それは、少しずれた世界線の物語 (ESSM)
<< 前の話

episode.4「そして、南海では…」

前回投稿から、三ヶ月…

難産に難産を重ねた第4話カッコカリ

どうぞ!

ほぉーっ、提督じゃん、チーッス



episode.4「そして、南海では…」

…続いて、京都大学脳機能情報研究センターの御坂秋葉研究員の講演です…

会場にアナウンスが流れ

御坂秋葉は始める、己の研究成果を公表する茶番劇を

「どうも、ご紹介に預かりました。京都大学脳機能情報研究センター所属の御坂秋葉です。私は、脳科学的見地に基づき高適応性人工知性体の研究をしていまして…」

御坂は後のインタビューでこう語っている
『世の中、手順とインパクト、そして心を揺さぶる様な何かが必要なんです。』

「…そうですね…実物を見せた方が早いですね。ノワール、展開(オンステージ)。」

「呼んだ?、秋葉」
透き通った声と共に、きらびやかな光を放つアクティブ化された生体ナノマテリアルが集まり、ひとつの少女を形作っていく。

全ての聴衆が息を飲む…

「これが、我々が作り出した。世界初の高適応性汎用人工知性体「ノワール」です。」

この発表方法には御坂秋葉本人のこだわりがある
『最初にいかに聴衆の心を揺さぶるか』
このこだわりを持った発表は続く

「ノワールはSES社のモバイル端末向け立体汎用演算装置(3DMPU)CL-4500を16基を搭載した「BlackHeart-Brain」…システム全体で960TFLOPSを発揮するハード上で動作しています。」

三次元空中投影ディスプレイにシステムの写真が写し出される。

「このBH-Bは人間の脳演算パターンの解析して開発された、ノワールの自己…いえ人格や魂・思考を司り、我々とほぼ同じ思考能力を有します。…ノワール、挨拶よろしく」

ここで、御坂は更なる策を構じていた…
…そう人工知能に説明の大部分を委ねたのだ

「はい、京都大学脳機能情報研究センターで開発されました、次世代(XNG-)汎用人工知能体(AGI)-1 mod.2Aこと「ノワール(Noir)」です。」
わーっ…と会場内は沸き立ち、ネット中継はコメントで溢れかえっていた。


(出典:Professional ~仕事の信条~ ~研究員 御坂秋葉~)











Side.Akiha

















…思い起こせば、このUH-60JASには何度乗っているのだろう…


始めに三鷹キャンパスに連れてこられた(拉致された)とき…


…大平洋上の研究艦にURSV(無人潜航調査挺)の人工知能の研究につれていかれた時


…硫黄島沖のJAXAの研究用メガフロート「いとかわ」にSSTO「つばめ」の自動操縦装置の人工知能の研究の為


…科学技術省保有の研究用メガフロートのSBTL(スーパー ブレイントランスレーター)の利用の為


…その他数多くの業務で乗っているだろう。







…ただ、ここまで憂鬱なフライトは無いだろう…







…昨日、捕縛した相手を連れて、IS学園に行けと言うミッションを聞かせれてからだ…



時間は少し巻き戻る



「科学技術省未到達域技術域研究センター長執務室」


…この言葉を科学技術省職員に聞くと

やれ「魔窟」だことの「魔女の釜」だことの「香月帝国」だことのなんだの言う。

しかし、呼ばれる方の身からなってみれば…それほどのことでもない



…最もそこに呼ばれれば、ほとんど無理難題・面倒事を押し付けられるのだが。

私と雪乃は科学技術省第弐種制服、通称:NSWを着てその場にいた。

科学技術省第弐種制服は、チャコールブラックのブレザーに同色のスラックス(女性用にスカートも一応用意されている)の組み合わせ。ブレザーには「(Japan)(Science)(and)(Technology)(Ministry)」の略称である「JSTM」の刺繍が入り、銀色を基調とする「二重螺旋と矢印」こと科学技術省章と役職章が胸と肩にそれぞれついている。
素材はそれこそワイシャツからニーソに至るまで防水・防弾・対薬品・難燃仕様で、ベルト部分には護身・自決用自動拳銃用ホルスターがあり、そこに収まっているグロック18Cには安全装置はかかっているとはいえ、実弾を装填したモノが収まっている。
そう、科学技術省職員は拳銃&PDW程度の武装を認められている、最初は戸惑ったが、今となってはもう慣れてしまった。
まあ、日本国内で拳銃携帯が認められている職業は以外と多い。
何せ、自衛官・警察官・海上保安官・漁業取り締まり官・科学技術省職員・国家保安警察隊・中央情報庁職員・情報通信保安庁職員・公安調査庁職員・宮内庁職員の10機関2481職種に渡る。
冷戦期の東側諸国に対する機密保持及び万が一の時の自決用として配置されていた名残だ。

「御坂弟・遊佐妹、防衛省と国際IS機関(IISA)在日国連軍(UNF-J)からの命令書」
香月センター長はそう言って、五七桐の透かしが入った命令書を投げてくる
私と雪乃は命令書にさっと目を通し、答える
「「了解しました」」

「あっ、そうだ。昨日の休みどうだった…いや、たのし「…対テロ訓練してましたけど?」」
「…同じく」
香月センター長からピキンと言う擬音が聞こえた。

「…貴方達、ちょっとそこに座りなさい」

「「へっ」」

「あ~な~た~た~ち、何で私が半休やったと思っているの」
「……人事院の査察対策?」
「…労働基準法対応?」
私と雪乃は思い付くことを言っていく。

センター長はため息を付きながら言う。
「あなたたちね…遊んできなさいよ休日なんだから」
「いや、そのあと岡部副部長達とカラオケ行きましたけど…」
「…疲れに行ったものだったよね。」

私と雪乃は昨日のことを思い出しながら、語りだし

そう、時間は巻き戻る。



















「…こうして、私たちはカラオケに来る羽目になったのだが…このカオスな人員構成は想定していなかったと言うか…」
「京大閥多すぎよねー(棒)」

いや、雪乃お願いだから素で言わないでくれ、私だって騒然としているのだから…

さあ、カラオケに集まった科学技術省参加メンバーの名前と出身大学と専門を並べてみよう

1)御坂 秋葉 (京都大学 脳科学)
2)御坂 七海(わが姉) (京都大学 医学)
3)遊佐 雪乃 (京都大学 素粒子物理学)
4)瀬文 沙耶 (京都大学 量子物理学)
5)瀬文 光太郎 (横浜国立大学 (保安部))
6)岡部 倫太郎 (筑波大学 素粒子物理学)
7)岡部 紅莉栖 (京都大学 脳科学)
8)橋田 至 (筑波大学 情報科学)
9)結城 章彦 (東京工業大学 脳科学)
10)堀越 昭次郎 (東京工業大学 航空工学)



…お分かりだろうか











…科学技術省と言う日本のエースの中のエース、まさにエースオブエースの集団……
















…と言われると立派そうに見えるが…

…実際は変態的技術力を持ったHENTAIたちの集団だ…


そう、予算さえ与えれば、陽電子砲だろうが人工生命だろうが、世界最強の戦闘機だろうが何でも作り出す…




…過去にこのHENTAI集団が暴走した結果…

用廃の74式戦車を引っ張ってきて、世界最強の無人戦車を作ろうとか(主砲代用に高出力化学レーザー・原子力電池を搭載、ただ、無線間接思考制御方式だったため送信アンテナ車から3km離れると動作不能)(さらに根本的な問題点がAL(アンチレーザー)弾が展開されているときは威力ゼロ)、

何を血迷ったのか(たぶんHDDに撮り貯めした某海戦アニメに触発されたのではと思う)、米軍の原子力空母も一撃で沈めることが可能(理論上)な世界最強のジェット機用航空魚雷、

高速無人偵察航空機の開発と称し、マッハ2.2で飛翔する無人ステルス偵察機…ならよいのだが、その機首に1000Ibの高性能弾頭を積み、偵察後は敵艦や敵重要施設に自爆突入すると言う謎コンセプトの無人偵察機「菊水」(あまりにももったいなかったので不採用)、

次世代複合センサーシステムの情報処理にAI技術を使おうとか(成功はしたのだが、あまりにも高額化してお蔵入り、その後廉価版を心雷シリーズのセンサーに採用)など、













…まあ、世界初とかイロイロと凄い物ではあるのだが…







はっきり言って


…ロマン以外、ろくな物ではない。








そして

「フゥーハハハハハ!、ミサカブラザーよドリンクバーで選ばれし者の知的飲料をもらってこーい」



…うざい。
私はこう返しておく


「……この店にあるんですかね。ドクペ…」


「大丈夫だ、問題ない。ここは東京コ〇・コーラボトリングのエリア内だ」

…はっ?

「…え~と 、岡部さん以外は…」

「「「「‰◯∵ゎ∫」」」」

…いや…一気に言われても困るんだけどね…


となれば…
『ノワール、解析よろ』

忽ち、量子還元された生体ナノマテリアルがアクティブ化し、ノワールを形作っていく。

「…ノワール、ちょい近い」


「…はぁ、何で人がFAS-5やっているときに呼び出すのよ…」


Fighter Aircraft Simulatorは第二次大戦期からの世界中の戦闘機・攻撃機の超高精度・高精細シミュレーションが可能なゲームで、その中でFAS-5と言われる5作目は最高傑作と言われ、発売から既に6年が経ってもまだ売れ続けているゲームだ。


胸の前で手を組んで"私怒っているんです"ポーズをしながらノワールは答えた。



…いやさ、これってノワールみたいな美少女がやると様になってていいよね!…

いや、お前が美少女型モデルを作り上げたんだろって言われると、立つ瀬がないが…


…だってさ、MMSだって美少女型モデルだよ。
その生体ナノマテリアル技術が実体化の基盤だし、目の保養にも良いじゃない。
むさ苦しい男より美少女型モデルの方が…


と言うか…日本人には萌が必要なんだよ!!…



2020年の東京オリンピック開会式もとい、日本人には萌が必要なんだよ!!(大切なことなので2回言いました!!)





…ノワールがゲームにはまったのって、私がノワールにネットワーク接続機能をつけたから悪いのか?…いや待て、何時だかあのプラウザゲームを動かしたと言うことは…

「ノワール、つかぬことを聞くけど……私のVista2.5持ってる?」

「ええ、そうよ」


…ねえ泣いていい…

…「某密林で買ったPocketPlayerVista2.5が自分の作った人工知性体に掻っ払われた件について」
スレ立てすれば食いつくよね、ネラーの皆さんは…


「大丈夫よ、貴方がスレ立てしても、私がクラックしてそのスレをこの世から消し去るから」


…しまった、忘れていた。







ノワールの思考パターンの基盤は私の思考パターンだ(と言うか私の思考パターンの移植体だ)。
そんでもっての旧世代機の疑似量子演算アルゴリズム搭載のBH-Bをcoreとしていた「ノワールMk.1mod.0」とは違い、新世代の「ノワールMk.2 Advanced」は膨大な量の量子生体ナノ演算素子を有する量子演算脳を持ち、下手な在来型スパコンの数億倍以上の演算力を誇る。
そう、私とノワールの関係は、はっきり言えば親子・姉弟を越える。

…「もう一人の私」なのだ…



あまりに厨二病臭いので、より正確に言えば
「別の意識・人格を持つ同じ思考課程を持つ人間とAI」
なのであるが…











つまり、思考は予測される…いや、読まれているし、書いてもすぐ消される…


自分が作り出しておいて言うのはアレだが






…うわぁ怖い…






「…まあその話は置いておいて、ドリンク取りに行きましょうか。」

部屋を出、ドリンクバーに足を進めようとした、その時、ノワールがふと念話で聞いてきた

『ねえ、秋葉。あなたは本当にあの想定事案(プラン)が現実に発生すると思っているの?』

『この事案はわかっていると思うけど、回避可能性ゼロ、因果率変異ゼロの事案だからね…』

そう、絶対に回避できない、因果率の書き換えも不可能…因果の集束点とでも言えばいいのだろうか

『だからといって貴方はそれを……座して待つ訳なの?!』

『だからといって、あの事案は下手に動こうものなら…私以外にも被害がいく…それは絶対に避けなければならない、それにさ、ずっと立って待っていると疲れるじゃない』

そう、そこなのだ。あの兎は他者への影響なんて考えない。

はっきり言って『自分の研究成果を認めさせる為』に白騎士事件を引き起こし、PRSM諸国に大混乱を引き起こさせ、世界経済や国際政治に大きな禍根を残させる。
例えば、一例を上げると英国の世界第2位の防衛装備品企業BAECは破産、日米の三菱重工業=ノースロップ・グラマンの連合にすべての事業を吸収合併されたり、お隣某半島南部では内戦が発生、世界は混迷の渦に巻き込まれている。


『…だからって…貴方が死んだらどうしようもないでしょうが!…』



そこからは私たちは暫しの間、無言になった。


「…パターン覚えている?」

「ええ、岡部さん・牧瀬さんはドクペで、瀬文さん・結城さんがブラックコーヒー、七海さんがミルクティーで、沙耶さんがアイスカフェラテ蜂蜜マシマシ、堀越さん・橋田さんがコーラ、桐生さん・雪乃さんがスプライトのはずよ」

「ほいほい」

…おい、なにノワール、自分の料金を払いに走って行っているんだ…

…まさか!!、歌う気ですか

……いや、まさかC99のコス広場再現は

…ご容赦願います。


いや、コスプレ用品もとい女装用品はもってきていないから…コスは無いとしても…


いや、ノワールとデュエットで歌うことは問題ないけれども…ねえ…


…いや、やれますけれども…

…雪乃から白い目でみられる。

絶対、沙耶さんやら岡部さんにネタにされる…


私は鬱な気持ちに成りながら、ルームへの道を戻っていった。


「あーきは、アレ歌いましょ!!」

ノワールは超ハイテンションであるが…


「だめっ?…」


安西先生…美少女plusウルウルplus上目使いは反則だと思います。


「…はぁ、じゃあ一回だけだよ。」
ビバ、私陥落…


「「お待たせしました!!~」」
とハモりながらルームに入っていく
すると、我が姉君が
「次、秋葉の番だよ~」
と選曲用タブレットを投げてくる。

「ちょっと貸して」
と言ってノワールがタブレットを持っていく。

「椎名かりん(CV:田中ゆかり)・井野みお(CV:佐藤早織) Second」

堀越さんの「津軽海峡雪景色」が終わり
画面が切り替わる…

…エェィもうやけくそだっ





「「(著作権かかるので諦めてください) 」」









終わった、いろんな意味で



まず、雪乃…
なんか目を点にして呆然としないでくれ、
そう、このカオスなメンバーの良心でありストッパー、そして混沌の中に咲く一輪の水仙で在ってくれ。

次は…というか早い話がみんな呆然。


お願いだ~
雪乃、早く現世に戻ってきてー










(↑この時間軸の)
同日同時
南シナ海
国政興産所属「日の本丸」

日本最大級の302,400Mtの大きさを誇るVLCC「日の本丸」は、南シナ海を日本本土に向けて航行していた。

「システムチェックが完了しました。航法システム・機関システムオールグリーン」

「船長、そろそろ交代のお時間ですが…」

「おお、そうか」
と船長と呼ばれた男は答えた。

彼の名は霧島幸次郎、
海上自衛隊で駆逐艦「しまかぜ」艦長を勤め、合同演習の時に米海軍に「しまかぜに霧島あり」と言われた程の優秀な艦長で、定年後はアデン湾での海賊対処任務に当たっていた時の縁でタンカーの船長に再就職した生粋の船乗りだ。

ちなみに、「しまかぜに霧島あり」の要因は、合同演習時に、航空隊や僚艦の援護を受けつつ、本来対弾道弾用のRIM-4Bを空母「ロナルド・レーガン」めがけて撃ちながら高速で演習相手の米空母打撃群から30kmの距離まで接近、主砲や本来対潜用の07SUMとVLA、さらには対空用のRIM-4Aを撃ち、ロナルド・レーガンに轟沈判定を出させる。と言うとんでもないことをしでかした。(それ以後日米海軍はSM-3やSM-6・RIM-4Aの対地・対水上使用を多用する様になった)
(RIM-4Bを大気圏外に出さずに弾道飛行させ、艦載機や護衛艦艇がそちらに対応している隙に近距離からの主砲、対空ミサイルとVLA、はては航空部隊の飽和攻撃で壊滅させた)

「千葉に着くまではまだしばらくかかりそうですねぇ。早く故郷(くに)に帰りたいものです。」

「はっはっは、君にもそう言った感情があったのか。ビックリだな。」

「孫が産まれたんで、早く孫の顔が見たいんですよ。…」

「そうか、なら一度土産でも持って見に行くか」

「ハッハッハ、勘弁してくださいよ」

二人の会話は平穏その物だった。

しかし、ある報告によってそれは遮られた。

「船長、レーダーに感。…高速小型飛翔体がこちらに突っ込んできます!!」

そう、日本の商船にはあるものが標準搭載されている。それがOPS-28という軍用の低空警戒/対水上/航海用レーダーだ。
元々これは、アデン湾等の海賊達や海賊たちの撃つ9K132「グラートP」等のロケットを早期に探知し艦船防護用の12.7mmRWSや煙幕・チャフを持って迎撃する為に大型の航洋型民間船舶に搭載が義務化されていた。

「慌てるな、RWS・煙幕・チャフ、アクティブ。SOSを発信しろ。」

通信士と航海士の一部がそれぞれの制御コンソールにしがみつき、行動を開始する

「SOS!!、SOS!!。こちら国政興産所属「日の本丸」、国政興産所属「日の本丸」、本船は現在対艦ミサイル攻撃を受けつつあり、本船は現在対艦ミサイル攻撃を受けつつある、至急救援を要請する!!、 至急救援を要請する!! 」

「煙幕・チャフ展開完了、RWS射撃用意…撃てー」

12.7mmRWSに搭載されたGAU-19の奏でる甲高い射撃音が船橋に響き渡る。

「1発撃破、もう一発は突っ込んできます。」
「諦めるな!!、撃ち続けろ!!」
霧島は口を開く
「総員、対ショック防御体制!!、自動散水システム(AWS)起動!!、ダメージコントロール用意!!」
霧島の一声で一斉に船橋内の人員がその場の手すり等に掴まる。と同時に船体各所に設置された自動散水システムが起動し、全体に
…霧の壁…
…とでも表現したら良いだろうか、延焼防止の為の霧状の海水が撒かれる。


「全弾撃破!!」
霧島は叫んだ。
「駄目だ、近すぎる!!」

よく言われていた94式遠隔操作12.7mm機関銃システムの短所は射程の短さ・12.7mm機銃の破壊力の小ささ・多数目標への同時対処能力の不足であると。高速飛翔ミサイルに対しては、対処可能な時間が短くなることに加え、たとえ12.7mm弾が直撃しても敵ミサイルおよびその破片がほとんどそのままの速度で自艦に突入してくる可能性があるため、より高い能力の民間船舶用個艦防護火器を求める動きもあった。だが、左派政党の「機関銃だけでも譲歩しているのに、機関砲(口径20mm以上)とは何事だ!!」と言う反対により頓挫していた。
(一応、59式25mm多銃身機関砲(FCS簡易型)を搭載予定だった)

この時はむしろ、想定されていた事態だったと言って良い、確かに94式の放った多数の12.7mmVT弾は目標(YJ-8Q)前方にキルエリアを形成し迎撃には成功した。

…ただ、いかんせん近すぎた、迎撃した距離は540m…
この距離では前述の"たとえ12.7mm弾が直撃しても敵ミサイルおよびその破片がほとんどそのままの速度で自艦に突入してくる可能性 "に該当してしまったのだ。

…破壊された対艦ミサイルは破片となって日の本丸の横っ腹全体に衝突した…



…轟音と共に日の本丸に火球が発生した…




同日同時
南シナ海
海上自衛隊攻撃型原子力潜水艦「伊921」

「日の本丸火災発生!!」
非貫通式の潜望鏡に無線同期されたHMDから周囲状況を監視していた航海長が潜水艦乗組員特有の"静かに怒鳴った"

艦長の草鹿弦二佐は航海長にして副長の角松三佐の報告に、コーヒーを喉に流し込む手を止め、その場に置き、発令所後方の電子海図台へと歩を進めた。

商型原子力潜水艦の追尾を始め、すでに二十時間近く……伊921の鼻先から約10海里の距離を置いて商型原子力潜水艦は日の本丸をUSMで攻撃後、依然として潜航を続けている。

「司令部からの命令はまだか?!……」

「受信まだ」
.通信長が答えた。

現在、艦は追尾を続けると同時にフローティングアンテナを展張し、衛星通信を使って現況を報告するとともに本土からの命令を待っていた。
伊921乗員の焦燥には理由があった。

…敵性潜水艦は現在速度9ノットでベトナム領海まで一直線に進んでいる…

もし領海に入った場合、そのあげく浮上して国旗掲揚でもされてしまえば、いくらPRSM加盟国とはいえ他国の領海で戦闘を繰り広げるのは正直言ってまずい。後者に至っては向こうが「無害通行だ」等と言えば国際法上、こちらは撃沈できなくなってしまう。

「目標……依然針路変わらず。ベトナム領海到達まであと20分、こちらが攻撃できるのは…あと15分ほどです」

クリアなウィスパーボイスでタイムリミットの読み上げがされる。


さあここで読者諸氏は、思ったであろう。
「どうして領海侵入5分前からは攻撃できないのか」と。

これは第一に領海外縁部の戦闘は、相手が「領海に入っていたのに」と言う水掛け論になることが予測されるので出来る限り避けたいと言うのが挙げられる。

第二に、5分前に魚雷を発射体制に移行し、撃沈した場合
敵潜位置特定

魚雷装填

魚雷諸元入力

発射管注水

発射管前扉開放

魚雷発射

魚雷走行中

魚雷命中
と言うプロセスが必要になる。
このプロセス、先に敵潜の位置を特定し、魚雷が装填してあったとしても、いかん命中まで時間がかかる。
その為のタイムリミットだった。

「……まずいな、921(くにい)諸元算出だけしておけ」

「了解しました」

クリアなウィスパーボイスの正体…海上自衛隊の女性用制服をまとった少女こと、潜水艦搭載型MMS「伊921」こと「くにい」が答える。


日の本丸を攻撃し、未だ進路を曲げない商型原潜と、それを追尾する伊921……双方の位置関係を表示した電子海図台から頭を上げ、草鹿二佐は先任と顔を見合わせた。遠く離れた連合艦隊司令部や国家安全保障会議(NSC)とて、こちらの連絡や衛星で既に詳細を掴んでいるはずだ。

まさかこの期に及んで攻撃を躊躇しているのか?……
司令部のその気持ちもわからない訳ではない。

…憎き中共とて、核保有国だ…

…核保有国間の全面戦争ともなれば…

…それこそ某宇宙戦艦で大マゼラン星雲だかまで「地球清浄機D」だかを取りに行かねば人類は滅亡する。

しかし、だからと言ってこのまま敵艦を見逃せば、今後に大きな禍根を残し、これ以上の民間船舶の被害が出ることになるかもしれないというのに。

……そのとき。

「司令部より受信……読みます。
『発、連合艦隊司令部。
宛、「伊921」
武器の使用を許可(AUF)する。全能力を持って敵潜を排除せよ』……繰り返します、『武器の使用を許可(AUF)する。全能力を持って敵潜を排除せよ ……』!」

来たか!…

…通信を艦内系に切り替え、草鹿はすぐさま命令を下した。

「艦長より各員へ、本艦は只今より作戦行動に入る。……現在追尾中の商型原潜を、ベトナム領海に入るまでに撃破することである。これは訓練に非ず。繰り返す、これは訓練に否ず。心してかかれ……総員対潜戦闘(AUC)用意!!」

その直後、艦内が騒然とするのを草鹿は聞いた…
……というより感じたように思えた。

だからと言って、悠長に皆が落ち着くのを待っていられる程の時間は無い。

「……艦長より発射管室へ、1番と6番に15式長魚雷装填」

艦長の命令に、発射管室は機械的なまでに整然とした反応で応じる。

「1番と6番、装填よろし、コントロールを発射管制に移管」

「ソナー、目標の速力及び針路知らせ」

すかさず、ソナーマンの鳥飼 一曹が応じる。
彼とて耳では敵艦を捉えてはいても、これより戦闘に入るという実感だけは、どうしても捉えられなかった…
…それでも、その耳で捉えた全てを、彼は艦の乗員と自分自身のために抑制された口調で報告する。

「針路0-4-3。距離18500。速力9……いや10になりました」

「オブザベーション対象、目標敵潜水艦……水雷長、くにいのデータをアップデート、目標諸元入力始め」

「マーク……方位0-4-3」

「よろしい……SSP(超静粛推進)のまま速力12まで上げ。18000を切ったら攻撃する」

伊920型の切り札こと、原子炉内熱発電冷却ユニットや高性能電池により供給される電力を用いた原潜でありながら通常動力型潜水艦のように無音航行が可能と言う利点を生かした戦闘が始まる。

「1番6番、注水始め」

「1番6番……注水よろし」

「ワイヤーリンク確認、発射管安全装置解除」

「敵潜の距離18050……17950……」

「データリンク正常、何時でも行けます」

発射管制担当の水雷士が火器管制端末のタッチパネル横のプラスチック製のセーフティカバーを開け、ゆっくりとボタンに指を充てた。そこに艦長の命令。

「1番6番…… 発射!」

ドスン……という響きは二度。

間隔を置き放たれた平成の酸素魚雷こと15式長魚雷は入力された音紋データの導くまま、知性を持った銛となってその身に備えた純酸素・純水素クローズドサイクル機関が産み出す推力で60ノット以上の高速で敵潜へ向かっていく。
母艦より有線で誘導された2発から、敵潜はもはや如何なる回避行動を取ろうと逃れる術は無かっ た。

日本の最新科学技術の粋を集めた超ハイテク原潜こと「伊920型」の高度な目標追尾能力を持ってすれば、 ほぼ確実に眼前の敵潜を1発で葬ることが可能だったが、草鹿はより確実に敵潜を葬れる同一複数発射を決断したのだった。

……既に向こうは魚雷発射音で此方の存在に気付いているはずだ。


「命中まで17秒……15、14……12……ワイヤー分離…」


くにいによって読み上げられるカウントダウンに水雷長の手は、汗が滲んでいた。

「速力8に落とせ」


「全弾命中を確認」

ゴン……
というイヤな重低音の響きを、発令所にいた誰もが感じた。

それはまさしく、戦いに敗れた海の狼が多数の乗員を道連れに海中奥深くにその身を二度と戻らぬ急速潜航をする瞬間。

鳥飼と"くにい"の抑制された報告は、なおも続いた。

「敵潜沈みます……深度100……120……200……圧潰音、確認しました」

「パターン黒、こちらも確認しました、間違いありません」

「水測、他に敵潜がいないか警戒せよ」

「了解……警戒します」

…1分…




…3分…




…5分……

…徐々に艦内より緊張が解け、艦内の空気はほんの30分前のそれに戻っていく。

「急速浮上後……横須賀に打電しろ。「我敵性潜水艦を排除、これより日の本丸の救援を行う。至急応援を要請する」…以上 」

「了解、メインタンクブロー」

次第に深度を上げていく艦内で、ふと草鹿二佐は喉の渇きと共に、至近に人の気配を感じた…

…確か珈琲は置きっぱなしだったな…



通信士が声をあげる
「艦長、近隣を哨戒中だった、まつ型の「けやき」、おおよど型の「すずや」、米軍の「オマハ」と艦載機が救援に向かうとのこと」

「そうか、なら良かった」




草鹿が先程置いた珈琲を取るため背後を振り返った時…

…"くにい"が、固い笑顔とともに湯気の立った草鹿のコーヒーカップ…

…それは、おそらく、新しく淹れ直したであろうコーヒーを持って自らの艦長が振り返るのを待っていた。

「艦長、冷めてしまったので淹れ直しておきました…」


同日同時
南シナ海
海上自衛隊イージスミサイル巡洋艦「すずや」(CG-49)

「伊921より日の本丸への救援要請を受信」

通信士が声をあげた。

「艦長、いかがいたしましょう」

副長は艦長に尋ねた。

艦長は聞いた

「八神飛行長、レガリスは飛ばせるか」


「はっ、レガリスとシーホークいずれも、2分以内に発進可能です」

「そうか…、「本艦はこれより転舵、日の本丸救援に向かう、レガリスとシーホークは速やかに発進、救援に向かえ」」

艦内放送用マイクを持ったすずや艦長「司葉(しば) 弘幸」は命令を発した。

「転舵、158 最大戦速」
航海士は、進路を日の本丸に向け、
イージスミサイル巡洋艦「すずや」の心臓たる、1基あたり25,500馬力を誇るLM2500 ガスタービンエンジン8基が出力を最大にまで跳ね上げていく

そして、満載20,900tにもなる船体を公称最大速力 33ノット+にまで加速させていった。

「航空隊発進準備整いました。」

「"すずや"、後部兵装をロック」

「了解、了解。艦長。すずやにお任せー!」

茶色のブレザーを着用し、先を切りそろえた薄緑色のセミロングの髪の左にヘアピンをつけ、黄緑がかった瞳を持つ少女こと、巡洋艦搭載型MMS「すずや」が答える。

こうして、イージスミサイル巡洋艦「すずや」は日の本丸へと向かっていった。






艦名アンケート募集中(MMSはもう締め切りました)

(一応釘を刺すけど、活動報告のページによろしく)
(運営さんの規制にかかるので感想欄に書かないでください)

MMS>艦これのキャラと技術的にはアルペジオと似た感じというミックスで

↓一応書いとく
Super Brain Trans Lator
SBTL
超高精度脳活動情報収集機

科学技術省と企業数社が共同開発した、脳活動と脳内で扱われている情報を高精度かつリアルタイムで観測するために開発された測定機器。スキャニング用の全周型フェーズドアレイセンサーやスキャン用電磁ビーム発生用の超電導磁石、果ては超極細&高出力の電磁ビーム管理及びスキャンした情報を処理するスパコン等で、サッカーコート一面分というとんでもなく広い床面積を必要とする。
硫黄島沖の科学技術省研究開発実験浮島「ルミナス」に配置されている。


次回 episode.5「航空護送任務!!…」


さてさて、突撃いたしましょう!!

ではっ
(誤字脱字は感想へ、ご意見はメッセへ)


PS
盗作の件はさきほど運営に通報しておきますた




<< 前の話 目次 ページの一番上に飛ぶ


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら

感想を書く ※感想一覧
内容※10~5000字

※以下の内容は禁止事項です。違反するとアカウント凍結等の対応を行います。
・他の感想への言及・横レス(作者以外の発言に対して言及すること)
・作者を攻撃している(人格否定等)
・規約に違反していない作品への削除や修正、設定改変の強要

・感想欄でのアンケートの解答行為(作者が感想欄での解答を要求していた場合情報提供から通報して下さい。)


評価をする
一言(任意、100文字まで) 0文字
投票
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10を入力する場合は一言の入力が必須です。
※評価値0,10はそれぞれ最大10個までしか付けられません。
※警告タグを評価基準に含める事は×