家はプレハブ、米で食いつなぐ…驚きの除染作業員「募集」
「原発のがれき処理、除染作業の仕事がある」――。募集に応じて来たのに、実際は仕事がなく、給料も出ない。モラルのメルトダウンが終わらない。
<福島第一原発でのがれき撤去。日当/1万5千~3万円。寮と食事がつく>
2012年11月中旬、離婚して住んでいた家を出ていかなくてはならず行き場をなくしたAさん(55)は、スマホで見つけたこの求人に飛びつき、電話をした。
「すぐにでも働けるから来てください」
電話口の男はそう言い、Aさんは西日本から車を運転して福島に向かった。茨城と福島県境の町にあるコンビニの前で待っていたのが、求人していた建設業の中年男性だった。ところが、最初に連れていかれたのは近くの漫画喫茶。ここで待つように言われ、12時間近く経ち「住むところが確保できた」と連れていかれたのが、プレハブだった。
Aさんは驚いたが、帰る家もお金もない。倉庫として使われていたと思われるプレハブには、工具類が置かれたまま。床にベッド用のマットレスが置かれ、そこで寝るように言われた。
11月も半ばを過ぎると福島は朝晩の気温がぐっと下がる。小さな電気ストーブがあるだけの部屋で、Aさんは用意された寝袋に入って寝た。求人段階では仕事はすぐあると説明されていたが、業者は「ちょっと待って」と言うばかり。しかも「日当1万5千~3万円」のはずが、1万2千円になったと説明された。
「だまされた!」
後悔したが、お金がないのでプレハブから出ていくことはできない。風呂にも入れず、トイレは近くのコンビニで借りた。
12月に入ると、Aさんは近くの2階建ての民家に移る。建設業者が借りたという民家が「寮」になり、2階の一部屋をあてがわれた。それでも仕事はない。寮には米だけが置いてあり、それで何とか食いつないだ。こうして福島に来て1カ月近く経った12月中旬、ようやくAさんに原発の仕事が入る。
だが給与の支払いは2カ月先だった。しかも、「交通費支給」のはずが、寮からJヴィレッジまで片道約50キロを自分の車で通ったのにガソリン代は支給されない。ガソリン代にも事欠くAさんは、建設業者に毎日2千~3千円前借りをするようになる。借金は「日当の1万2千円」から相殺された。さらに、仕事がある日は「寮費」と称し「1日2千円」引かれたという。
※AERA 2014年3月17日号より抜粋
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