2014-03-15
■enchantMOON S-IIとは?
昨日、ようやく三ヶ月に及ぶリファクタリングの成果と言える、enchantMOON S-IIを発表した。
今回、なぜこれを敢えて単なるOSのアップデートではなく、「S-II」と呼んだのか。
大規模なリファクタリングにより、劇的な性能の向上が得られると同時に、クラウドサービス、そしてenchantMOONによって制作されたコンテンツをWebで公開し、共有することが可能な状態まで持って行けたこと、この状態すべてを表現するのに最も相応しい呼び方は、「S-IIシーケンス」であると考えた。
もはや敢えて言うまでもなく、enchantMOONはアポロ計画になぞらえた進行をしている。すると最初のハードとOSが登場し、なんとか離床したこれまでのプロセスをサターンV型ロケットにおけるS-IC、つまり第一弾ロケットの段階と考え、第一弾で得た知見や成果といったものを十二分に活かしつつ、さらに加速するために第一弾ロケットを切り離し(ジェットソン)、秒速3.3キロメートルから一気に倍以上の秒速7.4キロメートルに到達する、サターンV型ロケットのシーケンスの中でも最も重要な役割を持つシーケンス、それがS-IIシーケンスである。ただしこれでもまだ第一宇宙速度である秒速7.7キロメートルには達しない。そこに到達するには、第三段ロケットであるS-IVBシーケンスを待たなければならない。
今回の機能追加の詳細については各メディアを参照して欲しい。
個人的には、HTML5でenchantMOONのコンテンツを再現するGeminiとクラウドサービスSkylab(コードネーム)の登場によって、ようやくenchantMOONは当初思い描いたコンセプトにかなり近いところまで来ることが出来たと思っている。
実際の動作デモはこちら(Safari,Chrome,Firefoxのみ対応)→http://enchantmoon.com/S-II/demo/
特に会場では触れなかったが、GeminiではMOONBlockによって作ったゲームソフトをPCやiPhoneなどで再生することも可能だ。
つまり、作ったゲームを9leapへ投稿することもできる。
今年は9leapの高校生大会も開催されるので、この機能の実現により、プログラミング、そしてゲーム開発の敷居をさらにグッと下げることが出来る。
子供でも自分のつくったゲームを世界に向けて発表できる、というのがもともとの狙いだったため、これでようやく当初の目論見の片鱗くらいは覗かせることができたと思う。
実は今回、Skylabの開発には、僕の古くからの友人であるenfourのリチャード・ノースコットが関わっている。ガジェットマニアには「NewtonとPsionのUniFEPを作った会社」と言えばわかるだろうか。リチャードは、世界で初めて発売された手書きコンピューティングデバイスであるAppleのNewtonで最も活躍したプログラマーの一人で、彼が開発した手書き入力環境UniFEPは、Appleから公式な日本語サポートツールとして同梱販売されたことさえある。
その彼が、二十年余の時を超えて今再び手書きコンピュータの夢を追うenchantMOONの開発に関わってくれている。パートタイムだけれども、我々に取って非常に心強い味方であり、彼のUniFEPが搭載されたNewtonやPsionといった端末に胸をときめかせていた少年だった頃の自分を思い出して、胸が熱くなる。
3月26日に、限定されたユーザー様に対してS-IIシーケンスβ版へのアップグレードミーティングを開催する予定で、現在ページは準備中だ。登録ユーザの皆様にご案内のメールを来週には送付する。遠方の場合はセンドバックで対応する。
今回は第一段ロケットS-ICの大部分を文字通り破棄(ジェットソン)し、ソフトウェアアーキテクチャを全面的に見直すことによって劇的なパフォーマンスの向上を行った。
特にページ一覧が速くなったのはでかいと思ってる。
書き味への不満はあまり感じられなかったものの、ページ一覧が遅いという根本的な部分への不満はかなりあったからだ。
今回、ラスター処理をメインにするため大掛かりな変更をしているが、同時にベクトルデータの取得も捨てていない。世代別JSON方式を採用したため、ベクトルデータの扱いそのものはやや複雑になっているが、基本的には変わっていない。
最高速のレイテンシーを達成するために、新たにpenコマンドを追加(β版のみ)し、フラットペンとノーマルペンを切り替えることができるようになった。フラットペンを使用すると80ミリ秒台の書き心地を実現できるのと引き換えに、筆圧情報を喪うようになっている。通常はノーマルペンでもREGZA TabletのTruNoteより速いので問題はないだろう。
今回のS-IIでは、ハードウェアの非力をソフトウェアで補うという、本当の意味でのソフトウェアの潜在的な能力をこれによって示すことが出来たのではないかと思っている。
そして最も重視したことは、できるだけ初号機を買って下さった全てのお客様の体験全体を向上させるということだ。だからソフトウェアでできること、というのに徹底的に拘った。ハードも試したが、ハードを変えただけで良くなる部分は少なかったので、まずはすぐできることからやった、というわけだ。
それに伴って値上げした理由は、発売から8ヶ月余りの間、薄利にも関わらず耐えて耐えて耐えぬいてenchantMOONを売って下さった販売パートナーの皆様に多少なりとも利益を還元するためだ。そして、既にenchantMOONを買って下さったお客様に対しては、触っていただければこのソフトウェアに1万円相当の価値があると解っていただけるはずだと思っている。
enchantMOONのこの形状のモデルは、たぶんもう増産しない。製造トラブルが多過ぎるし、工場との契約も打ち切った。金型は回収し終えている。したがって市場にある在庫が全てで、今回、我々はenchantMOON S-IIで儲けようという気持ちは全く持っていない。
新たに設計する新ハードウェアMkIIは、全く違うものにしたいと思っている。その前に、いまあるハードで全力を尽くす。今のハードの能力を限界まで使い切って、それから次へ行く。僕たちはゲーム屋だから、新しいゲーム機のローンチタイトルではできることに限界があるのも知っている。だからこそ、ハードをしゃぶりつくしてから次へ進みたい。
そして年末を目標に開発を進めている次なるMOONPhaseのメジャーバージョンアップであるS-IVB(コードネーム:Latmos)で、enchantMOONはようやく第一宇宙速度に到達し、軌道を脱出する。これは今回のアップデートを上回る画期的なものになるはずだ。
また、S-IVBに向けてSkylabを通じて様々な仕掛けを打って行く。
今回、「笑っていいとも」の似顔絵コンテストで二度のグランプリに輝いたタレント兼イラストレーターの嘉山楓さんがわずか二日前に貸出したenchantMOON S-IIで早くも素敵なハイパーテキスト絵本を作ってくれたことには素直に感動した。
他にも、enchantMOONでのハイパーテキスト作品作り、といったものが世の中にどう受け入れられて行くか、そういうことに真剣に取込み、このマシンの将来の可能性を探って行きたい。
このS-IIに向けて、開発者達は非常につらい決断をしなければならなかった。
それまで長い時間と労力をかけて開発した数万行に渡るソースコードを一旦全て捨て去り、ゼロから短期間で構築するという非常に難しいが偉大な仕事を成し遂げた。
リファクタリングという言葉ではすまない、事実上のリビルト作業である。
しかしWindowsにNTが必要だったように、オペレーションシステムが真の意味で根本的な進化を遂げるには、これは避けては通れない道だった。普通の会社なら、全く売り上げに結びつく見込みがない、単なるOSのアップデートにここまで大規模な改修を加えることは到底考えられない。だが我々はそれを敢えて断行した。なぜなら我々はこれからも継続的にenchantMOONを育て、ビジネスとして一本立ちできるよう全力を注ぐと決めた。
そのためには、まず既に買っていただいたユーザの方々が満足できるよう全力を尽くすことが最優先だからだ。
実際のところ、仮にenchantMOON S-IIとして4月に発売する端末が、1万円の値上げ後で仮に完売したとしても、もともと利益がほとんど出ない構造なので、S-IIのOSにかけた開発コストは到底吸収することはできない。そこで儲けをとることなど最初から想定していない。
ただひたすら、ものを作る責任、人類にとって全く新しい道具となるものを作り上げたいという飽くなき思いから、我々はenchantMOONに関わるブロジェクトを継続している。そしてその成果は、パートナー企業やユーザーの皆様のご協力とともにスパイラル的に改善され、改良され、磨き上げられていくと僕は信じている。
まずは3月26日の一般ユーザー向け限定βテスト、そして4月のリリースにむけて気を引き締めるとともに、寸暇を惜しんでひたむきな努力を続ける開発者たちを見守りたい。
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