教科書採択:竹富町、直接是正に反発 不服申し立て検討へ
毎日新聞 2014年03月14日 22時37分
文部科学省は14日、沖縄県竹富町教育委員会が八重山採択地区協議会(石垣市、竹富町、与那国町)の決定とは異なる中学公民教科書を使用している問題で、地方自治法に基づき、竹富町教委に対して地区協決定の教科書を使うよう是正要求した。国が直接、市区町村に是正要求するのは初めて。ただ、是正要求に罰則はなく、竹富町教委は反発を強めており、国地方係争処理委員会への不服申し立ても検討する意向だ。
地区協は2011年8月、教科書無償措置法に基づき、保守色の強い育鵬(いくほう)社の中学公民教科書を採択。しかし、竹富町は「沖縄の米軍基地問題の記述が少ない」などとして同意せず、地方教育行政法が教科書の採択権限を地元教委に与えていることを根拠に、東京書籍版の使用を決め、独自に使ってきた。文科省は「採択地区内で同一の教科書を使うよう定めた教科書無償措置法違反」と指摘。昨年10月、沖縄県教委に対して同町教委に是正要求するよう指示したが県教委は「慎重な対応が必要」と結論を先送り。このため、今回の直接是正要求になった。
同町では12年以降、町ゆかりの篤志家の寄付金で教科書を準備。今回も町内の8校分計46冊を用意、配布する準備を進めている。
文科省の直接是正要求に対し、竹富町の地元関係者からは反発と困惑の声が広がった。
竹富町教委の慶田盛安三教育長は「教育行政が最も忙しいこの時期に是正要求を出す意図が分からない。教育への政治介入とも受け取れる。学校は落ち着いているのにかえって混乱を招くだけ」。竹盛洋一教育委員も「国にこちらの言い分を聞くつもりが全くないのは遺憾。強引に従わせようとする手法に怖さを感じる」と憤った。
町教委は24日の定例会議で、国地方係争処理委員会に不服を申し立てるかどうかなどを検討する意向。東京書籍版を新年度も引き続き使用する方針に変わりはないとし、沖縄県教委とも意見交換するという。
一方、沖縄県教委は戸惑いを隠せない。竹富町に対し、頭越しに直接是正要求されたことに県教委の諸見里明教育長は県庁で記者団に「残念だ。19日の会議で今後の対応を検討したい」と述べるにとどめた。
今回の問題の背景に、教科書無償措置法と地方教育行政法の二つの法律が採択権を認めていることから、政府は今国会に教科書無償措置法改正案を提出し、地区協の決定に一本化する方向で法整備を進めている。【井本義親、福田隆】