■「厳格手続き」が原則 変更重ねた理由は
「通称変更は厳格な手続きを行うよう、自治体に通知してきた。何度も通称変更する事例は把握しているが、あまりに頻繁な変更を認めるのは問題と感じる」。住民基本台帳制度を所管する総務省はこう説明する。
一方、文容疑者の申請に応じたさいたま市西区役所は事件を受けて「今後の検討課題になる」と話している。
同省によると、変更手続きには、身分を示す複数の証明書の提示を求める。さらに、変更理由を申出書に記入させ、社会通念上、変更が認められる場合、以前の通称が削除され、新たな通称が登録されるという。
では、文容疑者のケースはどうだったのか。県警の調べでは、「同じ通称の人物が悪いことをした」などと、合理的とは言い難い理由を押し通したことが分かっている。通称が世間的に認識されていることを示そうと、自ら「通称」をあて名に書き、自宅に送った郵便物を持参することまであったという。
元東京入国管理局長で移民政策研究所所長の坂中英徳氏は「通称は日本社会の複雑な背景の中で生まれたが、昔は悪用する犯罪は聞かなかった。悪意のある人物も一握りではないか」と分析する。
さらに、坂中氏は「本来は本名を名乗れればいいが、日本は容姿が明らかに違う外国人を日本人と認めない風土もある。将来、移民を受け入れれば、カタカナが氏名の日本人が出てくるかもしれない。通称は過去の遺物になるのではないか」と話した。