STAP細胞:日本科学会に痛手 「不正」明言避け
毎日新聞 2014年03月15日 08時10分
理化学研究所の調査委員会(石井俊輔委員長=理研上席研究員)が14日に発表した中間報告は、STAP細胞=刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得細胞=論文の画像の「改ざん」や文章の「コピー」を認め、明確な判断は避けつつも不正を示唆する内容となった。
公表された調査対象は、2論文の画像や文章など6項目。大きな焦点となったのは、ネイチャー論文でSTAP細胞が万能細胞であることを示す根拠の一つとなった画像が、小保方晴子・理研研究ユニットリーダーの博士論文中の画像の使い回しではないか、という指摘だ。調査委は「画像は同じと判断せざるを得ない」と流用を認めた。この画像は、ネイチャー論文ではSTAP細胞から分化した組織と説明する一方、博士論文では骨髄の細胞をガラス管に通して取り出した幹細胞からできた、と異なる説明が付けられていた。
調査委によると、この画像を巡って、小保方さんと笹井芳樹・理研副センター長が2月20日、調査委に「画像を取り違えた」として修正を申し出ていた。この時、2人は博士論文で使った画像とは説明しなかった。石井委員長は小保方さんらの説明を「客観的にかなり珍しい」と疑問視。調査を続ける考えを示した。
また調査委は、STAP細胞の作製を証明するための「電気泳動」と呼ばれる実験画像について一部が切り張りされていたと認めた。会見に出席した理研の川合真紀理事(研究担当)は「科学者の常道を逸している」と厳しく批判、改ざんにあたるとの認識を示した。
文章にも不備があった。調査委は、実験手法を説明した10行以上の文章が、2005年に発表された他人の論文を「何らかの方法でコピーした」ものと判断。小保方さんは「引用(の明記)を忘れた」と釈明したが、引用元の文献は「覚えていない」と話しているという。
一方、別の実験結果として掲載されたマウスの胎盤画像2枚が、実際には同じ胎盤だったことも分かった。調査委は「削除するのを忘れた」とする小保方さんらの説明を受け、「改ざんの範囲にはあるが、『悪意』があったと認定できず、研究不正とは認められない」と判断した。【八田浩輔】
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