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kilk recordsの奮闘から見る、音楽レーベルの未来

kilk recordsの奮闘から見る、音楽レーベルの未来

音楽業界が変化を続け、レコードレーベルの存在意義が問い直されている中、昨年5月にライブハウス「ヒソミネ」をオープンし、今年に入ってからはレーベルに所属するアーティストの楽曲の定額聴き放題サービスをスタートするなど、さまざまなチャレンジを続けているkilk records。もちろん、「新しい音楽との出会い」を大事にするレーベルだけに、3月12日にはAJYSYTZ(アイシッツ)とarai tasukuというまったく違ったタイプの二組を同時にデビューさせるなど、リリース自体も活発だ。主宰者である森大地や、AJYSYTZのメンバーの証言も交えながら、レーベルが提示する新しい価値観をいくつかのトピックを立てて検証することは、そのまま現在の音楽業界を検証することにもつながった。

(メイン画像:ヒソミネ会場風景(撮影:ameshiba))

PROFILE

kilk records(きるくれこーど)
森大地が主宰する。「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い。」を掲げ、オルタナティブロック、ポストロック、エレクトロニカ、テクノ、サイケデリック、プログレッシブ、フォーク、アヴァンギャルド、アンビエント、ヒップホップ、ブレイクコア、インダストリアル、ジャズ、クラシカル、民族音楽……。ジャンルを問わず、「独創性」にこだわった魂を震わせるような音を発信するレーベル。2013年5月にはさいたま市の宮原にライブスペース「ヒソミネ」をオープン。2014年3月にarai tasuku『Sin of Children』、AJYSYTZ(アイシッツ)『Unknown Nostalgia』の二組を同時リリース。
kilk records
hisomine(ヒソミネ)埼玉県大宮・宮原のライブハウス

日本の音楽史を変えるのは、アーティスト脳を持った経営者かもしれない。


「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い」をテーマに掲げ、2010年11月に設立されたkilk records。主宰の森大地は自らフロントマンを務める6人組Aureoleの活動と並行して、楽器屋の店員からトラックの運転手に至るまで、様々な仕事をこなしてきたが、あくまでバンドを中心とした生活を送る中で、レーベルの立ち上げを決意した。

森大地 photo by ふみねこ
森大地 photo by ふみねこ

森:日本には、自分の好きな音楽が根付く土壌がないと思ったんですよね。たとえばポストロックとかエレクトロニカと呼ばれる音楽の中でも、ごく一部の人は有名になったりしますけど、もうちょっと内向的で、精神的な音楽を作っている人たちがビッグヒットするような土壌はまだないと思うんです。「自分の好きなものを、少人数にでも聴いてもらえればいい」という考え方もいいと思いますが、僕はもっと大勢の人に広めていきたくて、大げさに言えば、日本の音楽史を変えたいぐらいの思いもあって。そのためには自分でやっちゃうしかないと思ったんですよね。

インターネットの発達、とりわけBandcampの登場によって、アーティストが自ら音源を発売することが以前よりも手軽になり、現代はレーベルの存在意義そのものが問われている時代だと言っていいだろう。そんな中、ここ日本で面白い動きを見せているレーベルをピックアップしてみると、自身がアーティストでありながら、レーベルを運営する、「プレイングマネージャー」の存在が浮かび上がってくる。

2000年代のポストロック~インストブームを牽引し、現在は東京と仙台でショップも運営する残響レコードの河野章宏(te')、CDやアナログのリリースに加え、ディスクレビューなどを掲載するウェブメディアとしても機能しているonly in dreamsの後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、さらには昨年その人生がドキュメンタリー映画となったPIZZA OF DEATH RECORDSの横山健(Hi-STANDARD)と、既存の企業のシステムとは異なる目線を提示するプレイングマネージャーは、変容を続ける音楽シーンのキーマンとなっている。そして、森は「自分がやって意味のあることしかやりたくない」と語る。

森:もう売れてるバンドや、すでに1~2枚リリースがあって、評価が上がりつつあるバンドは、僕が出す必要はないと考えました。それよりも、土壌がないせいで「売れない」と判断されてしまうようなバンドをリリースすることを、自分のレーベルの使命にしたいと思ったんです。ただ、僕はなるべくアーティスト脳でいようとは思ってます。ビジネス脳になると、僕が「こうはなりたくない」と思ってる老害レコード会社と同じになっちゃうかもしれないので(笑)。初心を忘れないためにも、「バンドを成功させるためにレーベルをやるんだ」っていうのは、常に思ってる部分ではありますね。


金子厚武

1979年生まれ、音楽ライター。ロックを中心に、洋邦・メジャー/インディ問わず、様々な媒体で執筆中。ヨシュアカムバック・AFRICAEMOという二つのバンドで自ら活動もしており、現場でしかわからないインディ・シーンの空気を伝えることに関して、特に重点を置いている。

a shade of shyness

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