あらゆる家電をハックできる、スマホ連動オープンソース・デバイス「IRKit」
去る1月、オープンソースの赤外線リモコンデバイスを開発した大塚雅和氏(別名 Mash)に話を聞く機会があった。そのとき、彼が手がけるもう一つのクールなハードウェアプロジェクトについて、記事を書きたいと思った。スマートフォンを、エアコンなど家中のデバイス用のコントローラにしてしまおうというものだ。このプロジェクトは IRKit と呼ばれ、詳細は上記のビデオで確認できる。
1月に大塚氏と話したときに問題だったのは、IRKit の在庫が無かったことだ。そこでしばらく時間を置いて、読者が購入できるようになってから記事を書くことにした。今週日曜の夜に100台以上が購入可能な状態になったので、記事を書くなら月曜の朝がいいと思った。ところが驚くべきことに、私が記事を書く間もなく、IRKit は売り切れてしまったのだ。
本稿を書いている今、Amazon で IRKit は買えるかもしれないし、買えないかもしれない。大変クールなプロダクトで、この高い需要は人々が欲しがる商品だということを物語っている。
ここまでに書いたことをふまえ、改めて IRKit がどのようになるのか、大塚氏が将来どうしようとしているのかについて説明したい。初めて大塚氏と話したとき、エンジニアとしての彼の理想を披露してくれた。それは、IRKit に対する彼の期待を明らかにするものだ。
多くのエンジニアは、日常生活の中でプロセスをハックしたり、最適化したりしたいと考えている。同じことを二度やりたくないからだ。リモコンには難点がある。バッテリーが必要だし、子供達は取り合おうとする。見た目もクールではない。まずは自分のために作ろうと思った。時には難しいと思えることもあったが、皆のために作ることで楽しいと思えるようになった。
彼が作り上げたものは、スマートフォンでエアコン、照明、テレビなどを制御できる wi-fiデバイス(写真上)だった。赤外線リモコンを使うものなら、何でも制御できる。このデバイスをだれもが簡単に使える iOS アプリも開発し、さらにハックしたい開発者のために SDK も公開した。私が思いつく範囲では、デベロッパは屋外の気温が上がったら、屋内を冷やすようエアコンに指示できるようなアプリをつくることができるだろう。
彼はこのプロジェクトに私費をつぎこんできたので、それは自分だけでなんとかできる運用だったと語る。しかし、協力者からも助けてもらうこともあった。このプロジェクトをプロモートするために、(日本でも最近多くの人がやっているように)Kickstarter に出品してみないのかと思った。しかし、エンジニアの立場から言えば、そのような努力は多くの時間を必要とし、彼はむしろコーディングしていたいのだそうだ。特段のマーケティングもせず、大塚氏が自分の人脈だけで多くの台数を売ってきたことを考えれば、驚かずにはいられない。
将来、彼は位置情報の機能を組み込みたいと考えている。ユーザが家を出るとき、家に着いたときにデバイスを作動させるようなこともできるだろう。
大塚氏は以前、鎌倉を拠点とするカヤックに勤務していたが、まもなくアメリカに移住するそうだ。彼の今後のフォーカスを楽しみにしたい。大塚氏は英語を大変流暢に話すので、アメリカのハードウェア・ハッカーやファブリケーターとのコラボレーションは、彼にとって実り多きものになるだろう。大塚氏の作品に興味があれば、Twitter で彼をフォローするか、GetIRKit.com で詳細をチェックしてほしい。