遠藤(右)が押し出しで玉鷲を破る=ボディメーカーコロシアムで
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◇春場所<6日目>
東前頭筆頭の遠藤(23)=追手風=は玉鷲に勝ち、4連敗後に2連勝。新入幕の千代丸(22)=九重=は里山に勝って5勝1敗とした。白鵬は栃乃若を問題にせず、日馬富士は栃煌山を注文相撲で退け、平幕の大砂嵐とともに6連勝。綱とりの鶴竜は魁聖に完勝し、琴奨菊も隠岐の海を寄り切ってともに1敗を守ったが、稀勢の里は嘉風の下手投げに屈して2連敗。
◇
親孝行の白星だ。前日に大関戦初勝利を挙げた遠藤は左を差してから右前みつを取る得意の形で2連勝。土俵を下りると、待っていたのは父・吉樹さん(46)だった。握手すると、うれしかったのか笑みがこぼれた。
「気持ちで負けないようにと。勝ててよかった。(父と握手して)特別な気持ちはない。一日一日切り替えてやるだけです」。喜びはほんの一瞬だけ。支度部屋ではすでに次の取組を見据えているようだった。1月の初場所千秋楽に続き、吉樹さんが観戦に訪れた。その時は貴ノ岩に黒星を喫し、敢闘賞と技能賞のダブル受賞を逃した。だが、今回は父親の目の前で白星をプレゼント。「あとは15日間ケガせずに頑張ってほしい」と吉樹さんも勝利よりも残りの9日間を気にしていた。
遠藤が相撲を始めたのも父がいたからだ。小学校1年生の時にドライブついでに穴水相撲教室に連れて行かれた。吉樹さんと母・玲子さんが送り迎え。遠藤の恩師で同教室の上野勝彦さんは「最初は礼儀正しい子にしたいと連れてきた」と明かす。そんな遠藤少年は気付けば角界トップクラスの力士。吉樹さんも「自分の子どもじゃないみたいですね」とスピード出世に目を丸くした。
バレンタインデーには段ボール5箱のチョコレートが部屋に届いた。この日はホワイトデー。報道陣に「いいお返しになりましたね」と聞かれると「それはよかったです。勝ててよかった」と遠藤。7日目の相手は初場所で三役からの初白星を挙げた琴欧洲だ。「思い切り向かっていくだけです」と最近お決まりになりつつあるフレーズで締めくくった。その言葉どおりに戦うことが白星を積み上げていくことにつながる。 (永井響太)
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