人の話を聞くのは好きです。もしかしたら、自分でしゃべるより。ですから、聞き上手とは言えないまでも、聞いて理解したいという気持ちは人後に落ちないつもりです。

けれど、花岡信昭さんとおっしゃる方の話はわかりにくかった。産経新聞のOBで、最も数多く記者クラブを経験し、97年の新聞綱領に携わり、今日ある記者クラブ制度をつくったと言ってもいい方だそうです。その花岡さんが朝日ニュースターの「ニュースの深層」で、上杉隆さんと記者会見公開問題で議論をたたかわせました(2月24日)。メディア風に言うなら「激論」でしょう。それが、のらりくらり、行ったり来たり、はぐらかし論法というか、わかりにくかったのです。

なぜ記者クラブが存在するのか。花岡さんによると、従来、情報を出したがらなかった官公庁にたいし、市民の知る権利をバックに公開を求め、メディア側がいわばかちとった制度であって、記者会見は記者クラブが主催するところにおおきな意味がある、ということです。それは十全にわかります。会見が官公庁主催だと、つごうのいい時だけに開くことになりますから。

上杉さんもここまでは完全に同意し、その上で、なぜ記者会見が記者クラブだけに閉じられていて、海外プレスや雑誌は一部だけ参加が認められ、フリーランスやネットは完全オミットなのか、政府はオープンにしようと言っているのに、記者クラブ側が反対しているのはなぜなのか、と食い下がりました。

それにたいして花岡さんは、今は過渡期にあり、今後いかようにも調整可能だろう、と言うにとどまりました。まあ、押し問答みたいでしたが、その中にびっくりするようなことがいくつかありました。

まず、昨今のリーク疑惑。花岡さんは、リークはない、とおっしゃりたいようで、「いろいろ取材を重ねて、6、7割あっていると判断したら、告訴覚悟で書いている、それが間違いというなら名誉毀損に訴えればいい、それが、公判結果を待たずに事件を知りたいという読者に応えることだ、ぎりぎり出禁(出入り禁止)をくらわないところまで書いている」と、まとめるとおよそこのように答えていました。

以前このブログで、出禁が問題だと書きましたが(こちら)、権力を監視するための記者クラブ制度と言いながら、やっぱり主導権は権力側にある、出禁によってメディアは権力側に首根っこを押さえられているということを、花岡さんは認めてしまっています。

また、記者会見をオープンにするとセキュリティの問題がある、と言う花岡さんにたいし、上杉さんが、「日本の記者会見は世界一危険、社や局に一括してパスを出しているのだから、そこにある目的をもって誰かが侵入する可能性がある」と反論すると、花岡さんはおよそこんなことを言ったのです。


花岡 あまり言えないが、私も経験あるが、内定を出す前にしかるべきところでちゃんと調べる。民間じゃなくて公的な機関で。

上杉 それは違法行為では?

花岡 だからあまりおおきな声で言えないと言った。もしものことがあったら会社の責任になるから、それなりのことはやる。


この部分、どなたかyoutubeにあげてくださらないでしょうか。いくらCATVとは言え、花岡さん、おおきな声で言ってしまったのです。サンケイは社員の身元について、国家権力のお墨付きをもらっているって。これでは、市民の知る権利のためにメディアが主導権を握る、というたてまえが空しく響きます。ほかの新聞社・テレビ局はどうなのでしょう。気になります。

ほかにも、記者クラブ室は大臣室のすぐそばという特等席にある(すばらしい便宜をはかってもらっているんですね!)とか、興味深い発言がありました。とりわけ、その日の朝日新聞朝刊記事のうち、記者クラブ記者が書いたと思われる記事を花岡さんが推測していたのが面白かった。紙面を色分けして示してくれたのですが、それによると、1面は4割がた、2、3、4面は外信を除いてほとんど、社説もそれに準じるとのことです。これだから、マスメディアが記者会見をオープンにしたがらないわけだ、とみょうに納得しました。言うまでもなく、情報を独占できなくなるからです。

タイガー・ウッズが関係者を並べてペーパーを読むという、会見とも言えない会見をしたことにおふたりとも批判的でしたが、上杉さんが、「記者クラブだけの記者会見は、あれと同じことではないのか」と言っていました。私にはとどめの一撃に思えました。

この番組、再放送があります。受信できる方は録画して、ぜひご確認ください。

2月26日(金)深夜4:00〜
2月28日(日)深夜3:00〜

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