炎上すると分かっているのになぜ? 『白ゆき姫殺人事件』は“劇場版バカッター”だ!
2014.03.14 19:30 記者 : 藤本エリ カテゴリー : エンタメ タグ : バカッター 映画 炎上 白ゆき姫殺人事件
昨年夏、ネット上で話題となった「バカッター」。コンビニのアイスクリームケースに入った写真や、飲食店の醤油を鼻の穴に入れた姿などをSNSに投稿し、炎上。企業が公式に謝罪したり、倒産する店舗が出てくるなど、ただの悪ふざけでは済まない大騒動となりました。園様な投稿は少しずつ減ってはいるものの、先日も「女子高生がラブレターを晒し、飲酒も発覚」(http://getnews.jp/archives/530523)なんて出来事があったばかりです。
Twitterに投稿した本人も個人名や学校名、バイト先まで暴かれ、痛手を追った人も多いはず。「自業自得」と言ったらそれまでですが、冷静になって考えれば分かる事をどうして自分から進んでやってしまうのか。
スマートフォンの普及で写真を簡単に撮影出来る様になった、10代のうちからSNSを使っているので「皆に見られている意識」が低い、など色々な原因が考えられます。そして、目立ちたい、面白い人だと思われたい、人と違う事をしたい。そんな、承認欲求とも言える感情が人々を駆り立ててしまうとも言えるのでは無いでしょうか。
そんな「バカッター」の生体を描いたとも言えるのが、3月29日より公開となる映画『白ゆき姫殺人事件』。『告白』『贖罪』で知られる作家・湊かなえの原作を『ゴールデンスランバー』『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督が実写化した、サスペンスドラマです。
『白ゆき姫殺人事件』ストーリー
日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される事件が起こり、典子と同期入社で地味な存在の女性・城野美姫(井上真央)に疑惑の目が向けられる。テレビのワイドショーは美姫の同僚や同級生、故郷の人々や家族を取材し、関係者たちの口からは美姫に関する驚くべき内容の証言が飛び交う。噂が噂を呼び、何が真実なのか多くの関係者たちは翻弄されていき……。過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える闇を描き出していく。
白ゆき姫の様に美しい女性が殺害され、周囲の人が同僚をまるで犯人かの様に扱い、ワイドショーの報道も加熱していくというお話。「前から様子がおかしいと思っていました」「友達も少なかったみたいです」「ここだけの話なんですけど……」、同僚や友人、近隣住民が話す無責任な発言を面白おかしくテレビが演出していく。これだけ聞くと、まるで小説/映画の中のお話だとは思えませんよね?
そう、この作品の魅力は、私たちが一度は出会った事がある様な人達、見た事がある様な光景を生々しく表現している所。劇中に出てくるワイドショーの再現も、本当にリアルで「これ、絶対あの番組だよな」なんて苦笑いしてしまうほど。
この一つの殺人事件を大騒動へと変えていくのが「バカッター」の存在。テレビの新人ディレクターである赤星(綾野剛)は、事件の関係者たちに取材し入手した情報を、Twitterに次々とつぶやいていく。「同僚が怪しいっぽい」「新情報ゲット〜」「事件の動悸は嫉妬?」など、まだ報道されていない情報を書き込むうちに「関係者ですか?」「もっと色々教えてください!」というリプライやリツイートが面白くてしょうがない。どんどんエスカレートした赤星は、次第に報道のタブーに踏み込み、自分自身もTwitterで“晒される”存在となっていく……。
これはもう『白ゆき姫殺人事件』、もう一つの名を『劇場版バカッター』と言っても過言ではありません! この、Twitter炎上を次々と起こす、赤星を演じる綾野剛さんの小物っぷりが素晴らしいのでぜひ皆さんにも観ていただきたいです。
また、バカッター以外にも、女同士の嫉妬、陰口、見栄の張り合いなど人間の嫌らしさを描いた描写は恐ろしいほどの完成度。原作である小説版『白ゆき姫殺人事件』では、「Twitterの表現が分かりづらい」「いきなり新聞の体裁になるのが読みづらい」など、実験的な表現が賛否両論となっていますが、映画ではそのあたりもクリアされていて、非常にスリリングな作品となっています。
映画『白ゆき姫殺人事件』は3月29日より全国公開。ガジェット通信では中村義洋監督のインタビューも公開予定ですので、お楽しみに。
(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社