株式会社三橋貴明事務所
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NEW!『アニマル・スピリット(後編)③』三橋貴明 AJER2013.9.24(3)
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http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11613422415.html
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四国電力の伊方原子力発電所に取材に行ってきました。なぜ伊方なのかといえば、原子力規制委員会の発再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査について、資料の提出済み項目が最も多いのが伊方3号機だからです。
つまりは、日本で最も早く原発再稼働が認められる可能性が高いのです。
なぜ、遠景の写真しかないかといえば、現在、各原発のセキュリティが厳しくなっており、近場からの写真がNGになってしまっているためです。写真に万が一、セキュリティホールが映っており、それがインターネットに掲載された日には、一発で「再稼働不可」になってしまうでしょうから、無理もない話です。
ちなみに、伊方原発は「加圧水型軽水炉(PWR)」になります。これまでわたくしが視察した浜岡、東通などは、沸騰水型原子炉(BWR)でした。
加圧水型軽水炉とは、核分裂により発生した熱により高温、高圧となった水が蒸気発生器に入り、そこで「別の容器」に入った水を温め、蒸気を作ります(いわゆる熱交換)。蒸気発生器で作られた蒸気がタービンを回し、発電するという仕組みです。つまり、タービンに送られてくる蒸気は「普通の水」で、放射能を帯びていません。(核分裂で発生した蒸気が、そのままタービンを回すのが沸騰水型)
伊方原発の場合、タービンが置かれた建屋は「ただの発電所」であるため、普通の格好で入れました。(沸騰水型の場合は、無理です)
PWRとBWRと、どちらが良いか、という疑問を持たれたと思います。技術的な話は専門ではないのでしませんが、こと「エネルギー安全保障」という観点から言えば、双方の技術を保有し続ける必要があるそうです。エネルギー安全保障上、極めて重要な概念は「多様化」です。
それこそ、昨日の話ではないですが、「効率性」と「多様化」は目指すべき方向が逆になります。本来であれば、「日本の原発はPWRのみ!」とやってしまう方が、間違いなく効率的なのでしょうが、安全保障上、それではまずい「可能性」があるわけです。「PWRが利用不可能になる」という非常事態は、「絶対に来ない」と誰も断言することはできません。
何しろ、我が国には何の法律的な根拠もなく、エネルギー安全保障も無視して、いきなり全国の原発を停めてしまう愚かな総理大臣が実在したわけです。あのとき、旧型の火力発電を稼働させる「技術」「技術者」が電力会社に存在しなくなっていたら、どうなったでしょうか。
さて、効率化の反対方向と言えば、現在の伊方原発は異様なまでの耐震化、津波対策を進めています。非常事態への備え、すなわち強靭化です。
そもそも、福島第一原発のような事故を防ぐためには、「津波対策」と「電源多重化」だけをすれば済むように思えますが、伊方の対策はそれを超えています。もちろん、電源の多重化も半端なく、空冷式非常用発電装置が4台、非常用ガスタービン発電機(海抜32M地点)、非常用外部電源受電設備など、七重化(?)されていました。さらに、冷却のためのポンプ車9台(!)、可搬型消防ポンプ8台、水中ポンプ30台と、「そこまでせんでもいいでしょう・・・」という対策が取られていたわけでございます。
上記の類の対策は、「効率一辺倒」の考え方をする人にとってみれば、「ムダ」もいいところです。とはいえ四電は何しろ12年の電力供給源に火力が占める割合が86%(!)という異常事態になっているため、とにもかくにも原発を再稼働しなければ、エネルギー供給が危機に陥る可能性があるわけです。(10年は、火力と原発が共に四割強でした)
もっとも、伊方の執拗なまでの原発耐震化、津波対策等は、基本的には日本国内の「需要」になっているわけです。ある意味で、いやある意味でなくても、経済効果(GDP)が生まれているのは間違いありません。(最終的にお金を払っているのが電力消費者だったとしても)
とはいえ、問題は↓これです。
『火力燃料費3.6兆円増 2013年度、原発停止で経産省が再試算
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131008/biz13100822430021-n1.htm
沖縄電力を除く電力9社で2013年度、原発停止に伴って火力発電の燃料費が、東日本大震災が発生した10年度から3兆6千億円増加するとの再試算を経済産業省がまとめたことが8日、分かった。
今年4月時点の試算では増加額を3兆8千億円としていたが、為替動向を織り込み、計算し直した。12年度との比較では5千億円の増加となる。
9日に開く電力需給に関する検証委員会で示す。燃料費の増加分は電気料金に上乗せされる。経産省は電力会社に一層のコスト削減を求める方針だ。
経産省の集計では、震災後の9電力の原発停止に伴う燃料費の増加額は11年度が2兆3千億円、12年度が3兆1千億円で、13年度はさらに膨らむ計算となる。
13年度の内訳は、石油が2兆1千億円、液化天然ガス(LNG)が1兆7千億円、石炭が千億円それぞれ増加し、原発用のウランは3千万円減少する見通し。』
原発を停止しているため、火力発電の燃料費が急増しています。もちろん、火力発電を動かすためには外国からLNGなどを輸入しなければなりません。
例えば、電力会社が中東のカタールからLNGを輸入すると、その金額分、我が国のGDPは減少します。輸入とはGDPの控除項目なのです。日本がカタールから1兆円の天然ガスを輸入すると、日本国民の所得が1兆円減り、カタール国民の所得が同額増えます。実際には、カタール国民というよりは「カタールの王様」ですが、日本は原発を停めることで、カタール国王に毎年「数兆円」規模の所得を献上していることになります。
実際のデータを見ると、「カタールの王様」に献上されている日本国民の所得(対カタール貿易赤字)は2010年の2兆円から、2012年には約3.4兆円に急増しています。原発を停めていることで、日本の対カタール貿易赤字は1.4兆円も増えたのです。すなわち、その金額分、日本の所得がカタールに移転されたという話です。
しかも、日本の原発停止が「科学的根拠」「法律的根拠」によってなされているならともかく、実際には違います。そもそも、法律的には再稼働は「電力会社」の判断でできるのです。とはいえ、電力会社は原子力規制委員会や政府の「OK」が出なければ、再稼働に踏み切ることができません(マスコミからも総バッシングを受けるでしょうし)。
我が国は、こと原発行政については、法治国家ならぬ人治国家というのが現実なのです。
人治的な判断で、原発を停め、カタールの王様(だけではないですが)に毎年数兆円もの所得を貢ぎ、かつ自国のエネルギー安全保障を弱体化させている。
これが現在の日本の現実というわけです。脱原発を唱えるのは、もちろん言論の自由ですが、取りあえず我が国のエネルギー情勢を巡る「現実」を知って欲しいと思います。空気ではなく、事実をベースに議論を進めなければならないのです。
「空気ではなく、事実をベースに議論を進めるべき」に、ご賛同下さる方は、
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Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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