2014年03月06日

役に入れ込む演技

フィリップ・シーモア・ホフマンの47作品から彼の熱演シーンを抜き出し、編集したビデオ "P.S. Hoffman (A Tribute)" が、Vimeoに発表された。

編集したのは、"The Lost & Found Shop"(2010)以来、"Beautiful Prison"(2012)、"Juggle & Cut"(2013)などを監督・編集しているセレブ・スレイン(Celeb Slain)。本名はアレグザンダーだが、「セレブ」と名乗っているだけあって、ジェイムズ・フランコに似たハンサム男。YouTubeには、おそらく自分で作ったのではないかと思われるインタヴューもある。日本の「イケダハヤト」に通じる自己顕示性であるが、たぶん今後はこういう感性が普通になっていくのだろう。

約21分のこのVimeo映像ではホフマンが、ロバート・デ・ニーロ、トム・ハンクス、ライアン・ゴスリング、トム・クルーズ、イーサン・ホーク、ポール・ニューマン、ブラッド・ピット、ロビン・ウィリアムズ、フィリップ・ベイカー・ホールアンディ・ガルシア、マーク・ウオーバーグ、ビル・パクストン等々と共演しているのを目の当たりにできる。

ホフマンには絶対負けられないという勢いで演技している相手とのシーン(たとえば『M:i:III』のトム・クルーズと)ではっきりわかるが、ホフマンは、役に入れ込む#o優であることがわかる。役に入れ込む≠ニいうと、スタニスラフスキーを継承したアクターズ・スタジオの「メソッド」、その卒業生のデ・ニーロやアル・パチーノを思いつくが、「メソッド」ともちがう独特の入れ込み≠フ方法を見出したのだろう。

スレインのこの『Tribute』を見ると、ホフマンは、トム・ハンクスのようなカメレオン′nの俳優ではなく、文字通り役に入れ込んでしまう俳優であることがわかる。と同時に、一旦役に入れ込んで撮影なり舞台なりが終わったあとの虚脱感は相当なもので、そこから次の役に飛躍するためには、何かの助けが必要になることが容易に想像できる。

ただし、ホフマンのような演技スタイルは、今後、次第に「古典的」なものとみなされるようになるのではないかとも思う。つまり、俳優個人としての内的℃ゥ我をかぎりなくゼロにし、演技上の外的≠ネ自我を極限まで顕在化するという方法ではなく、双方をシームレスに横断するような演技がより「いま的」とみなされるような傾向であるような気がする。

今回のアカデミー賞で受賞した作品や俳優は、ほとんどが役に入れ込む<^イプの「古典的」作品ばかりであったが、いずれは『her 世界でひとつの彼女』やそこでのホアキン・フェニックスの演技のような異化された演技が普通になっていくのではなかろうか?

posted by tetsuo at 01:10| Comment(1) | TrackBack(0) | ホフマン
この記事へのコメント
 全く本題に関係ないことなのですが、この方はセレブではなくケイレブ?さん(Caleb Slain)ではないでしょうか。ツイッターにいらっしゃるようです。 @CalebSlain
Posted by さえぼー at 2014年03月15日 12:45
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