子さんとも抱き合い、悲しみを分かち合った。
精神的ショック、新階級、練習不足も重なるが、日本代表の栄監督は「１次リーグで使いたい」と起用を明言した。過去２回連勝記録を止められた因縁の大会でも、優勝しか頭にはない。「父が喜んでくれる」。そのための勝利を。【阿部健吾】
［2014年3月15日9時15分 紙面から］
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